第十五話 命くんは本当にわかりやすいね
「……ありがとうございました。すいません、みっともないところを」
「命くん、みっともないことなんてないよ。私で良ければいつでも胸を貸すよ」
冷静になると急に恥ずかしくなってきた。顔が熱い。
「ところで命くん、聞くところによると撫子と同じクラスなんだって?」
「は、はい、な、撫子さんにはいつもお世話になっております!!」
「ぷっ、何急にかしこまっているのさ。あ、もしかしてそのことでわざわざ神社まで?」
急にニヤニヤしだす桜花さん。
ってしまった!? 良く考えたらうっかり撫子さんなんて言ってた!?
「あ、あの、これお見舞いです!!」
「あ~っ!? これ、すあまじゃない!! 懐かしいな!! これを撫子に?」
「は、はい、昨日家で食べて気に入っていたみたいだから……」
「ふ~ん……命くんの家に撫子が……へえ~」
ああああああ、しまった……うっかり本当のことをっ!?
「な~んてね。全部聞いているよ。でもまさかね……これってやっぱり運命?」
「運命? それってどういう……」
うっ……、桜花さんの目の色が変わったような気がする。
「実はね、約束していたんだよ」
「……約束?」
「撫子が生まれたとき、命くんの許嫁にするってね」
「い、いいい許嫁っ!? な、撫子さんが?」
俺は何を聞いているのだろう? 頭が真っ白で混乱してしまう。
「健と橘花にも負い目があったんじゃないのかな? 命くんを撫子の婿として神社に捧げるって言ってたし」
そんな……俺の人権は? 自由意思はどこへ?
素晴らしい!! グッジョブ!! 喜んで!!
あれ……? じゃあ、なんで父さんも母さんも言ってくれなかったんだろう。
「許嫁としたのはあくまでも親同士の約束。子どもたちには自由に育って欲しかったから」
そう言って手をひらひら振る、桜花さん。
なるほど、ということは、撫子さんもこのことは知らないわけで。
名ばかりの許嫁、何の意味もなかった……。
「ふふふ~。わかりやすく落ち込んでいるね命くん。安心しなさい、昨日撫子には話してあるから」
な、何だってええええ!? 俺の知らないところで急展開!!
「あわわわ……な、撫子さんは……何て?」
「聞いたとたん熱出して倒れた」
……熱を出すほど嫌だったとか? 何かごめんなさい……やっぱり俺のせいだった件。
「ぷぷぷっ、そんな世界の終りみたいな顔しない。嫌とかじゃなくて、あの子色恋とかまるで興味がないからね。見た目はあんなだけど、中身は小学生の男の子みたいなんだ」
小学生男子……まあたしかに。
そうか……嫌じゃないのならわずかながらでも希望が?
「今度は元気になった。ふふっ、撫子も言っていたけど、命くんって本当にわかりやすいね」
「うーん、周りからは何考えているかわからないって言われるんですけど」
親娘そろって読心術でも使えるんじゃなかろうか?
「まあまあ、わかりやすいというのは褒め言葉なんだよ。それよりも、命くんに話しておかないといけないことがあるんだけど……この後時間ある?」




