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休憩中に

「皆さん初勝利おめでとう。言った通りだったでしょう、Cクラスは問題無いって。ただし次のAクラスからが本番よ。全力で頑張りなさい」


「「「「「はい!」」」」」



Cクラスとの試合が終わり雷音達Eクラスは次の試合が始まるまで休憩中だ。

次の相手はAクラス。EクラスとCクラスの試合前に行われたAクラスとBクラスの試合はAクラスが四勝一敗で勝利した。

その中でも注目されたのは『三獣死』の異名を持つ姉弟であり、相手を明らかに圧倒していた。



Bクラスは弱くはなく、正直Cクラスと比べるのが申し訳ないと思う程に力の差があった。

ただしBクラスは名有り(ネームド)の神装持ちが一人だけであり、一勝をもぎ取ったのはその者だけであった。



「ねーリンリン、次は勝てるかなー?」


「某も勝てるかわからんでござる。試合を見た時は流石はAクラスと思ったでござるよ」


中堅・副将・大将は三姉弟が担当していたが、先鋒と次鋒も充分強かった。正直神装を纏わなくては厳しいとリンは感じていた。



「だけど勝ちてぇな。勝っていけば学園の奴らに俺達の力を見せられるからな」


「そうだね。僕も正直言って散々嫌な目にあったし勝てるものなら勝ちたいね」


シュウもネイルも嫌がらせは常日頃受けていた。当然見返してやりたい気持ちはあるだろう。


「ごめんね、あーしに守護が顕現していれば……まだ余裕があったかもしれない」


「それは某もでござるよヴィオ殿」


「二人でそんな気負うことないさ。みんなで頑張ってきたんだ、やれるだけのことをやればいいさ」


「ありがと雷音っち。よしヴィオちゃん頑張る!」

「ああ、やれる事をやるだけでござるな」


やはりこの場にきてもヴィオとリンは神装を纏えない負い目があった。だからこそ仲間にかけられる言葉で心が落ち着いたのであった。



「俺達は連戦だからインターバル空けるのに少し休憩するみたいだな。ちょっと外で空気吸ってくるよ」


このままだとEクラスが連戦体力的に不利になるという事で長めの休憩時間が設けられた。

当然Eクラスが気に入らない教師陣は反対したが学園長の鶴の一声で休憩になった。


Eクラスの生徒達は実際の所疲れてはいなかったが強者と戦うという緊張感をほぐすにはちょうど良かった。

そんな中、会場の外に出て深呼吸している雷音の後ろからいつも聞く高めの声がかけられた。



「調子はどう?あ、一回戦突破おめでとう」


「ああ、ありがとうルナ」


雷音に声をかけたのか銀色の髪をいつも通りにサイドアップテールにしたルナだった。雷音達の勝利が嬉しかったのかどことなく喜色を浮かべていた。


「それにしてもEクラスのみんな強いわね。最近まで神力(ルミナス)が使えなかったのが嘘みたい」


「みんな努力家だからな。それに個人個人で元々の身体能力が強いのもあるだろう」


「てゆうかネイルなんて手と目が生えたしね。境界であの姿を見てびっくりしたけど闘っている姿を見ると余計驚くわね」


「そうだよなぁ。俺だってあれに……っ!?」


「ん?どうしたの?ってアンタ!」


雷音の顔がこわばる。

ルナの背後からは雷音の見知った顔の男が近づいてくる。しかし視界には入れたくない者だ。



「おいおい、同じクラスだってのに冷てぇなぁ姫さんよぉ。もしかして落ちこぼれ共にスパイ行為でもしてんのかぁ?」


「はっ!? アタシがそんなことするわけないじゃない。心臓射抜くわよ!」


現れたのは戦神(アレス)守護(ガディ)を持つ金髪の男、ウォードだった。

相変わらず見下すような目で雷音を見ている。

そしてその背後にはSクラスのメンバーが揃っていた。


一人は背の高い端正な顔をした男。

一人は背の低い、ピンク色の髪をした見た目幼ない少女。

一人は体つきの良い筋肉質の黒い肌の坊主の男。



「ウォード君、ルナ君、試合前に仲間割れはやめたまえ」


「そーだよそーだよ、ウォードは死んでいいけどね」


「あー……どうでもいいわ」


背の高い男は二人を諫めようとしている。落ち着いた感じからリーダーのような雰囲気がある。

反対に幼女の様な子は落ち着いた雰囲気とはまるでかけ離れている。しかしウォードの事は明らかに嫌っていた。

そしてもう一人は非常に怠そうにしており何を考えているのかがわからないタイプである。



「うっさいわね!喧嘩売ってきたのはウォードよ!」


「そーなの?じゃーウォード死んじゃうしかないね」


「テメェが死ねよドクソチビ!」


「気にしてること言ったね!」


「あー……煩い。さっさと……帰ろうぜ」


いきなり雷音の前で始まるSクラスの面子による喧騒。周りの生徒達からも注目を受けてしまう。


(ルナには悪いけど……ここは退散させてもらうとしよう)


