目覚めの黒炎
「んで、その方法ってなんなんだよネイル?」
「俺も気になる。どうすればいいんだ?」
只の剣では傷一つ付かなかった御伽に対してネイルは策があるという。
「そうだね……とりあえず口で伝える前に実践してみるよ。丁度来たみたいだしね」
ネイルが横目で見た方向を見ると先程と同じ赤い鬼がまた現れた。しかし今度は一体だけである。
近づいてくる鬼に対してネイルは片手で持つ剣を構える。
「リン、奴が攻撃してきたら攻撃を抑える事だけ出来るかな?」
「動きは見極められるが……某の力では守るだけで精一杯でござるよ?」
「うん、それで充分。もしダメだったらみんなフォローたのむよ。相手も足に神力を集中し始めた……来る!」
ネイルの言う通り、鬼は一歩踏み出すと生徒達に向かってくる。狙いは先頭に立つネイルのようで、一気に間合いを詰める。
「今度は完全に見えたでござる!」
だがそれよりも速くリンがネイルの前に出ると鬼が振るってきた金棒を受け止める。ただ、その力強い一撃を受け止めきれず後ろに下がらざるを得なかった。
「ぐっ……やはり某では……ネイル殿!」
「まかせて!」
リンが攻撃を受けた瞬間、ネイルも足に神力を漲らせ一気に鬼の背後に移動した。
「はあぁぁああ!」
ネイルの剣は鬼の首に目掛けて繰り出され、その剣は鬼の首に食い込んだ。
「やったか?」
頸動脈が切れたのか鬼の首からは大量の血が噴き出す。しかし鬼の動きは止まらずその手に持つ金棒がネイルを襲う。
「うわ……」
「ネイル!」
すかさず雷音が雷霆を変形させた籠手で鬼を殴り飛ばすと、鬼は吹き飛び地に伏せて二度と目を覚ますことは無かった。
「ありがとう雷音、ナイスフォロー」
「浅かったのが分かったからな。ところで……それ普通の剣なんだよな? どうやって相手に傷つけたんだ?」
ネイルよりも膂力があり、両手持ちの大剣で傷一つ付けられなかったシュウよりも、神力による強化を考慮しても力の劣るネイルが鬼に傷を付けられた理由がわからない。
「それはね、武器に神力を流したんだよ」
「武器、に?」
「そうだよ。神力を身体に流せるのなら武器に流せる道理だってあると思って。それに守護を持つけど神器が無い人は自らの神力で武器を創り上げるだろう?雷音以外は皆守護はないけど神力はあるからさ」
「成る程な。だからオレの剣で通らなかったのがネイルの剣で斬れたわけだな。んでコツとかあるのか?」
「んー、持っている武器を自分の身体の一部だと思うといいかもね」
「身体の一部か、どれどれ……」
手持ちの大剣を構えて力を込めるが特に変化はない。目を閉じて集中するがやはり結果は変わらない。
「っがぁ! 駄目だ、変わらねぇ。くそっ、先生も授業で教えてくれりゃあいいのによぉ」
「馬鹿馬鹿馬鹿シュウ?身体を強化するのだって苦労してるのにその先の事をポンポンと教えてくれる訳ないし!」
「ぐぬぬぬ……分かっちゃいるがヴィオに言われるとなんか腹立つぜ」
「はぁ?馬鹿シュウが馬鹿なのが悪いんだしぃー」
「んだとコラァ!?」
「はいはい、二人ともそこまで。まだまだ来るみたいだよ奴等は。リンも……って分かってるみたいだね」
ネイルがリンを見ると既に剣を構えており、まだ見えない敵を見据えていた。
「うむ、五感を研ぎ澄ます様に神力を身体に行き渡らせるとよくわかるでござる……三時の方向に二体来るぞ!」
リンが向く方から再び鬼が現れ、生徒達は今度は落ち着いて対処していった。そして何度も何度も同じことが繰り返される事になる。
三時間が経過――
「先輩、あの子達凄いのです。普通は守護があって神装を持つ子達がここで訓練をするのが当たり前だっていうのに……もう順応しているのです。もう全員武器に神力流せるなんて」
「まぁな。アイツらは肉体的にかなり鍛えてやったし、神力に目覚めてからも猛特訓してやった。それに経験上生死をかけた戦いの時が一番成長できる」
