第七十二話 朝の試練
「おはようございます、御主人さま。朝食の準備が出来ていますよ」
いつもの朝。葵の柔らかく透き通るような声が耳に心地良い。
それにしても今日のメイド服はいつもより露出が多めな気がする。朝から刺激が強すぎるんだが。
「ああ、おはよう葵。今日はとても良く眠れた気がする」
ここ数日、朝起きると身体が痛かったのだが、今朝は痛いところもないし、疲れも感じない。控えめに言っても絶好調といった感じだ。
「それは良かったです。ひだにゃんが言っていた加護の力でしょうか? それとも解放された力のおかげかもしれませんね」
にっこりしながら、おはようのキスをしてくれる葵。
この天使可愛い葵を抱きしめてやりたいが……動けない。
すあま化が解除されているので、ベッドの上はカオス状態。桜花さんと楓さんは鍛錬があるから居ないみたいだけど、皆さん寝相が悪すぎますよ?
葵のメイド服とはまた違った意味で、朝から刺激が強すぎる。大事なことだから二度言いました。
うーん、どうしたものか。全然困っていないけど、困ったフリをする。
「ふふ、御主人さまのおはようのキスで起こされれば良いかと」
見かねた葵から助け舟。なるほど……撫子さんパターンか。悪くない……いや最高じゃないか!! さすがは出来るメイド。
とりあえず動きが取れないので、一番近くに顔があった理子ちゃんにキスをする。
「…………」
スパーン!!
目を覚ました理子ちゃんに思い切りビンタされた。解せん。
でもまあ、たしかにいきなりキスするのはマズかった。切り付けられるかと思ったら、向こうからお返しのキスをしてきた……やはり解せん。
「菖蒲、茉莉、起きろ朝だぞ」
菖蒲と茉莉に声をかけながら目覚めのキス。
「な、ななな……私を起こすつもりですか命さんっ!?」
「ば、ばかっ!? 目が覚めちゃったじゃない!!」
うん、そうだね……としか言いようがない。
「私……キス初めてだったんですけど……びっくりして憶えていないので、もう一度ちゃんとしてください」
「ほ、ほら、早くめを閉じなさいよ、起こされっぱなしじゃ気が済まないから、これで貸し借りなしよ?」
菖蒲にもう一度キスをして、茉莉にキスをされる。うん、たしかにプラスマイナスゼロ。貸し借り無しだ。
さて、次はゆり姉と雅先生か……って、二人とも絶対起きているよね? 目が合ったし。
「「うーん……むにゃむにゃ」」
なんてワザとらしい……でも期待されているならやるしかない。
ゆり姉に目覚めのキスをする。
「ん……おはよう命。素敵な朝ね」
抱き着いてくるゆり姉。ああ……懐かしいこの匂い。癒されるけど、薄着だから感触が……
「馬鹿ね、当てているのよ」
はあ……このまま寝ていたい気分だが鋼鉄の意思で誘惑を跳ね除ける。まだ終わっていないからな。
最大の難関は雅先生だ。巨大すぎる双璧が邪魔してこの角度からだとキスができない。
これは……どかして良いんだよな? いや待て、あえてそのまま頭を突っ込むというのも捨てがたい……
仕方ないんだ。不可抗力、他に手段が無いことを慎重に確認したうえで、必要最小限……うんぬんかんぬん。
ドキドキしながら手を伸ばす。
「命くんの手を煩わせる必要はない。さあ私たちが抑えている間にキスするんだ!!」
「そうよ、こんなものこうしてやる……」
いつの間にか桜花さんと楓さんがいて、雅先生の双璧を両サイドにぐいっと引っ張って道を作ってくれる。
めっちゃ痛そうなんだけど大丈夫なのかな雅先生?
このままだと可哀そうなので、急いで谷間をすり抜け目覚めのキスをする。
「痛ったあ~い。酷いわ桜花さん、楓!!」
やはり痛かったのか。ちょっぴり残念とか余計なことをしてくれやがってなんて少しもこれっぽっちも思っていませんからね? 桜花さん?
「「そんな凶悪なものを持っている雅が悪い」」
桜花さんと楓さんの息ピッタリ。
「そんな酷いわ~!! 見てみて天津くん、ほらこんなに腫れちゃってる~」
ぶしゅー
なんてもの見せるんですか雅先生。鼻血噴いたじゃないですか!! でもありがとうございます。なんだか元気が出ました。
ふふふ、朝食が楽しみだ!!
「命くん、どこに行くんだい?」
「え……朝食食べるんですけど?」
「朝食が食べたければ、私たちを倒してから行くのね」
桜花さんと楓さんに両肩をホールドされて動けない。
「あの……倒すって具体的に何をすれば?」
「命くん……敵に倒し方を教えるわけないよね?」
桜花さん……俺たち敵対関係だったんですか!?
「スキあり!! 油断大敵よ命くん!!」
楓さんにキスされてしまう。くっ、速すぎて止まっているようにしか見えなかった!?
「今朝の鍛錬はとこのくらいでいいかな」
「毎日鍛えてあげるからね、命くん」
いつの間にかキスの鍛錬になっている件。こんなのが毎朝続くなんて耐えられ……るな。
あとはひだにゃんだけだけど……
どうせすあましか食べないんだから起こす必要ないか。それに猫はたくさん寝る必要があるだろうし。
『にゃふ……? 明るくなっているにゃあ……もう少し寝るにゃ……むにゃあむにゃあ」




