第百二十二話 結界村
「命、ここが結界を守る東宮司家の人々が暮らす隠れ里。結界村だヨ」
結界村か。村全体からすごい気を感じる……きっと何千年も前から人知れず……
「……あの、ここって隠れ里なんですよね?」
なんか普通にコンビニもあるし、観光案内所とかもありますけど……
「ん? ああ、葉を隠すなら森の中というだろう? まあ、そういうことだ」
なるほど……逆転の発想か。たしかに隠れ里要素ゼロだから逆に見つからないのかもしれないな。
「さあ、まずは村長に挨拶しに行くヨ」
「はい」
村の……というか完全に町だけど、お土産屋さんや食事処が連なる通りを進む。
「あれ? こんなところにすあまを売ってる店がある!?」
和菓子屋の入り口に貼ってある『すあま始めました』の文字が目に留まる。
こんな山奥にすあまが? ひだにゃんにお土産頼まれていたし、買っておいた方が良いだろうか? 帰りだとお店終わっているかもしれないよな……田舎だと閉店時間早いから。
「ほう……すあまネ。ちょっと寄って行こうか?」
キアラさんのOKが出たので早速店に向かう。なんだか寄り道してばかりだけど、まさか……これが人を寄せ付けない結界の力……なのか?
「いらっしゃいませ~!!」
可愛らしい店員さんの声に迎えられた店内は、清潔で落ち着いた感じのインテリアにセンスを感じる素敵空間だった。平日だというのに結構若いお客さんが多くて驚く。
「なあ命、あそこに居るのお前の妹たちじゃないのか?」
何言っているんですかキアラさん。そんなわけ……
「……何をしているんだ? すあま、まあす」
キアラさんの言う通り、客の中に思い切り見覚えのある二人組を発見。見間違いようのない目立つ髪色……なるほど……すあまを隠すならすあまの中に。全然気付かなかった。
「え……? お、お兄さま!? なんでこんなところに? やはり運命?」
「ははははは、やはりお兄さま無双の祝福は間違いないな!! 無理やりすあまに連れてこられて最悪な寝起きだったが、来た甲斐があった!!」
よく見たら……まあすお前それ寝巻じゃないか……ちゃんと着替えて……うわっ!? 公衆の面前で抱き着くなって。
「新しくすあまを売り始めるって情報が入ったから、現地取材に来たの」
すあまは全国津々浦々、すあまの最新情報を動画で取り上げている。転移の能力あってのことかもしれないけど、それにしたって熱意や情熱が桁違いだよ。尊敬しかない。
「それはすごい偶然だな。よし、俺も一箱……いや待てよ……何箱買っても足りる気がしないんだが……」
昨晩の悪夢がよみがえる。かといって、ありったけください、なんて言ったら他のお客さんにも迷惑かけてしまいそうだし……。
もしこのお店のすあまを食べるために、わざわざここまで来た人がいたとしたら? 俺は転移出来るからその気になればいつでも買いに来れるんだしな。
「すいません、すあま二箱ください」
別に観光に来たわけじゃないんだから、とりあえずはひだにゃんの分だけで良いだろう。
「毎度ありがとうございます!! 二箱で七千五百円です」
それにしても気持ちの良い店員さんだな。心から買って良かったって思わせられる。
でも……高い……高すぎる。
「お兄さま、もしかして高いとか思ってる? このお店のすあまは、ここでしか生産していない貴重な『隠れ砂糖』をふんだんに使用しているんだよ?」
な、なるほど……すあまの解説で理解は高いのは出来たけど、もはや隠れ里って隠す気ゼロだよな……
でも『隠れ砂糖』を使ったすあまか……なんかめっちゃ美味しそう。
二箱あるんだし……一箱ぐらい食べても良いよな? ふふふ。
「……あれ? おかしいな、開けようとしてもビクともしないんだけど」
よく見たら、すあまの箱に封印の文字が浮かび上がっている。
『にゃふふ~!! お土産楽しみにしているにゃああ!!』
くそっ……ひだにゃんのヤツ、遠隔封印とはやりおる。さすがは神の眷属ということなのだろう。
「だったらお兄さま、ここで食べていけば良いじゃないか」
まあすの言葉にハッとする。その手があったか!!
「良いんじゃない? まだまだ時間はあるし、皆でお茶するのも悪くない」
キアラさんがそう言うのなら……
店内には畳の喫茶スペースもある。ちょっとぐらい良いよな?
「私はスペシャルすあまセットを頼むヨ」
「私もそれで!!」
「私も!!」
三人はスペシャルすあまセットか……
ふむ、三種のすあまとお茶飲み放題が付いて九千八百円……意外と……いやかなり高い……な。
「あはは、ここのお茶は神水と呼ばれる湧水を使用しているからネ。若返りとデトックスに効果があるらしく、ネット上では一リットル百万円の値が付くこともあるんだヨ」
そうか、どうりで女性客が多いわけだ。そう言われてしまうと、めっちゃ安く感じてしまう不思議。
「じゃあ、俺もスペシャルすあまセットお願いします」
隠れ砂糖の結界セットと迷ったけど、やっぱりすあまが食べてみたい。
「あ……申し訳ございません。すあまはちょうど品切れになりまして……」
申し訳なさそうに頭を下げる店員さん。
なん……だと!? でも大丈夫……だってすあま耐性あるから!!!
「じゃあ……隠れ砂糖の結界セットで」
「かしこまりました~!!」
明らかに隠す気が無い、隠れ砂糖の結界セット……一万四千八百円……お高い。
さぞ美味しいんだろうな……頼む、そうであってくれ!!