「まぁそれはわかるのですが、そんなの私達だって学園を卒業してからなのです。それにそれだけじゃ納得はいかないのですよ?例えばさっきの昔の先輩みたいなシュウ君。彼が最初飛び出していった時の速さは名無しの守護持ちの学生が神装を纏った時よりも速かったですよね?」
「……良く見てるな」
「それとあのイケメン君は神力の流れを見れてますよね?守護が無いのにそんな事を出来るのは異常です。女の子二人もコントロールが上手い。まだ神力に目覚めてから一ヵ月も経ってないというのに。そしてあの雷音君、どうして神装を纏ったばかりで神器を扱えたんです? 私だって神器は使える様になるまでかなりの時間を要したのです。もうおかしいとしか言えないのです」
「……アイツらは学園長様直々にEクラスに選んだからな。先見の明があるってのは知ってるが、よくもまぁタイミングよく集まったもんだ」
「あの人が選んだなら納得です。それに彼らの学園内の状況も聞いたのですが……早く守護が顕現すると良いのです」
「そうだなぁ……その為にもこの死ぬかギリギリの訓練を考えたんだがな。意外にも俺らが手ぇ出さなくても何とかなってるしな」
ウルスとチェルシーは常に身体に神力を流している。もしも生徒達に致命的な攻撃が当たりそうになってもウルスは土の壁、チェルシーは水の壁で守る事が可能だった。しかし今のところその様な事態には陥っていない。
「取り敢えず……様子見なのです」
「だな。ん?ちぃとばかし強いのが来てるな。ここからが正念場ってとこだな」
すでに数えられない程の赤い鬼達を倒している雷音達。体力的にも神力的にも限界に近い。
「そろそろキツくなってきたな。みんな大丈夫か?」
雷音も神力の消費量を減らし、尚且つ皆と同じ様にコントロールを身につける為に神装を解除して戦っていた。
「はぁ……はぁ……オレはまだいけるぜ」
「無理すんなだし馬鹿シュウ。みんな肩で息してんだからもう限界でしょ。引き際は大事だし」
「確かにヴィオ殿の言う通りであるな。そろそろ身体を休ませなければ……むっ!?」
その時リンの背筋がゾッとする様な感覚に襲われた。今までの鬼よりも強いものを感じたのだ。
そしてその目には赤では無く青い皮膚、赤鬼よりも体躯の良い鬼が現れた。
「気をつけて……さっきの鬼達より内包してる神力の量が段違いだよ」
今までの鬼達とは違う気配に焦りを隠しきれない、その時目の前の青鬼は声を発した。
「ヘイシタチ……コロシタノ……オマエタチカ……ユルサナイ……コロス!」
あっという間にこちらとの間を詰める青鬼。赤鬼に慣れて来たはずなのに、この敵の動きに身体が追いつかない。
「オォォラアァ!」
しかし一番神力のコントロールが苦手だった筈のシュウが青鬼の一撃を受け止めたのであった。
「勘が当たったぜ。なんか俺を攻撃して来そうな気がしたんだよなぁ。舐めんな!」
シュウは大剣で金棒を弾くと力任せに切りかかっていく。何度も何度も金棒を叩く金属音が辺りに
響く。
「オラオラァ! オラオラオラオラァ!」
ダメージは与えられていないが青鬼は防戦一方であり、シュウもその手を止める事はない。
「なんか馬鹿シュウの動きが……」
「うん、シュウは神力のコントロールが抜群に伸びて来ている。僕の目でもはっきりとわかる。だけど相手も……」
連続で斬りかかるシュウであったが、流石に体力が続かず、一瞬大剣を振りかぶるのが遅くなってしまう。それを狙ったのか青鬼は肩を前に突き出してシュウを弾き飛ばした。
「ぐっ!?」
後方へ飛ばされたシュウに向かって青鬼は勢いよく金棒を投げつけるが、体勢を崩しながらも何とかそれを大剣で弾いたが、その勢いは殺せずに倒れてしまう。
しかも青鬼は動きを止めずにシュウの前まで駆け足で移動、腕を振りかぶり力任せに殴りかかってくる。
