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太陽の軍神

早速始まったAクラスとの試合。


Eクラスの先鋒は最初の試合と変わらずヴィオだ。しかし、やはりというかCクラスを相手にしているのとはまるで違う。

Cクラスの生徒を一撃で倒した不意を突くという初手は当然の如く通じず、劣勢を強いられていた。

対する相手はヴィオと同じように徒手空拳で武器を持たない少女ノア。

冷静にヴィオの隙を狙ってくるのは見事と言わざるを得ない。

基本に忠実な攻守共にバランスが良い、闘っているのを見て正直上手いと思わせるタイプである。


ヴィオは神力(ルミナス)を初めからから全快にして果敢に攻めていくが、相手は基本守りに入っている為に攻めあぐねているという状況。そして息の切れたところをすかさず狙ってくる為ににヴィオも迂闊に手を出せない状況だ。



「はぁ……はぁ……やっぱり強いし……」



避けてばかりで体力を一方的に削られ肩で息をしているのが分かってしまう。一撃の重さにはヴィオに分があるが、闘い方が上手いのは明らかに相手だ。きっとこの状況を狙って守りを固めていたのだろう。


更には相手にはまだ神装という手札がある



「なぁ……貴女は神装は纏わないのか?」


守護(ガディ)まだ顕現してないし……」


「そうか、勿体無いな。素の状態でそれだけ強くて神装を纏えれば私達のクラスでも充分通用するだろうに。

その鍛えられた身体からよくわかる。うむ、素晴らしい。たまらないな」



「え?」



「ああいやなんでもない。コホン、一回戦で貴女を侮ったCクラスの様な明らかに現状に満足し、努力を怠る様な連中よりもよっぽど良い。神装が纏える様になったらAクラスに来てみないか?」



「えーっ!?」



ヴィオはそれを聞いて驚いたまま固まってしまう。

目線は相手を見つめたままに。


「てかEクラスのあーしにそんなこと言ってくれるなんて……びっくりしたし! ……でもゴメン、あーしはね、Eクラスの皆と頑張っていきたいんだ」


「そうか……残念だ。だが、いい。その気概を私は気に入った。なれば全力で行こう……神装光臨(ウェイクアップ)


舞台の上から放たれる神力(ルミナス)の光。

そこから現れたのは鳥の様な羽を生やし、遥か天空を思わせる蒼、そしてそれに相反する様な灼熱の紅い紋様が入った神装を纏ったノアの姿。



太陽の軍神(ウィチィロポチトリ)のノア……。貴女の心臓を頂こう……」


ノアは一歩ずつ、ゆっくりと間合いを詰めていく。

神装を纏ったノアから放たれる神力(ルミナス)は神装を纏わぬヴィオを押し潰さんばかりに圧をかける。


「くぅっ……圧倒的だし……でも、でも……負けてたまるかぁ!」


相手の神装を恐れず全力で前に出て正面から拳を突き出すヴィオの行動は勇敢にも無謀とも取れる。

本人は縮める事の出来ない力の差がわかっているのだろう。でもただで負ける訳にはいかない、いや負けたくないのだろう。



だが現実は残酷だ。



神装を纏ったノアはヴィオの拳を己の掌でいとも容易く止めてしまった。

そしてノアはヴィオの拳を握りそのまま彼女の身体を持ち上げ地面に叩きつけた。


「がはっ……」


背中を強打した為にヴィオは上手く呼吸が出来ず、立ち上がる事が出来ない。

それを見下すようにノアはヴィオの側に立っていた。


「これまでだ。痛かろう、早く降参した方がいい」


「まだ……だし!」


倒れたヴィオは手の内に長槍を錬成していた。

これは彼女の最も得意とする得物だ。

最後の力を振り絞り起き上がりざまに起死回生の一撃繰り出す。



「これは驚いた……なんともタフなことだ。貴女の可能性にゾクゾクする!だが……ここまでだ」



ヴィオの必死の抵抗は届きはしなかった。

突き出した槍はいつの間にかノアの右手に持たれた蛇の様に蠢く炎の鞭に絡め取られてしまった。


「これは私の神器、蛇炎神鞭(シウエクトリ)だ。さぁ捧げよ、貴女の心臓を」


ノアが振るった蛇炎神鞭(シウエクトリ)は迸る炎と共にヴィオの左胸に目掛けて一直線に飛んでいく。既に力を使い果たしたヴィオは抗うことさえできなかった。



「勝者Aクラス、先鋒!」


ヴィオが倒れ、審判からノアに勝利が言い渡され、ヴィオの敗北は決まった。

そんな彼女にノアは近づき手を差し出した。


「大丈夫か?」


「いちちちつ……大丈夫だけど凄く痛いし。ん、しょっと……ありがと」


「気が変わったら是非Aクラスに来てくれ。歓迎する」


「気が向いたらねー。でも……次は勝つし」


「フッ……期待しているよ。貴女の名前は?」


「あーし?ヴァイオレットだよ。でもみんなヴィオって呼んでるし」


「ヴィオか……良い身体だ」


「えっ?」


「あ、いや間違った良い名前だ。では次の試合の妨げとなるし我々も舞台を降りよう」


「うん、そだね」


ヴィオの顔は負けたけど和かだ。全力を出した上で相手が正々堂々と自分を侮らなかったからだ。

負けは負け、正直涙が出そうな程悔しいがそんなことをしたら相手に失礼だ。

だから、次に活かせばいい。そう思いながら舞台を降りる彼女に浴びせられる言葉は――



「さすがAクラス! あんな卑怯なEクラスを堂々とやっつけてくれて最高だぜ!」


「やっぱり雑魚だなEクラスは。Cクラスが負けたのも何か仕組まれてたんだよ」



悪意そのものだった。


堪えた涙がこぼれそうだ。

言われなくても自分の表情は失望を隠せないだろう。

普段ならこんな言葉をかけられても問題はなかった。だが、正々堂々力の限り闘った自分に何故こんな悪意をぶつけられなければならないのだろうか。


「おい、落ち着けよシュウ!」


「うるせぇ! ヴィオがこんな馬鹿にされて黙ってられるかよ。言った奴ら全員ブッ殺してやらぁ!」


怒りで観客席に飛び出していこうとするシュウを羽交い締めにして必死に止める雷音。

しかしそう長く押さえつけることも出来ない。

雷音を振り切り、飛び出そうとしたその時舞台の上から怒号が響く。


「黙れ貴様等!!」


声の主は先程までヴィオと試合をしていたノアだった。その表情は試合中とはまるで別人のように熾烈であった。



「有耶無耶が五月蠅い! 私と闘ったヴィオを馬鹿にするなら今すぐ私が相手になろう! さぁ降りてこい!」


ノアが野次を飛ばした者達の方を向くと野次を飛ばした者達は皆俯いてしまった。


「…………」


ノアと闘えるような実力者はE既にクラスの実力がわかっている為、野次を飛ばす様な真似はしない。

黙ってしまった連中はいわばCクラスの様な者達ばかりだったのだ。


「くだらん奴らだ。黙って試合を見ていろ未熟者供が」


ノアは神装を解き舞台を降りていく。

残されたのは沈黙だけだった。




「ごめんね、負けちゃった……」


舞台から降りてきたヴィオは流石に負けた手前クラスの仲間たちの前ではしおらしくなってしまった。


「仕方ないよ。相手は間違いなく強かった」


「うん……でもノアちゃん良い人そうでよかった。リンリン、相手は強いからね、あーしの分まで頑張るし」


「うむ、ヴィオ殿の気迫に当てられたようで某も昂っているでござる。勝てるよう最善を尽くそうぞ。では……行って参る」

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