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放課後へ

猿堂(えんどう)刺島(せきじま)先生の逆鱗に触れた以外は平和だった。

学校の授業内容や設備の説明など一通り終わったが、特筆すべきところはなく異世界感は感じられない。

魔法科とは言ったものの国語や数学などの一般教科のウェイトの方が重いため、当然そっちの話が中心になっていた。

元の世界と変わらない学校や授業内容の説明により緊張もすっかり霧散していた。

そんな話が30分くらい続いたとき、翌日以降の話になった。


「明日からは魔法演習の授業があるからその説明をする」


やっと魔法の話になった!

待ちにまった話に、思わず椅子に深く座りなおす。


「まずはランク制についてだ。最初の試験でAからDまでのランクに振り分けられる。Aランクが一番高くDが一番低い。最初は大半がDランクからスタートになるから、ランクが低くてもあまり気にするな」


この学校では魔法の実力によってランクの振り分けがあるらしい。

同じくらいの実力の人をまとめることによって効率的に学べるようにするためだと、事前に調べた際に見た気がする。

春休み期間に練習しまっくってたからCかBくらいから始めたいところだ。


「先生ー、質問です」


猿堂(えんどう)が手を挙げた。

先ほど痛い目を見たのに元気なやつだ。


「先生はランクで言うとどのくらいなんですかー?」


確かに気になる。

石を生成する速度やコントロールは相当なものだった。


「現行のランクに照らし合わせれば教師陣は全員Aクラスになる」


さすがに教育者だけあってAクラスか。

でもさっきの感じでAクラスなら、僕もBクラス辺りに振り分けられるかもな。


「ちなみに本気を出せば眉間に穴くらい開けられるから、気を付けることだ。特に猿堂(えんどう)


前言撤回。多分CかDだな。


「さて、連絡事項は以上だ。では最後にこの学校について話がある。入学初日で疲れているだろうが、もう少しだけ聞いてほしい」


改めて、と言った様子で刺島(せきじま)先生が口を開く。


碧水蒔(へきすいじ)高等学校の理念は『成長』だ。この学校は世界でも初めての魔法科を専攻する学校であり、魔法は今後この世界で重要なものになっていくだろう。魔法という未知の現象は君たちに刺激や発見のある毎日にしてくれるはずだ。君たちはまだ成長途上だ。そんな君たちを学校は全力でサポートするから、困ったことがあれば何でも相談してくれ」


真面目だし厳しそうではあるが、先生なりの優しさが伝わってきた。

現状信頼に足る先生だと思う。


「さて、少し早いが今日は終わりにしよう。解散!」


そういうと足早に先生が教室を後にした。


入学式が簡易的だった分、かなり早く終わったな。

レオも帰るために近づいてきた。


「よーしシュウ、帰ろうぜ」

「そうだね、おなかも減ってきたし帰ろうか」


配られたプリントを鞄に入れ、席を立った。


昼ご飯を何にしようかと考えながら歩いていると、前を歩いていた男子生徒が突然バランスを崩して倒れそうになった。


「危ない!」


とっさに前に飛び出し、その生徒を支えた。


「あっ・・・ごめん、助かったよ」

「大丈夫?立ち眩みでもした?」

「そうだね、長く座っていたからかもしれない」


同年代にしてはやや小柄で声もやや高かった。

ブロックの入っているおしゃれな坊ちゃんヘアーがよく似合っている。

男にしては顔つきも中世的で可愛らしい。

・・・話してから気づいたがこの子、朝に黒服を引き連れていた財閥の御曹司だ。


玄関先での黒服たちのやり取りを見ていたので、あまり関わらないでおこうと思っていたのだがしょうがないか。

体勢を立て直した御曹司が背筋を伸ばしあいさつをしてくれた

ただ立っているだけなのに優雅さを感じる佇まいだ。


「助かったよ。僕の名前、白雲 悠(はくうん ゆう)って言うんだ。『ゆう』って呼んでほしい」


自分の名前を少し言いにくそうにしているのは気のせいだろうか。

今もこちらの反応を伺っている感じがする。


「僕は五十嵐 秀介(いがらし しゅうすけ)。よろしくね」

「実家が有名だから聞いたことあると思うんだけど、あまり気にせず接してほしい」


そう言うと笑顔で手を伸ばしてきた。

めっちゃいい奴そう。


今朝黒服が騒ぎを起こしていたのを目の当たりにしたせいで御曹司本人にもいい印象は抱かなかったが、話してみると印象が変わった。


不安げな表情が見え隠れするのは、過去に有名すぎる実家が人間関係の足枷になったことがあるのだろうか。


今朝の黒服のイメージで敬遠していたのが申し訳ないくらいだ。

手を握り返すと、さらに嬉しそうな表情をした。


「じゃあまた明日、秀介(しゅうすけ)!」

「うん、じゃあね(ゆう)君」

軽く手を振りながら教室を出て行った。


「なんかめっちゃいい奴そうだったな」


傍観していたレオが口を開いた。


「そうだね。今朝の黒服たちのせいで誤解してたよ」


新しい友達もできたことにルンルン気分で玄関までたどり着いた。

靴を履き外に出た時に、違和感に気付いた。


「あれ、ここに段差無かったっけ・・・?」

「・・・あったな」


今朝、(ゆう)君が転んだ段差が完全に平坦になっていることに気づき、財閥の影響力に恐怖した。

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