転移した?
こんばんぱい
俺の名前は五十嵐 秀介。
中学卒業を控え、再来月には高校に通う予定だったごく普通の男子。
身長体重平均、勉強も運動もまあまあ、顔も普通、趣味はラノベや漫画。
特徴が無いのが特徴。
車に轢かれて死にかけていたところ、自称天の使いの声が聞こえて気が付いたら全く知らない部屋の中にいた。
何故僕を転移させたのか、理由とか目的とかすっ飛ばされていて考えても全然わからない。
ただはっきりしているのは、僕は間違いなく車に轢かれて死にかけていたことと、自分が何か超常的な出来事に巻き込まれたという事だけだ。
「天使?が言ってたことが本当なら、異世界ってことになるんだけど・・・」
もう一度、窓から外の様子を伺う。
窓の外に見える公園では滑り台やジャングルジムで遊ぶ無邪気な子供たち。
設置されている遊具も見たことあるものばかりだ。
雰囲気も平和そのものだし、危険なモンスターがいるようには到底思えない。
「そういえば似ている世界に転移とかなんとか言ってたな・・・」
危険なモンスターが生息していたらこんなに綺麗な公園や住宅街が立ち並ばないだろうから、少なくともこの辺は安全なんだろう。
「というか、ここ日本だよな?畳だし、障子もあるし、瓦屋根の家とかも建ってるし」
今いる部屋はどう見てもただの和室にしか見えない。
でもトラックに轢かれたのは夢・・・じゃないんだよなあ・・・・。
あたふたしているうちに血が乾いた本を拾い、ちゃぶ台の上に置く。
「・・・まずは部屋の探索からだな。」
どんな時も慌てず騒がず現状確認。
焦りは思考を鈍らせる。
そして何よりこの世界についての手がかりが欲しい。
「テレビ、寝具、タンス、テーブル、お風呂、トイレ。ライフラインが普通に揃ってるな」
あ、お湯が出た。
ガスも普通に通ってる。
「僕は タンスを 調べた。なんと 住民票、保険証、キャッシュカード、スマートフォンを手に入れた」
銀行口座にはかなり大量のお金が入っていた!
しかも何故か僕の名義だ!やったね!
全く知らない部屋だからド○クエで他人の家を漁ってる気分だ。
キャッシュカードを手に取る。
「ゲンミ県銀行・・・どこだよ。」
住民票や保険証に記載されている住所は聞いたことがない。
「異世界で間違いはなさそうだな・・・」
それにしても、この部屋の床が畳であることといい、スマホが普通に存在していることといい、元居た世界とほとんど変わらない。
「この世界の歴史と文化が、元居た世界と酷似しているってことか?」
考えても当然答えが出るわけなく。
「・・・まぁ、死ぬ運命だった身だし、生きながらえた事に感謝しよう」
やっぱり人間ポジティブが一番。
深く考えすぎないでおこう!
そんなことより、一番気になっていることがある。
自称天使が言っていたこと。
「この世界には、魔法が存在する!」
魔法世界のファンタジーな冒険に憧れていた身としてはかなり期待している。
この世界の魔法はどんなものだろうか?
風を操り山岳を飛び回ったり、水を操り大海原を冒険するのも楽しそうだ。
もしかしたらこの辺が平和すぎるだけで、世界を救う大冒険もありえるかも!?
頭の中で妄想がどんどん湧き出てくる。
そんな時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「五十嵐さん、いらっしゃいますか~?」
と、ロリっぽい声が聞こえた。
「あっ、ハイ!」
反射的に返事しちゃったけど僕の名前が呼ばれたんだよな?
気が付いたらここにいた訳だけど開けて大丈夫だろうか?
恐る恐るドアを開けるとやっぱりロリがいた。
多分身長は140㎝くらい。
小学校高学年くらいだろうか?
クマのアップリケが入ったエプロンに黒髪のショートカットが良く似合っていた。
「今月のお家賃の回収にきました~。」
家賃の回収だった。
どうやら僕はこの家を借りているという事になっているのか?
突然異世界に送られてきたのに、僕がこのアパートに住んでいるという事実を向こうは特に気にする様子もないみたいだ。
「あのぅ・・・?」
ロリをじっと見つめながら考え込んでしまっていると、恥ずかしそうに顔を赤らめながら目を逸らしていた。
「あぁ、ごめんなさい!家賃でしたね~」
ロリを黙って見つめ続けるなんて、通報されてもしょうがない。
さて、家賃を払わなくては・・・。
家賃か・・・
通帳にはお金が入っていたけども。
「あの」
「何でしょうか?」
「このあたりでお金をおろせる場所、教えてもらってもいい?」