魔法練習6
先ほどの塩試合のせいで若干テンションが落ちてたが、気合を入れ直す。
練習試合とはいえレオに負けたくはないな。
レオが審判やってたから、代わりに見学していた埜上さんが審判をすることになった。
「いがちゃん頑張ってねー♪」
前に出てきた埜上さんがすれ違いざまに耳元でささやいてきた。
・・あまり健全な男子高校生をドキッとさせることはしないでほしい。
僕、女の子の対する耐性全くないんだから・・・
いや、逆にこの程度でドキッとする僕が悪いのか・・・?
河川敷の端っこを見ると3バカが話している。
「俺は金剛の勝ちに食券10枚賭ける」
「乗った。俺は五十嵐に20枚賭ける」
「じゃあ俺は金剛に10枚で賭けが成立だな」
勝手に賭けの対象にしてやがるな。
聞こえてくる感じ、俺にかけたのは雉瀬だけか。
客観的に見たら試験の成績が良かったレオに賭けが集まるのは当然か。
さて、勝って猿堂と犬塚を悔しがらせてやるか。
レオと向かい合う。
「よおシュウ。まだ魔法を使い始めて3か月も経たずにここまで使いこなせるなんて驚いたぜ」
珍しくレオが褒めてきた。
「・・・まあ魔法を使うの夢だったからね」
レオがらしくないから僕もちょっとらしくない返答をしてしまった。
「なんだ、ちょっとかわいいところあるじゃねえか」
突然気持ち悪いことを言うな。
「キモイから止めろ!・・・早く始めよう」
「だな」
埜上さんに目配せをする。
「それじゃあ準備は良いー?」
一度深呼吸する。
レオは強い。
魔法発生スピードは普通だが、何より学年でもトップクラスの魔法威力を誇る。
試験では2メートルもある岩を生成していた。
当たったら一撃だ。
ガタイもかなりいいから身体能力も高い。
さて、どうしたもんか。
埜上さんが前に出る。
「じゃあ決勝戦いくよー。3、2、1、・・・スタート♪」
「先手はとらないと話にならないよなっ!」
初手の水弾で容赦なく顔面を狙う。
手加減なんてしてたら威力のごり押しでやられてしまう。
レオは全く動かず直撃し水が弾ける。
「微動だにしないってマジか!」
レオは変わらず魔法を発生させる為に目を閉じている。
全く効いてないか・・・
スピードを重視したから対して威力はないが怯むくらいはしてほしいもんだ。
これはまずいな。
周囲の魔素がレオに集まっていくのを感じる。
「一発で終わるなよ!」
「うお、マジかっ!?」
レオが目を開いて魔法を放つ。
パッと見で1メートルはある巨大な岩が2つも飛んでくる。
直撃したらひとたまりもない。
いや、直撃どころか掠っただけでもやばいかも。
水魔法で地面を滑らせ、スライディングで避ける。
避ける前に僕がいた場所に岩が突き刺さる。
「僕の水魔法、ぬるぬるで助かったな・・・」
普段は全く恩恵のないぬるぬるの水魔法だが、今回ばかりは助かった。
耐性を立て直すと、すでレオは次弾の準備をしていた。
いくら魔法の発生スピードが遅いとはいえ、毎回体勢を崩されたらジリ貧だから早めに決めないと!
一瞬で考えろ。
状来の模擬魔法戦のルールは防御時に使われる体内の魔素の削り合いで勝敗が決まる。
しかし、今回は転ばせれば勝ちなんだ。
なら魔法は相手の体内の魔素というリソースを削ることより、相手を転ばせるための物としての方が価値が高い。
(・・・よし、覚悟は決まった!)
「もう一回避けてみろ!」
レオがまた岩を飛ばしてきた。
先ほどよりも小さいが、今度は数が多い。
「っ!逸れろおお!」
とっさに出せる水弾を全身全霊でぶつけて狙いを逸らし、なんとか避けることができた。
岩の勢いを削ぐために放った水魔法が地面に降り注ぐ。
よし準備は整った。
距離を詰めるために走り出す。
「間に合えっ!」
次の魔法のために集中しているレオに肉薄する。
もう少し、といったところでレオが魔法を放つ。
「っ!惜しかったなシュウ!」
間合いに入るすんでのところでレオが土球を放つ。
ここはダメージを負ってでも間合いに入る!
「ぐっ!」
防御したときに体内の魔素をごっそり持っていかれたがまだ動ける。
「なんだと!?」
無理に避けて体勢が崩れることを狙っていたのであろうレオが驚きの声を上げる。
今なら体勢を崩せる!
後は突っ込むだけだ!
「くらえええええ!!!」
「チィッ!しょうがねえ、来い!」
魔法では間に合わないと悟ったレオが、僕の突撃を受けるために体勢を整えた。
だが残念だったな!
「レオの足元には僕のぬるぬるの水魔法が散乱している。踏ん張りは効かないだろ!」
「しまった!?」
これは勝った!
「くらええええ・・・・・・あっ!」
ぬかるみに足を取られて、こけた。
何でこんなところで。
ついた勢いは消えず、体はレオに突っ込んでいく。
正確にはレオの股間に。
「やっ、やめろおおおおおお!!!」
レオの叫び声が聞こえてきたが、どうすることもできない。
僕の顔面とレオの股間がどんどん近づいてくる。
『むにゅり』
レオのジーンズ越しに、柔らかく生暖かい感触と、固い2つの感触が僕の唇に触れた。
「えーと、勝者!いがちゃん!」
勝者の宣言をする埜上さん。
股間を抑え痙攣しているレオ。
目の前で起こった惨劇に顔を引きつらせ股間を抑える猿堂、雉瀬、犬塚。
そして顔面にほのかに残る感触にゲロを吐く僕。
初めての魔法練習会が終わった。
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