先生がきた
石のように弾む心
男子たちの嫉妬と殺意を感じながら席で座っていると、10分くらいで席がすべて埋まった。
みんな入学して緊張しているのか、一部のグループを除いて静かにしている。
もちろん、僕もその一人だ。
やや緊迫した空気が流れていたが、チャイムが鳴るのとほぼ同時に教室のドアが開いたことで一層引き締まった。
入ってきたのは、切れ長の目に束ねられた髪がピシッとした黒のスーツと良く似合っている女の先生だった。
歳は20台半ばくらいだろうか?
近寄りがたい雰囲気があるが、綺麗な大人の女性という感じだ。
教壇に着くとクラス内を一瞥し、はっきりとした口調で喋りだした。
「全員揃っているな。早速ホームルームを始める」
威厳を感じさせる先生の声に思わずみんな背筋が伸びる。
「まずは入学おめでとう。このクラスを担当する刺島だ。よろしく頼む。本来なら体育館で入学式を行うのだが工事が延期していてな。簡易的だが教室で行う」
言葉の端々から真面目さが滲んでいる先生からは、気難しい印象と厳格な雰囲気を感じる。
「まずは机の中を確認してほしい。教科書と学生手帳が入っているはずだ。学生手帳はICチップが埋め込まれており、学校内の施設や備品を使う際に必要になるので常時携帯すること。机やロッカーのカギにもなる」
机の引き出しを閉めると自動で鍵がかかり、机に手帳を近づけたら鍵が開いた。
どんだけ金掛けてるんだ。無駄にハイテク過ぎる。
校舎を見た時から分かっていたが、普通の学校とはスケールが違うらしい。
「無論教科書などは学校に置きっぱなしでいい。わざわざ持って帰るのも面倒だろうしな」
盗難対策などで学校に持ってくるものは持ち帰ることを推奨されていたが、そういう面倒なところを財力で強引に解決したらしい。
「それとこの学校でのみ使用できるアプリがある。このアプリを使用すれば自身のテストの点数や成績が確認できたり、学校内の購買部や食堂で使用できる電子マネーも使える」
この学校はアプリまで作っているのか。
まあテストの点数とか成績はあまり見ない気がするし、学校内でもキャッシュレス決済というのはやりすぎな気がするけどどうなんだろう?
「それとこの電子マネーだが、学校の特定のイベントで良い成績を収めたりすると加算されたりする」
うん、それはやりすぎだろう。
「・・・私個人としては、生徒たちの学習や成長に金銭に絡むものを配布するのはあまり好ましいとは思わないがな。一応、学校の方針だ」
どうやら先生もやりすぎと思っているらしい。
碧水蒔財閥はもしかしたら価値観が少し壊れているのかもしれない。
「さて、ここまでで何か質問はあるか?」
すると、先ほどのナンパ騒ぎの時に教室にいた3人組の一人が手を挙げた。
「お前は猿堂だな。質問はなんだ?」
「先生は結婚してますか?彼氏はいますか?立候補していいですか?」
何言ってんだこいつ。
クラス中が驚愕の表情で声の主を見た。
普段はあまり驚かないレオもびっくりしている。
すると先生が眉間にしわを寄せながら話し始めた。
「・・・ふむ、その勇気に免じて答えてやろう。結婚はしていないし彼氏もいない。だが、あまり調子に乗るなよたわけ!!」
先生の手元から何かがとてつもないスピードで放たれた。
「がっっ・・・!」
猿堂の眉間に何かが当たってそのまま倒れた。
それと同時に床に小石が落ちた。
これは魔法か?
石を生成して飛ばしたのか。
あまりにも早すぎて見えなかった・・・
しかも眉間ど真ん中に当たっていてコントロールも良い。
「さて、ほかに質問はあるか?なければホームルームを続ける」
この状況で質問できる勇気のあるやつはいなかったのでそのまま終わった。
床では猿堂が眉間を押さえて悶絶していた。
哀れ猿堂。
だがお前のおかげであの先生は絶対に怒らせてはいけないことがわかったよ。




