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デート

「お待たせ! ゴメン待たせちゃった?」


「いや、俺もさっき着いたばかりだよ。じゃあどこに行く?」



雷音達がティナに教わり始めて早一ヶ月、神装を纏う雷音、シュウ、ネイルも段々と神装の扱い方に慣れてきた。

ヴィオとリンは未だに守護(ガディ)が顕現しないが神力(ルミナス)の使い方に重点を置いて訓練をしている。

元々身体能力に優れているヴィオ、剣技に関しては相当な腕前のリンは生身でも神力(ルミナス)のコントロールにより、それ相応の強さがある。


それでも神装を纏った者と肩を並べるのは厳しいが、ティナ曰く、「Cクラス程度なら何とかなるぐらい強くする」とのこと。


そんな日々にボロボロになりつつも充実さを感じられるEクラスの生徒達。

対抗戦も近づいてきて、ここ最近は休みの日も訓練をしている。


しかし休まない事に関してティナに「神力(ルミナス)を使う上で、心の余裕……つまり息抜きも必要なことよ」と言われてしまう。

なんせ彼らは朝から学園が閉まるまで授業中以外もひたすら訓練だ。流石にティナもこの状況には目も当てられなかったのか、休日に学園での訓練を禁じてしまった。


急遽次の日は完全に休みになり、どこでそれを嗅ぎつけたのか、放課後に帰ろうとしていた雷音の前にルナが現れた。



「最近雷音は根を詰めすぎよ。明日は気分転換に一日アタシに付き合いなさい。必ずよ」

 


特に雷音もやることは無いし、これを断る理由もない。気分転換には良いか、と思い一日ルナと過ごすことにした。



雷音が待ち合わせの約束の場所である王都の噴水の前で待っていると予定時刻より十分程経ってからルナは現れた。

彼女の服装はシンプルな白いワンピースに小物が入っているバッグだけだった。いつもツーサイドアップにしている銀色の長い髪は今日は降ろして帽子をかぶり、伊達眼鏡もかけている。

贔屓目に見ても美少女であり、いかにも上流階級のお嬢様といった感じだ。


事実ルナはこの国の第王女様だが本人は王室の生活が好きでは無いらしく、しょっちゅう雷音の部屋に来ているし街に行くのも珍しいことではない。

親である国王もなぜかそこに関しては緩い。

ルナ自体も街の人達には好かれており、雷音といることも暗黙の了解とされている。


雷音自身も果たしてそれでいいのか、と思うことは多々あるのだがルナ自身が大丈夫だと言うんのだからそれに従うしかない。


とはいえやはり周りの輝族連中からは色々言われているらしい。

没落した一族なぞ汚らわしい、今や平民同然の者と王族が、など。

彼自身思う所はあるが……気にしないようにするのが精神的にはベストだ。


実際彼は輝族連中の子弟達からはよく嫌がらせを受けたし、Eクラスになってからはそれはさらに増えた。

だが耐えに耐えて、今では名有り(ネームド)の神装を纏えることも出来て絡まれることも無くなってきた。

実際には彼に絡もうとする者もいたことはいたのだが裏で圧力をかけるどこぞの王子の影もあったが、それを知るのは随分後になってからだった。



「ねぇ、なんか難しい顔しているけどなんか考え事?」


「ん?いや、今日はお昼何を食べようかなって」



上目遣いで聞いてくるルナを誤魔化し、お昼の事を伝えたら色々と食いついてくる。勿論ご飯についてだが。


大概彼らが二人で外食をするときは定額制のビュッフェ形式の食べ放題のお店にいく。そうでないと雷音の財布の中身が致命傷を負う可能性がある為だ。

こればかりは雷音も頭を悩ませている。

そしてルナが体型を維持できることは昔からの謎である。


世間話をしながら二人で歩いていると香ばしい匂いが漂ってくる。匂いの元を辿っていくと串焼きが焼かれていた。

誘蛾灯に誘われた羽虫の様にルナの足は自然とそちらに釣られていった。


「お、ルナちゃんじゃないか。今日は何本買うんだい?」


「んー、まだ午前中で朝ご飯食べたばかりだから五本でいいよ」


「あいよ、雷音はどうすんだ?」


「あぁ……俺はいいや。まだ全然腹減ってないし」


「じゃあ今度来たときは寄ってってくれよな。よし、一本おまけして六本だ。毎度あり!!」


「ありがとうおじさん!またね!」


串焼き屋の店主は店から離れていく雷音達にブンブンと手を振っていた。

そしてルナは美味そうに串焼きを頬張っていくが、この小さな身体に大量の食料が消費されるのだから不思議なものである。おまけに串六本など彼女にとっては前菜にもならない量なのである。

串焼きを食べ終わると串焼き屋の近くの服屋に彼女は近づいていく。


「雷音ここ寄ろう?」


「いいけど女物の服屋じゃん?俺外にいていいか?」


「駄目よ、雷音にも見てもらうんだから」


「はいはい」



これはいつも通りのやりとりである。といっても雷音は女物の服の流行りなどはよく分からない為にいつも無難な答えを選ぶだけだが、それがバレてルナに怒られてしまうことも多々ある。