「んなぁぁめんなぁぁぁ!」
シュウはその拳にカウンターを被せる様に頭突きを合わせる。
鈍い音がすると血が勢いよく吹き出していった。
「グガアアァァアアア?」
「んがぁ! どうだコラァ!」
血が吹き出したのは青鬼の拳からだった。勿論シュウの額も割れているがどちらがダメージが大きいかは明らかだ。
「うわぁ……シュウは凄いね。あの一瞬頭に神力を全振りしたよ」
「絶対痛いよなあれ」
「馬鹿力ならぬ馬鹿頭とでも呼べばよいのでござろうか」
「馬鹿石頭ってやつだし。でも馬鹿シュウ大丈夫かな?」
流石に頭に衝撃喰らった為にシュウは立っているが脳震盪を起こしている。今攻撃を喰らえば拙いのだが、相手はダメージを喰らった為にシュウを警戒していた。その為なのか青鬼が次に取った行動はシュウを狙うものではなかった。
「オンナ……コロス!」
今度は狙いを変え近くにいるヴィオに向かっていった。ヴィオはその身体能力で攻撃を避けながら手持ちの槍で青鬼を突き刺していく。
「ふん、ヤバい奴かと思ったらそうでも無いし。トドメを喰らえだし!」
渾身の一撃を放つヴィオだったが槍は空を切ってしまう。気付けば鬼は背後にいた。
「カカッタナ……マズイッピキ……」
「やばっ……」
青鬼はわざとヴィオ相手に動きを抑えていた。先程のシュウの様に何が起こるか分からない為に相手を油断させていた。ヴィオも長時間の戦いで消耗していた為に相手の罠に気付いていなかった。
振り下ろされる破壊されていないもう片方の拳がヴィオの眼前に迫る。
「何してやがんだよコラァ!」
拳はヴィオの身体に触れないまま、青鬼の身体は横から来た衝撃に飛ばされた。
青鬼は近くの木にぶつかり、動きを止めた。見上げると先程の大剣を持った男が青鬼を睨みつけていた。
「いきなり女に手ぇ出してんじゃねぇぞこの破廉恥野郎が! 大体テメェの相手は俺だろうが!」
「グッ……コンナガキニ……シカタナイ……」
青鬼はどこから取り出したのか小さな笛を口に咥えるとそれを思い切り鳴らした。
「っ!?なんだ?」
空気を切り裂く様な高い音が鳴り響くと青鬼の周りには赤い鬼達が走り集まってきてしまう。
その数は十程であったが疲弊している生徒達が相手にするには厳しい数であった。
「増援が来たよ!」
「シュウ、下がれ! 流石にこの数はヤバい!」
一箇所に固まり構える雷音達。しかしシュウは下がらず逆に前に出た。
「……ったく……どいつもこいつもうざってぇんだよ! 全部ぶちのめしてやるよ!」
周りから見てもわかるぐらいシュウの身体には神力が高まっているのがわかる。なぜならそれはオーラとなって湧き出しているからだ。しかしその様子を見て雷音とヴィオは焦る。
「ねぇ雷音っち。あれヤバくない?」
「ああ、間違いない。アイツブチ切れてやがる」
二人は以前見たことがあった。シュウは怒りっぼく無謀な行動もするが、一番キレるのは知人が傷付けられる時だった。
D組の男達がその日はヴィオに絡んでいたのだ。
偶然通りかかった雷音とシュウの前でヴィオは男達から平手打ちを喰らってしまう。
その光景を見たシュウは真っ先に相手に飛びかかっていった。相手にいくら殴られようがシュウは止まらず相手に向かっていったのだ。
このままでは拙いと感じた二人はウルスを呼ぶがそれでも止まらず、ウルスが無理矢理シュウを気絶させその場は収まった。
「あの時と同じだ」
「馬鹿シュウ間違いなくキレてるし」
軽く口角を吊り上げるシュウ。
そして鬼達の前に立ち口を開く。
「テメェ、俺とのタイマンと思いきやいきなり大事な仲間に手を出そうとしやがって許さねぇぞ。生憎オレは今色々と溜まっているみたいでなぁ……なんでもできそうだわ。うるぁぁああ!!」
シュウの神力は更に高まっていく。周囲の草木がざわざわと揺れ動く。
まるで嵐の前触れの様に。
