第57話・千夜一夜物語 14
白い靄の先から皆んなが見えてくる。
皆んなの想い、気持ち、夢・・・・欲望を知った。
何だか皆んなへの見方が違う気がする。
俺はどうしたら良い?最初の思った通りにシンドバッドさんの願いを優先するべきか。
そもそも願いに違いはないハズ。この人を虜にする魔法が解ければ全てが元通りになるんだから。
皆んなの俺への想いは全部偽物なんだから。
俺がまたこの異世界で一人になるだけなんだから。前の世界と同じ様に。
それだけなんだから。
努力しよう。前の世界みたいにならない様に。
この世界を少しは知った状態から0スタートするんだから。前の世界の失敗を知ってるんだから。アドバンテージは十分ある。
この世界では上手くやろう。
早く、皆んながこっちに気づく前に。
「ジンさん。願いを叶えてもらうにはどうしたら良いですか?」
「願い決まったん?」
「・・・はい。俺の願いは俺が皆んなにかけた魔法を解く事です」
「ホンマにそれでええん?」
「・・・はい」
ジンさんはそのまま黙る。
俺はじっとジンさんの目をみる。
ダメなのか?これは本当に俺の心から願いだ。これ以上はない!これが・・・皆んなの為なんだ。俺はいらないんだから。
早くしてくれ!早く!決めてくれ!どんな条件でも飲むから!
早く早く早く早く早く早く!!
服の下にじんわり汗が滲んでくる。息がし辛くなる。数秒が何時間にも感じる。目の前にいるハズのジンさんがとても、遠く感じる。
視線の中心に気持ちが吸い込まれる感じがする。熱が上がる。頭がクラクラする。
脳みそが空に流れ出てる様だ。
耳も遠くなる。何か音がする。
ジンさんお願いします!
何も聴こえない。何も聴きたくない。何も聴かない!
「マスター!!」
「我が君!!」
「ご主人様!!」
「天使!!」
皆んなが駆け寄ってくる。
やめてよ。ダメだ。俺はもう決めたんだ。そうするって!早くしてくれ!ここから消えたいんだ!いなくなりたいんだ!
その感情は偽物なんだよ、俺が今その偽物をなくすからさ。やめてよ。
偽物の感情に振り回されるのはもう懲り懲りだろ。前の世界でそうだったじゃないか。
頼むよ。このまま、このまま消えさせてくれ。
皆んなが俺の周りに集まる。
皆んなの顔を見る。
何だよその顔。そんな顔しないでよ。
バイコさん、アーズさん、バイオさん、アラジンさん。
ごめんなさい・・・・。
もう俺の決心は鈍ってしまった。




