剣神vs雉子
眩い光にネイルは包まれていく。
それは紛れもなく神力が放つ光だ。
光の中から現れし翡翠の輝きを放つ神装に包まれたネイルの無い筈の右腕には、星の煌めきの如き銀色の腕が装着され、更には無い筈の右目には紅に輝く目が存在していたのだ
「闇を切り裂く光はこの手の中に……剣神のネイル……お前を倒す!」
神装を纏ったネイルの正面で佇む雉子は思わず目を細めてしまう。予想外であったからだ、目の前の少年から発せられるその力に。
「ちっ……目覚めてしまいましたか。全く面倒な……。まぁ力に慣れていない者であれば問題ないでしょう。そこの赤い髪の少年のようにね!」
ネイルに向けて羽根が襲いかかっていく。今度は最初から大量の羽根が一斉に彼に向かっていく。念には念を入れたのだろう、先程迄とは力の圧が違う。
ネイルは神装を纏ったばかりでコントロールが上手く出来ないはず、そう雉子は読んでいたからだ。
間違いなく殺った、そう確信した筈だった。
「なっ!?私の羽根が?」
次の瞬間、雉子が放った羽根は全て斬り裂かれていた。更にこれでもかと翼から放たれし羽根はネイルに猛然と襲いかかっていくのだが、彼はそれを両手に持つ神器で難なく捌いていく。
「うん……よく馴染んでるね。この右の銀の腕。それにこの右目も色々とよく見える。素晴らしいね、五体満足っていうのは」
双剣で捌きながらネイルは前進しつつ、雉子に近づいていく。
「凄いね、神装って。僕の思った動きができるし……腕と目まで補強してくれる。しかも……」
雉子に近づいたネイルの右目が紅く不気味な光を放つ。それはまるで怪物の様に。
「ぐっ……調子に乗らないでくださいね……え?か、身体が動かな……い?」
「見たよね、この『パロールの魔眼』を」
ネイルの紅い右目が光り輝くと、雉子の身体は金縛りにあったように動かなくなった。
その隙に雉子の目の前に移動し、リンのお返しと言わんばかりに膝蹴りで鳩尾に一撃をくらわす。そして相手の体制が崩れた所にアッシュの持つ神器――二振りの剣が煌めく。
その輝きは天に昇る星々の様に煌めいている。
「この魔眼はお前の自由を奪う。動けないところ悪いけど殺らせてもうよ! さぁ、至光の聖剣、煌堕の魔剣、目の前の敵を切り裂け!!」
二振りの剣から放たれる目にも止まらぬ斬撃の連打。思うように避けきれぬ雉子から噴き出す血は千の花が咲乱れるが如く。
まともに受けた雉子はそのまま背中から倒れたのだった
「がっ!?がぶあぁぁあ!?」
「はぁ……はぁ……倒した……かな?それにしても……疲れた……でも最後に、もう一仕事しなくちゃ。聖なる水よ……泉から湧き出て癒せ……」
ネイルがそう唱えると目の前に小さな泉が現れ、そこから仲間達に向かって泉の水が浮き出す。
その水がネイル以外の三人の口に入ると紫がかった顔は血色が良くなっていった。
「よし……これで毒は消えたし怪我も少し癒せた……かな。僕の神装は……多機能だね……便利だけど……凄く……疲れ……」
そしてネイルはそのまま前のめりに倒れ気を失ってしまい、身に纏っていた神装も徐々に光の粒子になっていく。
気を失ってしまうのは初めて神装を纏ったその後遺症であろう。
しかも初めて纏ったにも関わらずあれだけの力……二振りの神器、右手を動かした銀色の腕、右目の魔眼、最初からこれだけ出来たのもアッシュの神力コントロールの巧さと潜在能力によるものである
「う……いちち……あれ、あーしまだ生きてるの……あれ鳥野郎が倒れて……えっ!?ネイルが神装纏ってるし! てか皆起きて!」
最初に意識を取り戻したのはヴィオだった。いまいち状況が把握できない彼女はまずシュウとリンを起こす事にした。
「シュウ、シュウ、馬鹿シュウ! さっさと起きるし!」
「うっ……いきなり揺れ動かすのはやめやがれ。てか今どうなってやがんだ?」
「そんなんわかんないし! あっ、リンリンも起きたし!」
「ぐっ……某は……。雉子はどこへ……?」
「あの鳥野郎ならあっちで倒れてるし。ネールは神装纏ったみたいだから多分ネールが倒してくれたみたい」
「ネイル殿が……ふっ、また先を越されてしまったようだな。痛っ……」
「じっとしてるし! この中で一番リンリンの傷が酷そうだし!」
「ああ、すまない。正直身体を動かすのも厳しいようだ」
「あーしはなんとか動けそうだからリンリンは背負ってあげるし。馬鹿シュウはネールをよろしくだし」
「俺もキツイんだけどなぁ……つーかよ、俺達は今からどうする?先生や雷音んとこに行くか、それとも戻るか。あいつらんとこに行きてぇが……正直足手纏いにしかならねぇよな……だけどよぉ」
「だけど心配だし……先生達に何かあったら……」
「だが間違いなくシュウ殿の言う通り足手纏いになるであろう。だからここからは自己責任である……某は」
「行くんだろ(でしょ)?」
「な、何故わかった?」
「普段はわかりづれぇ癖にこういう時だけわかりやすいんだよ。てか俺も同じだよ」
「あーしも! 行こうよみんなで!」
「ふっ……では行こう……っ!?」
「その必要はありませんよ」
突如聞こえた声と共に三人に目掛けて無数の羽根が飛んできて、三人は避けることができなかった。
「ぐあっ!」
羽根は気を失っているネイルも含めた四人の足に突き刺さる。
文字通り足止めをされたのだ。
「逃しは……しませんよ。いたたた……少し遊びが過ぎましたね。鎧を纏ったばかりのガキに私がここまでやられるんですから……私達の未来の為にも今すぐ死んで下さい。
先に言っておきますけど今度はより殺傷力のある羽根を飛ばします。先程の羽根よりは速さは無いですが今の貴方達ではもう避けることは出来ないでしょうねぇ……フフフ」
雉子の言う事はハッタリでも何でもなかった。
本当に殺せるから雉子はこんな事が言えるのだろう。
そして残念ながら彼等にそれを避ける力はもう無かった。
「詰み……かよ」
「くっ……」
「くらいなさい愚かで小さい虫達よ『刃羽』」
生命を刈り取る羽根が四人に向けて放たれた。先程までの羽根よりも巨大で、それでいて鋭い刃の羽根が。
四人にはもう避ける力は無かった。
死が迫ろうと、もう選択肢はないのだ。
だが羽根が四人の眼前に迫ったその時、閃光が降り注ぐ。
「『月光舞踏!』」
銀色に輝く矢が何本も流星のように上空から降り注ぎ雉子から放たれた羽根を見事に撃ち落としたのだ。さらにもう一つ、黄金の槍が地を這うように飛んできた。
「貫け『全てを貫く飛槍』よ」
槍は雉子に真っ直ぐに向かっていき、より加速度を増した。
「なぁっ!?」
雉子は力を集中して槍を必死に抑え込もうとするが、ネイルとの戦いで消耗した身体では抗うことさえ出来ずそのまま吹き飛ばされたのだった。
「間に合ったようだな。よく耐えた。あとは我に任せよ」
絶対絶命の危機に現れたのは学園最強、聖徒会・会長のディーンと彼らと同学年のSクラスのルナだった。
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