「ねぇ雷音、ヴィオ、僕の目にはシュウの身体に凄まじい量の神力が渦巻いている様に見えるよ」
「マジで?馬鹿シュウ大丈夫なの?」
「いや……あれは……大丈夫だ。なんとなく分かる……あれは俺と同じだ」
「同じ?ってもしかして……」
そして彼は叫んだ。
「行くぜぇぇぇえ! 神装光臨!!」
シュウの身体から発せられる輝きは最高潮に達した。紅蓮の光が彼を包み込んでいく。
例えるなら炎、そうまるで世界の全てを焼き尽くす終末の黒炎。
そう連想させる赤と黒が入り混じる重厚な神装を纏うシュウがそこに立っていた。
「全てを焼き尽くしてやるぜ! 黒炎の巨人のシュウ、ここに見参!」
シュウが纏う神装は熱を放ち、正面にいる鬼達はその熱量にじりじりと後ろへ下がっていた。
「おお……やったなシュウ!」
「ありがとよ雷音! それにしても凄ぇ力が湧き出てくる感じだぜ……これが神装ってやつなんだな。よっしゃあテメェら全員燃やし尽くしてやるぜ! 出て来やがれ滅炎の大剣」
シュウがそう叫ぶと彼の手には燃え盛る巨大な大剣・滅炎の大剣が握られていた。
滅炎の大剣から溢れ出さんばかりにその黒い炎は世界の全てを塗り潰さんとばかりに炎々と燃え盛る。
「さぁいくぜぇ……うっらぁ!」
正面にいる鬼達に向かい滅炎の大剣を力の限り振り回すと、前方に放たれた燃え盛る黒い炎は鬼達をあっという間に包み込む。
「グッ!? グゲ……ガガァァァ!?」
鬼達の悲鳴が響き渡る。
黒炎に飲み込まれた鬼達は数秒で燃え上がり、断末魔だけを残し、灰と化してこの世から姿を消しさった。
「まぁだ一匹残ってやがるな……そこぉ!」
灰となった鬼達の後方……逃げ出したモノがいた。それは言語を話していた青鬼だった。
逃げ出した青鬼へ向かってシュウは駆け出す。
「逃がさねぇよ! 死にやがれ!」
「ア、ヤメロ……」
背後から滅炎の大剣を一振りすると断罪された罪人の様に青鬼の首は地面に落ち、そのまま身体も灰になって崩れていった。
「終わったねぇ。馬鹿シュウが神装纏うなんて先越されちゃったし。はぁ、いいなぁー。おーい馬鹿シュウ、さっきは助けてくれてありがと……ん?」
ヴィオがシュウに礼を言おうと近づくとシュウは俯いて震えていた。
「やった……やったぜ……。やっと、やっと俺も手に入れられたんだ……やっと……やっと」
感極まり涙が自然と溢れていたのは当然であった。これまで彼は落ちこぼれとして酷い扱いを受けていた。実家では白い目で見られ、学校では虐げられ……そんな彼が望んだものがやっと手に入ったのだ。
「馬・鹿・シュ・ウ、なんなのかなそれは?」
「な……ヴィオなんでもねぇよ!」
「男泣きってやつ?可愛いねー」
「ブッ殺ぉぉおす!」
「きゃー! 怖いしー!」
揶揄うヴィオを追いかけまわすシュウ。それを見て他の者達は笑い、安堵した。
「いやぁー、いきなり成果が出たな。自分で計画しておいてなんだがこう上手くいくとは思わなかったぜ」
「シュウ君は感情の昂りに左右されるタイプなのですね。私が発破をかけたら一気に力が上がったのです。最初は一番見込みが無さそうだと思ったのですが」
「アイツは仲間思いだし、ヴィオの奴とはただ犬猿の仲って感じしないからなぁ……おっとこれ以上は生徒のプライベートにゃあ踏み込まないでおくか。さて……おーいシュウ! 今日はお前はもうおしまいだ。こっちこいや」
「えっ?なんでだよ先生?オレはまだまだ暴れたりねぇんだ……よ………?」
シュウは突然糸の切れた人形の様にその場に倒れてしまう。しかし吐息はしっかりしているようで特に問題はない様だ。
「ふむ、やはりこうなったのですね。皆さんも覚えておいてくださいです。初めて神装を纏った時は必ず誰か近くにいるようにしてください。でないとこの様に無様に無防備を晒すだけなのです」