こっそりとその場を抜けようとする雷音であったが、背後から力強く肩を掴まれてしまう。


「らーいーとー……か弱い乙女を置いてどこに行こうっていうのかしらぁ?」


「か弱い……?あ、いやなんでも……へぐっ!?」


久しぶりにお怒りモードのルナのボディブローが雷音の腹部を貫いた。間違いなく雷音がもうすぐ試合だというのを忘れているのだろう。


「ルナ君、いい加減にしたまえ。彼はこれから試合なのに怪我をさせたらどうする。

そして戦うかもしれない相手と仲良く話していたら我々から疑われても仕方ないだろう」


「アタシは勝負には厳しいからそんなことはしないわよ! でも……確かにそういう風に見られることは考えてなかったわ。思慮が浅かったわ、ごめんなさい」


「素直でよろしい。好きな男性の前ではルナ君も正直だな」


「なっ、何言ってんのよキール!? ら、雷音も早く戻りなさいよ!」


ルナを諌めるキールと呼ばれた男はSクラスにおいてリーダー格の男であった。

しかし雷音はその顔を見てどこか違和感を感じていた。


「じゃあ戻るとするよ。またな!」


「待ちたまえ蒼天雷音君」



キールは再度背を向けた雷音に声をかける。



「俺に何か用か?」


「ああ、悪いのだが弟に早く家に戻るように伝えてもらえるかな?」


「弟……?誰の事だ?」


「私の名はキール。君のクラスメイトである弟とは母親が違くてね。同じ歳に生まれたのだが私の方が早く生まれたために一応兄という立場にはなっている」


「家に戻れって……もしかしてネイルのことか?アイツは元に戻る気はないって言ってたぜ。諦めてくれないか?」


「そうか……ならばこう伝えてくれ、もし私と試合になったら容赦はしないと」


「アンタがどれだけ強いか分からないけど……ネイルは強いぜ?あと……兄弟なのに喧嘩はよくないと思う。特に兄なら」


これは妹が大切な存在である雷音の本音だ。彼は兄弟がいがみ合うことを是とはしない。



「生憎だが私は彼と話したこともないのだよ。

彼は生まれてすぐ本邸から追いやられたと聞いた。他の兄弟や私の母や他の側室達は彼を虐げていたとは聞いたが……」


「ならどうしてネイルを庇ってやらなかったんだ?」


「彼の存在自体私には知らされていなかったものでね。それを知ったのは物心ついた時さ。

それに彼は王家に引き取られて生活はマシになった筈だ……それこそ没落した君よりはね」


「……なら何で今更戻そうとする?」


「使える人材だと思ったからだよ。名有り(ネームド)の神装を手に入れ、学力もあることは調べがついている。それにあの様子じゃもう欠陥品と呼ばれることももうないだろう?容姿端麗、実力もある……素晴らしいことだ。

正直我が家の兄達は愚かな者が多くてね。父も含めて私腹を肥やす様な輩ばかり。

ここだけの話だが私はリード家を乗っ取るつもりだ。その為には優秀な補佐がいる」



「気に入らないな。だったらどうしてEクラスにいたのに一言も声をかけてやらなかった?兄だと言ってやらなかった?」


「そんな道理はないだろう。今は利用価値がある、だから声をかけたまでだ」


「そっか。結局アンタはネイルを物扱いしてるだけか。……さっきも言ったけどネイルは強いぜ?寝首かかれないようにな」


「フッ、色々と楽しみにしているよ。その前にまずは目の前の試合に勝ちたまえよ」


「言われなくても、だ!」




雷音が会場に戻ると既に開始五分前になっていた。

当然の如く皆に遅いだの緊張感が無さ過ぎるだの罵詈雑言の嵐を受けてしまう。



(俺のせいじゃないんだけどなぁ。悪いのはS組の奴等なんだ……そう考えてると意地でもS組に勝ちたくなってきてしまう俺は器が小さいのかもしれないな。あとさっきの件はこの試合が終わってからネイルに伝えることにしよう。相手は強敵、本番直前に言って動揺させる訳にはいかないからな)


そんなことを考えているとティナ立ち上がり口を開いた。

「そろそろね……次の相手はAクラスよ。さっきの試合とは打って変わって強者が相手になるわ。

正直ヴィオさんとミンさんには荷が重いかもしれない……だけど諦めないで最後まで闘いましょう。

それと男子三人は恐らくあの姉弟と当たるわ。先程の闘いで見たけど三人の実力は相当なものよ。心して闘いなさい。さあ行きなさい」




ティナに檄を入れられると同時に開始時間となり、雷音達は舞台に向かっていった。

対するはAクラス。神力(ルミナス)を使っていない状態でも強者の風格を感じる。


「それではAクラス対Eクラスの試合を始めます」

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