魔法練習5
模擬魔法戦の練習試合。
次は1回戦の第2試合、猿堂対犬塚の勝負だ。
犬塚が火魔法を使うため、ステージを河原近くの砂利の多い場所に移した。
巻き込まれると危ないので埜上さんと雉瀬と一緒に離れて見学することにした。
猿堂と犬塚が前に出る。
「Cランクの犬塚なんて相手にならんだろ。棄権するなら今だぞ?」
「運が良くてBランクに滑り込んだお前と、当時寝不足だった俺に差があると思ってるなんて滑稽だな」
そういえば犬塚は深夜アニメの見過ぎで試験当日は寝不足って言ってたな。
なら試験の時よりはいい動きをしてくれるんだろう。
しかし猿堂と犬塚か。
一応試験の時に少ししか見てないから、実力がわからないな。
「なあ雉瀬。お前ら付き合い長いんだろ。二人ってどんな感じなんだ?」
「簡単に言うと猿堂は風魔法の使い手で平均的な能力を持ってるな。犬塚は火魔法の使い手で高い魔法威力が特徴だな。威力だけならクラスで3番目だな」
「オールラウンダーとパワータイプの戦いって感じか」
ただランクに差がある以上は猿堂が有利ってところかな。
レオが審判として前に出る。
「先に言っておくが猿堂は体内の魔素が切れそうになったらすぐ棄権しろよ。火魔法相手に魔素が切れたら丸焦げだからな」
体内の魔素には魔法に対する抵抗力を上げる効果がある。
これにより僕たちは魔法を安全に発現させたり防いだりすることができる。
って学校の授業で言ってたっけ。
「あんな手持ち花火程度の火力どうってことないぜ。それよりも犬塚が俺の風魔法で転んでひざを擦りむいて泣かないかを心配してやってくれ」
「お前の扇風機みてえな風力で転ぶわけねえだろ猿が!」
「「あぁ!?」」
しょうもない煽り合いだが、これはこれでお互い気合十分ってことだろう。
他人の試合を見るのは初めてだからちょっとワクワクするな。
転移前の世界に魔法がなかったから当たり前だけど、魔法を使ったバトルはアニメや漫画でしか見たことない。
それが生で見られるとなると期待せざるを得ない。
あきれながらもレオが試合の合図をするために二人の間に入る。
「それじゃあ、用意は良いな?3、2、1、・・・始め!」
「うおらああああああ!」
「いくぜええええええ!」
開始の合図とともにお互いに雄叫びを上げた。
そしてお互いに距離を取った。
「・・・ん?これはどういう意図だ?」
お互いにらみ合ったまま一定の距離を取りつつジリジリと間合いを測っている。
「どうした猿堂!ビビってんのかー?」
「お前こそ、とっとと攻撃してきたらどうだー?」
そう言いながらもお互い相手の様子を伺っている。
そうこうしているうちに、魔法を1発も撃たないまま1分が経過した。
「んー?ねえねえ、何であの二人は魔法撃たないの?」
埜上さんが首をかしげていた。
「・・・俺は付き合いが長いからわかるが、多分こういうことだろう」
雉瀬が話し始める。
「猿堂は犬塚の魔法を手持ち花火なんて言っていたが、実際は一撃でやれる威力は持っている。だから安易に魔法を撃てない。逆に犬塚としては魔法の発生スピードが遅いから一発目を外したらカウンターで負ける可能性がある」
「つまり初っ端から均衡状態ができたってことか・・・?」
お互いが最善を尽くしている結果だからしょうがないとはいえ、なんて見ごたえがないんだ。
「あ、あれはなんだ!?」
猿堂が明後日の方向を指さす。
「ふん!その手には乗るか!?」
犬塚は微動だにせず視線を動かさない。
均衡状態が続きとうとうトラッシュトークに出てきた。
なんか見苦しくなってきたな。
魔法を一度も撃たないまま3分たった。
「お前の見ている深夜アニメの最後の展開はーーー!」
「・・・っ!騙されるか、お前が『まほぱい』を見てるわけがない!」
俺は何を見せられているんだ。
いたずらに時間だけが経過し、もはやどっちが先に集中力を切らすかの戦いになっている。
さすがにもう飽きてきたぞ。
座り込んでいた審判のレオに話しかける。
「レオー?あれなんとかならない?見るに堪えないんだけど」
「確かに、これ以上やっても進展はなさそうだな」
レオも飽きてたのだろう。
あくび混じりの声で立ち上がる。
レオが白々しい声で言った。
「あーーー!あっちでシュウが埜上にエロいいたずらしてるぞー!」
「「何だとおおおお!!!」」
二人がこっちを見るが、もちろんいたずらなどしていない。
埜上さんも「?」って顔をしている。
「「・・・はっ!隙ありいいいい!!!」」
二人が同時に正気に戻り、お互いに隙を晒まくったまま同時に魔法を放った。
お互いの魔法が反発し、爆風となり二人が吹き飛ばされる。
・・・それはそれは見事な相打ちで戦いが終わった。
初めて見る魔法の戦いにワクワクしてた気持ちを返してほしい。
「・・・勝負はドローだな。じゃあ二人とも敗退として、シードの俺とシュウで決勝戦やるかー」
「・・・そうだね。とっととやろうか」
なんとも言えない気持ちのまま決勝をやることになった。




