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恐神妃(ドゥルガー)vs風天魔王(パズズ)

白い閃光はヴィオの身体に群がる虫達を剥がすぐらいに強烈に輝き会場にいる者が目を抑えた。


輝きが収まるといつの間にか黒い霧は消え失せ、先程まで倒れていた者がそこに佇んでいた。


紅と黄金で彩られた神装の背後に浮かぶ十本の腕、跨るは聖獣たる獅子。額に第三の目を持つ破壊神から与えられし神器、破壊の三叉戟(トリシューナ)を構える姿はその目に映す者を戦々恐々とさせる。


恐神妃(ドゥルガー)のヴィオレット。これからお前を蹂躙する。行くし聖獣獅(ドゥン)


ヴィオの合図で眷属である聖獣獅(ドゥン)がヴィオを乗せたまま駆け出しフィリアに猛然と襲いかかる。


「ふん、神装を纏ったルーキーが調子に乗らないほうがいいよ」


フィリアは冷静に風の膜を貼り防御態勢に入る。

相手の変貌に躍らされず冷静に事を構えるのは流石はSクラスといったところだろうか。


しかし――それは悪手だった。


「ウソっ!?貫かれる!?」


破壊の三叉戟(トリシューナ)はいとも容易く風の膜を突き破り、フィリアの頬を掠った。


「あぶなっ!」


「そんな薄いので防げると思ってんのクソチビッチ」


「誰がチビでビッチだってぇ?」


「え……?あら見えないし。目の前にいたのに。っていたぁ……小さすぎて見失っちゃったし」


「殺してやるぅ!!」


普段のヴィオならそこまで毒を吐かないことに違和感を感じる雷音。しかしそれはEクラスの皆が思っているようだ。


「なぁ雷音、ヴィオどうしちまったんだ?アイツいつもオレには毒を吐いてくるけど他人にゃあんま毒を吐かないだろ」


「まぁお前ら仲良いし……ってそれは置いといて守護に精神が影響されることがあるとは聞くけど……もしかしたらあれが本来のヴィオなのかもな」


「本来の?」


「ああ、意外とあいつは周りに気を遣うタイプだろ?」


「そうか?」


「シュウにはそんなことないかもな」


「なんでだよ!?」


「(それぐらいは察してやれよ……)ま、まぁなんていうか他にも心中に何かを隠すというか。ヴィオを除いた皆が守護(ガディ)顕現してしまって、そこまで大きく態度には出して無かったけど相当焦ってたんだろう。

トドメに相手からあんなに罵られて、あんな気持ち悪い虫をけしかけられて。自分自身の不甲斐なさに感情が爆発したのかもしれない」


「怒りで……ねぇ。そんなこともあるんだな」


「どう見たってお前と一緒だろうが!」


「そうだっけ?」


「そうだよ!」


雷音がシュウにツッコミを入れている間にも試合はどんどんと進んでいく。

怒りの形相のフィリアは両手の先から二つの黒い熱風の竜巻を巻き起こす。

その熱風は周囲を干からびさせてしまう程の熱を発生させていた。


「キミ何かにこんな技を使うなんて思っても見なかったよ。ズタズタに引き裂かれるか、カラカラに乾くか、病原菌(ウイルス)に侵されて苦しむか楽しみだね。

やさぁぁぁぁしく包み込んであげる『暴嵐抱擁(トールネードハグ)』」


二つの黒い竜巻は独楽が廻りぶつかり合うようにしてヴィオに向かっていく。飲み込まれれば四肢が吹き飛ぶのも避けられないだろう。


「そんな微風(そよかぜ)なんかにやられないし。これでっ!退邪の飛輪(スダルシャナ)



ヴィオの人差し指で回る飛輪(チャクラム)は炎を巻き起こしながら回転を早めていく。

ヴィオの手元を離れるようにフィリアに向かって飛んでいくと目の前の黒い竜巻とぶつかり合い、不浄を焼き尽くす聖なる炎嵐が暴れ狂う。


何度も何度もぶつかり合うが打ち勝ったのはヴィオの退邪の飛輪(スダルシャナ)だった。


「な、何だよこれ……全部飲み込まれちゃった……あり得ない、有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない! 力があるボクがこんなザァァァコにぃぃ!」


