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外野

「次鋒戦、勝者Sクラス!」


リンとルナとの闘いはルナの勝利で終わった。

安堵していたのは教師達や今までずっとEクラスを下に見ていた生徒達だ。

先鋒戦でEクラスが勝った事で動揺が走っていた者達が次鋒戦でSクラスが勝ったことで先鋒戦は()()()だと思い込むことができたからだ。



当然Sクラス相手にまぐれなどない事は有り得ないことだ。だが偶然にも、そう偶然にも何故か勝ってしまったと認識することにしたのだった。

最低が最強に成り上がることなどない、そう思い込むのであった。



しかしそう思わない者達も少なくはない。



学園の最強の集団である『聖徒会』の面々は一回戦からEクラスの闘いを見てその実力を確認していた。


「これで全員神装持ちですわね。それも名有り(ネームド)ですわ。しかも神装を纏えてからそれ程時も経っていないというのに……末恐ろしいですわ。会長は知っていましたの?」


学園最強と呼ばれる聖徒会会長であるディーンに尋ねるのはナディアだ。ディーンは答える。


「まぁな。理事長からは聞いていた。蒼天雷音と闘ったのもその為だ」


「そうですわね。その為にサンに怒られてしまいましたからね」


「まったく……将来の()()である僕が雷音に神装の使い方を最初にレクチャーしたかったのに」



少々苛立った顔を見せたのはこの国の王子でありルナの兄であるサンだ。



「気が早いですわよ。大体今の蒼天さんでは妹さんの婚約者(フィアンセ)となるのは難しいのでは?」



「大丈夫さ。彼はこれからもっと強くなる。いや、強くなってもらわなくちゃならないんだ。

そして()()から戻って来た時にその立場に相応しい男になれば問題ないさ」


「随分期待していますのね?」


「兄としては妹の恋を成就してやりたいからね。それに彼は僕の大切な友人でもあるんだ」


「そうですか。ではわたくしも将来の()()としてお二人を応援しますわ」


「いや、君は民達の流行りの小説のように婚約破棄しても構わないよ?」


「馬鹿おっしゃらないでくださいな。そんな小説の様に軽々しく婚約破棄なんてあり得ませんわ」


「はぁ……僕の好みは優しくてお淑やかな女の子なんだけどなぁ」


「あら、わたくしも優しくてお淑やかですわよ?」


「はいはい、()()な女子に言われても説得力がないよ」


「闘いの中でお淑やかさなんてなんの役にも立ちませんわ。うふふ」


軽口を叩き合う二人は幼少の頃からの婚約者同士であった。

サンは生き残れば将来的にこの国の王になるのはほぼ確定している。


その為に最高位の爵位である公爵家の長女であり才女と呼ばれたナディアが婚約者として選ばれた。


元々面識もあり仲も悪くは無かったのですんなり決まったのであったのだがお互い共に負けず嫌いな所がある。


デートと称するものは対決とも言い換えることもでき、運動、勉学、果ては神装を纏っての闘いさえもである。それがプラスに繋がるのかマイナスになるのかは本人達のみが知る。



「二人共煩い……仲良いのも程々にする」



表情は常に一緒だが内面的には少々怒っているのは副会長であるアイラだ。



「ごめんなさいねアイラ。この人ったら女性を立てるってことを知らないのですわ」


「君じゃ無ければ知ってるんだけどね」


「……二人共血を見ないとわからない……?」


「「ごめんなさい」」


「わかればよろしい。ディーンはどちらが勝つと思う?」



「普通に考えればSクラスだな。我ら(Sクラス)は三年間の間誰一人負けたことない。

だが……今回はEクラスかもしれんな」


「それは蒼天雷音に肩入れしてるから?」


「いや、そういう訳ではない。あくまで勘だ。ただ成長速度の凄まじさから見ればありえないことではない」


「そう。私もEクラス」


「その根拠は?」


「蒼天雷音の作るご飯が美味しいから」


「フッ、お前らしいな」



――――



聖徒会の面々が雑談してるように()()()()()でも同じ様に雑談する二人組がいた。



「ルナが勝ったな。流石は我が娘だ」


「結構ギリギリでしたわよ?親馬鹿も程々にしてくださいな?」


「親馬鹿ではない、事実を述べたばかりだ」



青の刺繍が入った赤のマント羽織り赤い髪と髭を蓄え、娘の闘いを見て親馬鹿を発揮するのはこの国の王でありルナとサンの親である国王と王妃であった。



「はいはいそうですか。でもEクラスって確か雷音君がいるのよね?あの子を見るのも久しぶりだわ」



「ああ、報告によれば最近やっと神装を纏えたと聞く。()()の奴もこれで一安心だろう。アイツが生きていれば一番良かったのだがな……あの兄妹には辛い目に合わせてしまったことが未だに後悔している」


「国王である貴方がそんなこと言ってはいけません。それにあの時は……でも未だに信じられません」


「奴は我の大切な友だった。だがあの様な死に方をしたのは我とて信じられんよ。父である先代国王が蒼天家を取り潰してしまったときも庇い切れなかった。

今でも奴の無実を信じているしその証拠を探しているんだがな」



国王は目を伏せ過去を思い出していた。

()()()()()と呼ばれていた雷音の父を。



「私とて同じです。ただ今は雷音君の成長を見守りましょう?あの方の分まで……。それに雷音君がルナをお嫁さんにもらってくれるかもしれませんよ」


「むっ、それは別だ。大体だな、まだルナは子供だぞ?結婚のことなど考えなくても良いだろう」 


「……あなた、サンは幼少の頃から婚約しているのよ?」


「サンは我の後を継ぐのだぞ。優秀な妃をつけねばならんだろう」


「はぁ……ルナだって王家の血筋を絶やさぬようにしなければならないのですよ?まったくあなたって人は……」



――――



更に同会場の一年の観客席にて同じクラスの友人達と試合を見守る女生徒の姿があった。


「繭ちゃん、良かったね。お兄さん達凄く強いじゃん。Eクラスがどうこうって繭ちゃんのこと馬鹿にしてくる人達がいたけどもう大丈夫だね」


「そうだね。私もお兄ちゃんがあんなに強かったなんてビックリだよ。それにお兄ちゃんの相手のSクラスだけどルナお姉ちゃんもあんなに凄いなんて」


「……繭ちゃん、私は繭ちゃんから聞いているからいいけどあんまり大きな声でルナ様のことお姉ちゃんって呼ぶのはちょっと」


「あはは……慣れているからつい」



友人と談笑しているのは雷音の妹の繭だった。一年生は試合を見ることは授業の一環なので一昨日の試合から観戦していた。



一年には神力(ルミナス)を扱えない者がいなかったためにEクラスは存在しない。

しかし一学年上のクラスのみに存在するEクラスに殆どの生徒は侮蔑の目を向けていた。

更には兄が所属しているという理由で繭のことも馬鹿にする者もいた。


「まったく繭ちゃんは……。それにしてもどちらが勝つのかなぁ?」


「私はお兄ちゃん達に勝ってもらいたいな……ずっと苦労してたみたいだし報われて欲しいな、って。

あ……次の試合始まる前にちょっと御手洗いに行ってくるね」


「はーい、行ってらっしゃい」





「(席を離れたか……よし行くぞ)」


試合開始まで数分しか無かった為に急いでトイレに向かう繭。しかしこの時誰かに尾行されているとは気づいていなかった。

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