魔法練習4
うい
1回戦の対戦相手である雉瀬と相まみえる。
「よお五十嵐ぃ・・・お前には失望したぞ」
「なんだいきなり」
「スケベ魔法を極めるために研鑽しているお前のことは尊敬していたが、埜上さんと抜け駆けでイチャイチャするなんて・・・残念だよ」
「何が残念なんだよ。あとスケベ魔法ってなんだよ」
雉瀬は自身のロン毛を掻き分けて額を手を当て悩まし気な表情をしている。
見ているだけでイライラするな。
早く倒してしまおう。
レオが前に出てくる。
「ルールはさっき説明した通りだ。相手を転ばせて倒したら勝ち。以上だ」
僕と雉瀬も前に出る。
雉瀬は土魔法の使い手だ。
魔法発生スピードは僕より遅いとはいえ、それでもクラス2位のスピードは侮れない。
威力は無いが油断していたら文字通り足元を掬われかねない。
気を引き締めていこう。
「それじゃ、二人とも距離を取ってくれ」
正面を見ると、雉瀬も真剣な表情をしていた。
いつものにやけた面ではない。
お互い気合十分ってところか!
心臓の鼓動が早まってる。
「じゃあカウントダウンを始めるぞ!3、2、1・・・始め!」
「行くぞ!雉瀬!」
開始の合図とほぼ同時に水弾を1発放つ。
それと同時に距離を詰める。
作戦は決めてある。
僕の魔法発生速度なら確実に先手はとれる。
つまり初動の優位性は僕が持っているので、相手は受けに回らざるを得ない。
こちらは攻撃の手を休めず相手を後手後手に回らせ、直接攻撃で仕留めるのが狙いだ。
初手の水弾は当たっても痛くもない虚仮威しのものだが、それでも意表を突かれた相手の行動を制限するには十分だろう。
その後の相手の行動はほぼ2択と予想。
避けるか、相殺狙いで水弾に魔法を当ててくるか。
避けたら体制を崩したところを間髪入れずに攻撃。
相殺されてもこちらの水弾の数で崩せるはずだ。
だがこの予想は間違いだった。
「させるかよ!」
雉瀬が予想よりも最小限の動きで躱し、こちらの足元に土球を打ち込んできた。
完璧に動きを合わされた上に、予想より打ち込みが早い!
「ぐっ・・・!」
少し安直過ぎたか。
詰めようとした勢いを殺された。
しかしこの魔法の発生スピード、明らかに試験の時より早い。
こいつもこの短期間で成長しているってことか。
むこうはもう次の魔法のモーションに移ってるな。
雉瀬の追撃をけん制するために、こちらも足元に向かって水弾を打ち込んだ。
水弾によって雉瀬が体制を少し崩す。
追撃は土球が足首を掠る程度で済んだ。
「今だ!」
ありったけの水魔法を雉瀬の頭上で爆発させた。
「なに、上だと!」
威力があまりない水魔法だが不意を付けたおかげで手で防いでいる。
「もらったあああ!」
自ら視界を塞いでしまった雉瀬に、タックルをお見舞いした。
「ぐっ、うおおおおお!!」
雉瀬が腰を落として耐えの姿勢になる。
でも、水弾の打ち込みでぬかるんだ足元では踏ん張りが効かないだろ!
「いっけええええ!」
「くっそおおおおお!」
最後の押し込みで雉瀬が倒れた。
「勝者、シュウ!思ったよりいい戦いじゃねえか!」
「すごーい!一瞬だったけど見ごたえバッチリだったよー♪」
外野も盛り上げっているみたいだ。
しかし、予想よりもかなり手こずった・・・
試験で見た時と同じくらいの実力で作戦を組んでいたが、そこが苦戦した原因だな。
雉瀬はただのバカじゃなくて、努力出来るバカだったってことか。
「いい勝負だった。またやろう」
「・・・ふっ、次は負けないぜ」
起こすために差し出した手を雉瀬が握り返す。
・・・なんか、めっちゃ青春っぽいな。
相手が雉瀬ということは一旦置いとくとして、魔法を使った戦いなんて僕が転移前の世界で思い描いていたそのものだ。
最初は元の世界と何が違うんだと嘆いていたが、魔法があるだけでこんなに楽しくなるなんて思ってなかった。
戦った後の高揚感がめっちゃ心地いい。
「うおおおおい雉瀬えええ!何やってんだお前えええ!」
「練習が足りねえんじゃねえかあああ?!」
猿堂と犬塚のヤジのせいで余韻が完全に台無しになったわ。




