噂の主
希望の澱に湧く虫達のような声色には耳を貸すものか
「あいつが埜上さんと刺島先生をぬるぬるにしたって本当か?」
「ああ。目撃者が何人もいるんだ。」
「くそっ!俺も見たかったぜ!」
クラスの男子どもが僕の噂をしているので素早く訂正に入る。
「魔法が暴発しただけだって説明しただろ!」
「いやでもなあ、わざわざ試験の時にぬるぬるする謎の水魔法を使ったんだろ。ていうことはぬるぬるにしようとしたって事だろ?」
何回も誤解だと言っているのに話が通じない。
「断じて違う!僕の魔法は威力を上げようとするとぬるぬるになるんだ!」
説明したらもの凄くきょとんって顔された。
事実なのに、なんだその顔は!
「なるわけないだろ。何言ってんだお前」
「落ち着けって、俺たちはお前の味方だぜ」
「お前はスケベ魔法のために入学したって聞いたぜ・・・無論、陰ながら応援してるぞ」
なんだよスケベ魔法って!
僕の噂は今どうなってるんだ!
男子どもはまだいい。
問題はこちらを侮蔑の目で見てくる女子たちだ。
「女の敵・・・噂が本当なら・・・社会的に抹殺・・・」
「事故に見せかけて・・・階段から・・・」
明確に僕の命が危ない。
断片的に聞こえる声が怖すぎる。
もうまともに女子の方を見れないよ。
「事故なんだ。あそこで猿堂がくしゃみをしなければ集中力が切れることは無かったんだ・・・」
「まぁまぁ、僕たちはちゃんと見てたから、きっとみんな誤解だってわかってくれるよ」
悠君が慰めてくれる。
持つべきものは優しい友人だな・・・
それに引き換えもう一人の友人であるレオは、
「おっ、ドスケベ魔人ー!お前の噂が隣のクラスまで届いてたぞ!」
「オラァ!!!」
「おいおい、親友にいきなり目つぶしとは穏やかじゃないな」
僕の放った渾身の目つぶしはすんでのところでレオに止められた。
「レオが積極的に噂をばら撒いてんのは知ってるんだよ!」
「人聞き悪りいな。みんな知りたがってるから教えてやってるだけだぜ」
「じゃあ僕の集中力が切れて暴発したことも、もちろん言ってるんだろうな?」
「まあ細かいことは良いじゃねえか」
「細かくない!いま僕はクラスの女子に命を狙われてるんだぞ!怖くて階段上れないよ!」
レオが落ち着けと言わんばかりにゆっくりと話し始めた。
「まったく、冷静に考えてみたらわかるだろ?刺島先生が暴発の現場を見てるんだ。お咎めも何もないなら誤解もすぐに解けるだろ。埜上もさっき気にしてないって言ってたぜ」
確かにその通りなのだが、丸め込まれている気がしてならない。
その時、突然校内放送がなった。
『1年10組五十嵐秀介君。魔法演習の件で話があるので大至急校長室に来てください』
・・・あれ?僕の名前?魔法演習の件?
まさかのお咎めありってこと?
レオが肩を叩いてきた。
「じゃあな。短い間だったけど楽しかったぜ」
「ちょっと|レオ君!縁起でもないこと言わないでよ!大丈夫だよシュウ。何かあったら僕が誤解だって言ってあげるから!」
・・・僕の高校生活はどうなるんだ。