フィリアの身体から今まで出していた黒い霧よりも更に濃いものが溢れ出しヴィオに向かっていく。霧の中には悍しい虫が大量に蠢いている。

しかし退邪の飛輪(スダルチャナ)が螺旋を描きその全てを飲み込むように消していった。


「残念だし、そんなこと有り得るんだよ! そろそろ終わりにさせてもらうし。こいつで串刺しにしてや……がはっ!?」


ヴィオが急に顔色を変えて血を吐いてしまう。フィリアの顔は計画通り、といったように口角を上げていた。


「キャハっ、やっと効いてくれたね。神装を纏ったどころか神器まで使って力もあるから少し焦っちゃったよ。

展開していた霧はボクの意思で自由に操れるんだ。だから肉眼では分からないぐらいの量の病原菌(ウイルス)をキミの体内に少しずつ運んだんだ。

驚いたかな?凄いでしょ?頑張ったんだよぉ」


「くっ……そ」


「キャハハ、やっぱりキミはいい顔するね。ああゾクゾクしちゃう……勝てるって思ったんでしょ?希望から絶望に堕ちる顔は最高だよぉ……。このまま神力(ルミナス)が尽きるまで平伏してるかい?それとも潔くトドメ刺されたい?」


「両方……ない、し。だって」


「だって?」


「『神形態変化(モード)慈愛の神妃(パールヴァティー)』そして――『血癒(チンナマスター)』」


紅と黄金で彩られた神装はたちまち白金に変わる。そして神装から溢れ出る血の色にも似たオーラがヴィオを包み込む。


「神装が……まるまる変わるなんて……なにそれ……こんな背のデカいだけの女が……?」


「なーにごちゃごちゃ言ってるんだし。悪いけどあーしにそんなバイ菌なんて効かないし」


ヴィオの顔色はすっかり元通りになっていた。

この形態は癒しの力。

体内で侵された病原菌だろうが毒だろうが神力(ルミナス)で浄化させたのである。



「なんで?なんで効かないんだよぉ!?」


「あーしだって神装纏ったの初めてだからよくわかんないし。でもこうなると回復できんだよねー。超便利!あとね、もう一つあるし」


「はぁ?……なんの話?」


「うーんとね、よくわからないけど守護が言ってるの、目の前のチビッチをブッ殺せって……『神形態変化(モード)殺戮神妃(カーリー)』」


白金の神装は今度は群青に染まっていくが神装は幾つもの髑髏をつけた不気味な姿だ。



「また変わるの!?でも何度もそうやらせない……よ?」


フィリアが念のために距離を取ろうとしたほんの僅かな一瞬、彼女の胸から生えるように三叉戟トリシューナが刺さっていた。


「え……?なに……?なんで?」


糸が切れた人形のように前に倒れるフィリア。しかしその倒れるフィリアの頭をヴィオは左手で掴み、残る右手でひたすら殴打する。

顔、腹、四肢、とにかく殴れるところはひたすらに殴りフィリアの口からは声にならない悲鳴が漏れ出す。やめるように嘆願してもヴィオの右手は血に塗れても止まらない。


会場はその虐殺劇に沈黙し目を背ける。

それは先程飛蝗に喰われていたヴィオの時以上に。


最期は顔を地面に叩きつけその身体を大地が揺れる程に踏みつけた。


フィリアはピクリとも動かなくなった。


「しょ……勝者E組先鋒!」



その蹂躙の結果に拍手どころか声も上がらない。


神装を解いたヴィオは思う、神装が纏えても纏えなくても結局は見る目はそう変わらない。

蔑む目から怯える目。自分の前には見えない壁があるのだ。



ただし、仲間を除いては。


「よっしゃあぁぁぁ!一勝だぜ!良くやったヴィオ!つーか神装纏ったお前メチャメチャ強いじゃん!」

「ヴィオ殿、良かったでござるな。おめでたい」

「ヴィオ、おめでとう。僕も嬉しいよ」

「やったなヴィオ。これで皆一緒だな」

 


喜んでくれた仲間がいた。

自分と同じ最底辺と呼ばれていたけど、この喜びを分かち合う事ができた。



それだけでも心は晴れる。



「へへっー、あーしもこれで守護が顕現したし。みんな……ありがとうね。てゆーかもう眠いってゆーか……目の前が真っ暗に……」


「っぶねぇ……っとっと」

そのまま倒れ込みそうになるヴィオをシュウが抱き止める。どことなく照れ顔である。



「やっぱり例外無く初めて神装を纏った後は意識が無くなっちまうんだな。しっかしこんな細え身体であんな馬鹿力がでるもんだ。ったく、そこに寝かせとくとするか。なぁ、ティナ先生毛布とかある?」



なんだかんだとシュウは世話焼きなんだなぁと雷音は思う。決して口には出さないが…二人がもっと近づければ良いと。

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