6話 ヤンさん、俺って不敬罪ですか?
リガールの町の少し離れた場所にあるイグナーツの森。そこを抜けると小高い丘がある。そこから眼下をみおろすと、そこには中世ヨーロッパの様な街並みの都市があった。
「ついたぞ!あれがリガールの町だ!」
「おお!意外と森から近かったんですね!」
「まあな。それにしたってお前どうやってあの森で迷うんだ?駆け出し冒険者のチビ共でも迷わねえぞ?」
「ははは…実はとんでもない方向音痴でして、」
これは事実である。魁はバイトの初出勤の帰りに簡単なはずの道に迷い、結局マップアプリに頼るという恥ずかしい経歴を持っている。それを度々麗凪にいじられていたのだが悲しくなるので思考に蓋をする。
「…お前、音楽の才に全振りしたような奴だな。」
「ヤンさん、それマジで笑えないです。あと、僕はカイです。自己紹介遅れました。すみません。」
「おいおい拗ねるな。悪かったよカイ。それより、音楽だ!俺がリガールの領主のメンデス子爵に話をつけて許可貰ってくるから、人材を集めるの手伝ってくれ!」
「…ヤンさん、この国には貴族がいるんですか?」
神様が上流階級に転生する道があると言っていたからある程度分かっていたが今一度確認してみよう
「ん、そりゃそうだ。まあ大丈夫だろ。まかせとけ」
「ヤンさん、子爵様って大分偉かった気がするんですが、?」
「んー、すまん。町に着いたら説明するから、今は勘弁してくれ」
なんだろう、だんだんなんだか展開が読めてきた気がするぞ?ヤンさんって実は子爵様の御曹司だったり、格上貴族様のご子息だったりするのか…?でもその場合一人でいることが説明できないな?うん。町に言って説明聞こう。
「わかりました。でもいきなり不敬とかは勘弁してくださいね?」
「はっはっは!それはないさ!安心しな!」
ヤンさん、本当に大丈夫だろうか。そんな心配をよそに、魁たちはリガールの町に着いた。
リガールに着くと検問の列に並ばされた。大分時間がかかりそうだなと思っていると、ヤンさんがとんでもないことを言いだした。
「うん。早ければ早いほうがいいか。よし、カイ。貴族用の列に行くぞ」
「ヤンさん!?何言ってるんですか!それ完全に不敬ですって!」
「大丈夫だって。みてろよ」
ヤンさんがニヤニヤし始めた。終わったか…
「な!おっ王太子殿下!!お待たせして大変申し訳ございません!!おい!今すぐご一行をお通ししろ!」
ま、まさかヤンさんが自信満々だったのって?
「な?」
「…俺、不敬罪ですかね?」
遅れました。次回から演奏回に入ります。おそらく。