とはいえ、ルナとそんなやりとりをするのは雷音だけなので周りから見ると明らかに恋人同士にしか見えない。


二人が服屋をニ、三軒回っているうちに太陽はどんどん昇り、時間は既にお昼前だ。



「ねぇ雷音何食べよっか?」


「いつものところでいいんじゃないか?あそこなら何でもあるし」


「そうね、それに最近行ってなかったし。じゃあ行きましょ」



勿論行くのは彼らが御用達の食べ放題の店だ。

このお店は様々なジャンルの料理があり、誰が行っても楽しめると評判のお店だ。

ただ彼らが、もといルナが店に入ると店員の雰囲気が一気に変わる。


「来たわよ……」

「急げ! 沢山作れ!」

「暴食の王女が降臨したか……」


なんとも酷い二つ名である。

だが彼女の食事量を考えればそれも仕方のないことだろう。


店に入って受付を済ますと説明を受け、九十分間食べ放題になる。搾りたての果実水や小さめのデザートも豊富にあるので若い女性にも人気がある。


そんな若い女性の一人であるルナの皿に載っているのは肉と肉と肉と肉、そして肉だ。

そう、ルナは完全なる肉食動物なのである。

雷音が作った料理の野菜なら食べてるのだが外食や学食の野菜は基本的に食べない。



「ルナ、野菜は?」

「いらない」

「ちゃんと食べないと身体に悪いぞ?」

「大丈夫大丈夫、もう成長期終わったし」



雷音の説得むなしく、聞く耳を全く持ち得ていない。食事はバランス良く食べるものだが彼女の辞書にはそんな言葉は無い。


食べては料理(にく)を取り、食べては料理(にく)を取りの繰り返しは圧巻である。

そして遂には店長と思われる店員が涙目になる。


「ふぅ美味しかった!やっぱり好きな物だけ食べれるっていいわね」

「栄養偏って病気になっても知らないぞ」

「果物食べればいいの!さぁて次はデザートいくわよ!」



肉が並べてある大皿は既に砂漠と化した。

そして果物の皿もその末路は既に決まっている。




「ありがとうございましたー」


「ごっちそうさまでした!」


白目になった店員にはご愁傷様と言う他無い。

とはいえこの光景も最早見慣れたものである。


「お腹いっぱいになったわ。少し食べ過ぎたかしら?」


「……そうだな。あそこの広場のベンチで少し休もうか」……



少しじゃねぇだろ、と心の中で叫ぶ雷音だがそんなことを言えば鉄拳……もとい神速の矢が飛んできてしまうことだろう。



「いい天気ね。この広場にいる人達はみんな笑顔。ずっとこれが続けばいいね」


「ああ……その為にも俺達は強くならなきゃならないとな」


「そういえばアタシも境界を超えたのは初めてだったけど向こう側の景色ってこっちと変わらないのよね。なんかこう凄く怖い所だと思ってた。実際はただの森だったし少し拍子抜けしたわよね」


「そういえばそうだったよな。奥にはここみたいに街があるのかな?……同じ様に奴等も住んでたりするのかな」


「どうなのかしら?一人しか見てないけど、姿はアタシ達人間に羽根を生やしただけの様な奴だったし知能もちゃんとあったわね。もしかしたらアタシ達と変わらないのかも。話し合いでもして仲良く出来れば一番良いのにね」


「話し合いか……戦わずに済めばみんな普通に暮らしていけるのにな」


「でも昔からそんな案は出てるし実行されているみたいだけど通用しなかったんだって。みんな平和に暮らせば良いのにね」


「そうだよな。だけど話し合いが出来なければ戦うしか無いんだよな」


「うん……アタシはアタシ達の世界が大切なの。奴等が仕掛けてくるなら……倒すだけよ」


「そうだな。ただ……奴等は強かった。ルナが見た雉子って奴は勿論、その上の桃太郎って奴もだ。正直言って今のままじゃ倒せる気がしない」


「馬鹿ね、だったらもっともっと強くなればいいじゃない。ま、アタシがもっと強くなっちゃったら雷音の出番は無いかもね」


「ふふ、頼りにしてるよ。どれ、そろそろ移動するか。次はどこに行く?」


「うーん、午前中買い物したから午後はゆっくり散歩するのもいいかな?最近二人で買い物行けなかったしね」


そう言うとルナは雷音の腕を取りぎゅっと腕を組んできた。

ルナの体温が伝わってきて雷音の鼓動も少しずつ早くなっていく。

平静を装うのにも顔が赤くなっていないか気になる所だ。


「いこ?」

「ああ」


周りの人の目線が生暖かく感じるがこれにも慣れたものだ。年老いてもずっとこんな風にいられれば、なんて考えるのは少々年寄りくさいのかもしれない、と歩きながら考えていた雷音であった。

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