実力者
結局、授業終わりまで担任のウルスは戻ってくることはなく午前中のEクラスの訓練は終わった。
ウルスがいなくなった後、短時間で皆自分で神力を創る事ができ、人生で初の神力を使うことができたEクラスの生徒達は満足気に教室へと戻った。
午後は座学であったが、授業中にも関わらず全員神力を創ることを授業そっちのけで集中していたのでウルスの怒りが飛び散ったのは言うまでもない。
授業も全て終わり雷音以外のEクラスの生徒達はすぐ家へと戻っていった。おそらく親へと報告する為だろう。期待外れと呼ばれていた彼らがこの日を楽しみにしていたのは間違いない。
そして雷音だが、昨日サンに言われていた訓練所に足を運んだ。そこは三年のSクラスの専用の場所であり、二年の、おまけにEクラスの自分が入っていいものなのかと二の足を踏んでいたが、覚悟を決めて扉を開いた。
「失礼します……って誰もいないな。サン兄はまだ聖徒会の仕事なのかな? んー、仕方ない待つか」
訓練所の中には人の気配は無く、周りを見渡しても誰の姿もない。
仕方なく近くにあったベンチに腰掛けようとすると突如雷音の背後に何者かが現れた。
「おい……」
「うわ!……って誰ですか?」
雷音が驚くのも無理はない。一切の気配を感じられなかったし、誰もいないと確認していたからだ。
「ただの通りすがりの者だ。で、お前は何故ここに?」
「ちょっと知り合いに呼ばれて……(てかどう考えてもこんな場所に通りすがりの人はいないだろ……怪しさ満点だがこの場所にいるってことは……)」
「そうか。お前はどこのクラスだ?」
「Eクラス……二年のEクラスです」
「ほぉ、となるとお前があの噂の……丁度いい、我と勝負しろ」
「はぁ!?いやいやお断りしますよ」
「何故だ?」
「いやいや学内で私闘は禁じられてますよ? それに俺、誰かもわからない人といきなり……っ!?」
雷音が話している途中に男は手持ちの槍を雷音の顔面に向けて突き出すが雷音は間一髪それを避けた。
「い、いきなり何をするんだ!?」
「黙れ。我が絶対だ。さぁ我と戦え。従わなければ……殺す」
目の前の男がそう言った瞬間、雷音の背筋に寒気が走る。殺らねば殺られる、まるで貪欲で凶暴な獣と対峙したかのような感覚であった。
「……だったらやってやるよ! 神装光臨!」
即座に白金の鎧を纏い、雷が迸るが如き神力を放つ雷音に対して目の前の男は口角を上げていく。
「いいぞ……我を前にして怖気ないとはな。ならば我も纏うとしよう……神装光臨」
白き神力のオーラが男を包み込む。その光は雷音よりも強く輝きを放っていた。
「な……なんて圧なんだ……あの時感じたルナやウォードよりも遥かに……」
男が纏う神装は目が眩む程の黄金の鎧と兜、そして鮮やかな青いマント。そして見たこともないような文字が刻まれし穂先が鋭き槍を持つ姿はまさに威風堂々――そんな言葉が似合う。
「なんて……力強い神力……ぐぅぅ……」
暴風のような荒々しい男の神力の威圧感に押し潰されそうになるが、負けてなるものかと前へと一歩踏み出した。
「行くぞ! 先手必勝!喰らえ雷……」
「遅い」
気付けば雷音の喉元には男の槍が突き付けられていた。突然の事に息を飲む。全くと言っていい程に見えなかったのだから。
「先手必勝と言うくらいなら相手が纏う前に攻撃するべきだ。ルールも何も決めなかったんだ。卑怯だなんて言わさんぞ?さぁ次はどうするんだ?」
「くっ……」
雷音がバックステップでして間合いをとるものの、男は何もしてこない。まるで雷音の行動を待つように。
「舐めるな!」
警鐘が頭に響く。全力で行けと、加減などすれば命取りになると。だからこそ、身体は自然に今取れるであろう最善の手を本能で行ったのだ。
「貫け! 雷光閃烈拳!!』」
籠手に変形し、右腕に装備された雷霆には雷が収束され、雷音は全力で男の元に向かって拳を繰り出した。が、男は身体を軽く捻るだけでいとも簡単に雷音の技を避けてしまった。
「……遅いと言っただろ。勿体無いな、素質はありそうだがまだまだ雑魚だな」
「くそっ、なんなんだよアンタは!?馬鹿にしてるのか?」
「馬鹿にしてるかだと?笑わせるな、貴様など馬鹿にするまでもない。その程度の実力ではな。所詮底辺は底辺ということか……弱虫に囲まれ、身を寄せ合うなど愚の骨頂」
「仲間を馬鹿にするな!!あいつらは俺の大切な……」
雷音が叫んでいる途中、男は凄まじい速さで槍の柄を彼の胴体に打ち付け、雷音は勢いよく吹き飛ばされた。
「ぐはっ……。はぁ……はぁ……くそ……」
「雑魚は雑魚同士傷を舐め合っていればいい。そして一生微温湯に浸かって生きていけば良い。それが貴様達に相応しい」
「なんだと……俺は、俺達はそんな生き方なんて望みはしない! 虐げられても、逃げないで……逃げないで必死に生きてきたんだ! それを愚弄するというなら許さない!」
「ならばどう許さないというんだ?」
「力の限り……ぶっ飛ばす! 出ろぉぉお! 粉砕する雷槌!」
ギリギリまで追い詰められたことで雷音は昨日の戦いの感覚を思い出す。彼の手に現れたのは雷神が穿つ破壊の大槌。
「ほぉ……感情の起伏で神力が一気に増大したな。そして報告通りに己の守護の持つ神器と違うものを出すとは……興味深い。だが……全てを貫く飛槍!」
男に打ち付けようとした粉砕する雷槌は男が投擲した槍とぶつかり合う。が、質量で勝るはずの粉砕する雷槌は細い槍に打ち負けて弾かれ、雷音は再び吹き飛ばされ、訓練所の壁に打ち付けられてしまった。
「がっ……」
続けて全てを貫く飛槍は雷音に目掛けて飛んでいく。そして槍が雷音に突き刺さろうとしたその時、甲高い金属の衝突音が聞こえて槍は男の手元に戻っていった。
「槍が……助かった……のか? あ、あんたは?」
雷音の側には見た目幼い一人の少女が立っていた。
そんな彼女も神装を纏っていた。雌獅子を形取った鎧だがそれはまるで血液に似た深紅。背後には球体の様な物が浮かび上がりそれが雷音に向かってきた槍を防いだのだった。
「やりすぎ……実力試すだけなのに本気で全てを貫く飛槍を投げるなんて……めっ」
「ちっ……真剣勝負に水を差しおって。殺す気など最初から無いぞ。最後はついつい本気を出してしまったがな」
「ディルの本気が本気出したら死んじゃうから……ねぇ、君大丈夫?」
「は、はい、なんとか。というかあなた方は一体……?」
雷音を襲った者と助けた者、二人は知り合いの様で雷音の頭は混乱していた。何者なのか疑問に思って話しかけようとした時、訓練所の扉が開いた。
「遅くなっちゃってごめんね雷音、急な仕事が入っちゃって……ってなんでもう纏ってるの?あれ会長と副会長までなんでここに?」
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