シュウが力無く倒れている姿を見て皆最初は驚いたが涎を垂らしながらいびきをかいてる姿を見て今度は呆れてしまった。
「さて、他の皆さんも今日はそろそろ終わりにするのです。体力も限界だと思うのです。先輩はシュウ君おぶるのです」
「へいへい」
シュウが倒れた事を切っ掛けに一日目の訓練は終了が告げられた。
眼前までくる死の緊張感と連戦に次ぐ連戦に全員心も身体も最早限界だった。帰り道、十分程で辿り着く境界の狭間までの道が果てしなく遠く感じた程に。
なお、ウルスに背負って貰いながら間の抜けた顔で寝ているシュウは大変幸せそうな寝顔だった。
生徒達が共通で感じた事は、境界の、人間側の世界に入った時に物凄い安心感を覚えたことだった。あの『御伽』の住人達がこちらの世界に入ってこないという事実に。
緊張感が一気に解けたような雰囲気になる。普段あれだけ明るいヴィオでさえ境界を抜けるまで一言も話さなかったのだから。
「では皆さん、今日はお疲れ様なのです。取り敢えず今日の訓練はこれにて終了です。あとは各自先輩の指示に従うのです」
雷音は最初の小屋に戻ってくると体の芯から魂が抜ける様にほぉ、っと息が吐き出た。
気分的にはそのまま正直大の字になって寝てしまいたいだろう。
「よし、お前ら今日はよく頑張った。これから明日の朝まで自由にしていいからな。あと今からテントと寝袋を渡すから各自これで休め。あと連絡しといた通り食事は各自で準備することになってた筈だからそれは自分で何とかしろ」
ウルスから渡されたのは小さな袋が二つだった。とても人が入れる大きさには見えない。
「それを地面に置いて神力を込めてみろ。そうすればテントが広がるからな。寝袋も同じだ。ちなみにこれは軍用だからお前らがここを卒業したらすぐ使うことになるぞ」
試しに地面に置いて神力を込めてみるとみるみる内に一人用のテントが出来上がった。神力がこのような技術にも応用出来るとは知らなかった雷音は感嘆した。
「それと……ふんっ!!」
ウルスが大地に力を込めると硬い岩の壁がせり上がり一つの部屋の様になった。
「沢山汗かいたろうし水浴びぐらいしとけ。チェルシー、水は頼んだぞ」
「まったく生徒には甘いですね。じゃあ水浴びしますね。まずは女子生徒から来てください。水をシャワーみたいに流しますから」
「何!?」
今まで寝転んでいたシュウがいきなり目を覚ました。当然の如く女生徒達から白い目で見られるいる。
「馬鹿シュウは何でこんな時に目が覚めるかなー」
「うむ、助平は死んでも治らぬというしな」
シュウは昔、女子更衣室を覗いたという前科があった。その時にヴィオの怪力が本領発揮したのは言うまでもない。
「シュウ君、覗いたら私から先輩に言って退学にしてもらうのです。女の敵には死あるのみなのです」
チェルシーの水も凍るかの様な眼光に流石のシュウも黙って頷くしか無かった。間違いなくこの人は怒らせてはいけない人だ、そう心に刻むとシュウは再び意識を失った。
「普通は半日ぐらいは目ぇ覚まさねえはずなんだがとんだエロ餓鬼だなこいつは」
「やっぱり昔の先輩に似てるのです」
「お前みたいなチンチクリンを誰が覗くかっての……ってコイツは失言だったな。ってお前本気で攻撃するんじゃねぇ!」
チェルシーの腕から放たれた水の槍を避けたウルスであったが、背後にあった木が数本倒れていくのに冷や汗を流した。
その後女子から簡単に水浴びを済ませ男子も続けて水浴びをした。弱い水を雨の様に放出し続けるのはコントロールが面倒らしく雷音達男子の時は手抜きをされ嵐の真っ只中で水浴びをする体験を強制的にされたのであった。
そしてその後は皆ふらふらと各自のテントに引き寄せられるかの様に吸い込まれバタバタと倒れていった。
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