悲劇の晩餐再び その二
雷音が大量に作った煮込みハンバーグは既に半数を切っていた。ルナが大量に食べるのは想定していたはずなのに絶望感が隠せなかった。
「うむ、これは美味い……我の舌を唸らせるとは驚愕である」
「いや、俺は会長がいることが驚愕ですが」
学園最強はフォークを自慢の得物の槍の如き速さで次々とハンバーグを食していく。
「……美味しい。凄く美味しい。こんな美味しい物食べれるなんて……養って……」
「嫌です。てかアイシャ副会長は輝族でしょ」
その物静かな表情も変えずアイシャはハンバーグをハムスターの様に頬に詰める。
「相も変わらず味噌汁美味しいわ。わたくしの為にありがとう」
「いや、自分の為ですけど」
ナディアは美しい所作で味噌汁を飲む。
これがもしもお茶会であれば惚れ惚れすることであろう。
「ごめんね雷崋、止めたんだけど皆聞かなくてさ」
「なら食うなよ……」
そしてサンは申し訳無さそうにしてはいるが箸が止まる事はなかった。
もちろんルナは脇目も振らずにモリモリ食べており、繭も我関せずと言わんばかりにそそくさと食べている。
何故この国のお偉い方々の御子息達がなんでこんな所にいるのか、しかも何故に人様の晩飯を貪り食っているのだろうか。雷音は頭を抱えてしまうばかりだ。
「あの、皆様何しに来たんですか」
「何を言っている、夕飯を食べに来たのだ。それ以外に何があるというのだ」
「おいしい……」
「この煮込みハンバーグとやらもふわふわで美味しいですわ。蒼天さんは本当美味しいお料理作りますのね」
とりあえず全員帰ってくれ、そう言いたい雷音であったが、サンを含めて学年も立場も上である彼らにその言葉は吐き出せなかった。
「ははは、ごめんよ雷崋。取り敢えずご馳走様。さて本題なんだけど今日の反省点を君に伝えにきた」
「反省点?サン兄達が勝手に人んちの晩飯食べたこと?」
「いやいやいや、ごめんって。もうしないからさ」
「(絶対また食べに来るな)」
「そんな目で見ないでよ?会長が雷崋と戦って気付いたことさ。まず自分でも気付いているだろうけど全然力を使いこなしてない、それと神力の絶対量が足りない」
「うん……それは分かっている」
「あと神器の使い方かな。スキだらけだったって。雷崋は力に目覚めるのが遅かった……七歳になった時に資質の検査をして潜在的に神力が有るかを調べるだろう?
でも僕なんかはその前から既に神力に目覚めていて、力を使う事ができた。ここにいる皆やSクラスの連中は皆そうだね。と言ってもSクラスは数人しかいないけどね」
それだけ神力を扱う時間の差があり、流石にその差だけはそう簡単には埋まらないのであった。
「だからね、聖徒会権限で君も放課後限定で僕達Sクラスの訓練所を自由に使える様にした」
「え!?」
「知ってるだろ。聖徒会には権限があるって。会長にも学園長にも許可はもらってるから何か文句を言う奴がいたら僕から許可を得たって言えばいいから」
「ありがとう……ていうか本当にいいの?俺Eクラスだよ?」
「そんなこと関係あるまい。我が許可したのだ」
「力が全て……クラスなんて関係ない……」
「そうですわよ。気負いせずに自由にお使いなさいな」
「ならお言葉に甘えさせていただきますね……?」
昨日まではそんないい待遇を受けられるなんて夢にも思っていなかったので未だに雷音は困惑していた。が、強くなる為には良い機会と思い返事をした。
「良かったね雷崋。今度はアタシが訓練相手になってあげるからそしたらまた美味しいご飯作ってね?」
「む……それなら私が相手する……」
「聞き捨てなりませんわね。それならわたくしもお相手しますわ」
「ウチは食堂じゃありませんけど」
「良かったねお兄ちゃん、モテモテで」
「お前は黙ってろ」
そんな話をしながらも皆の箸やフォークが動いていることを……雷音は嬉しさのあまり見逃してしまっていた。
「じゃあそろそろ僕達はお暇するよ。ルナも帰るよ」
「えー、まだ帰りたくない」
「母上に伝えておくね」
「帰ります!」
慌てて帰る準備をするルナに合わせて聖徒会の面々も帰り支度を始める。
「雷音とやら、何かあれば我を尋ねれば良い。馳走の礼をする」
「ご馳走様……美味しいご飯……また食べたい」
「今日も美味しかったわ。御機嫌よう」
「じゃあ雷崋またね」
「明日はアタシと特訓するんだからね!」
ぞろぞろと雷音の部屋から去っていく面々を送り、ゆっくりと居間に戻る雷音。
まるで台風が過ぎ去った後の様に静かだ。
「あぁ腹減った……さて食べると……えっ?」
食事をしようと座る雷音。しかし目の前のテーブルの上に見えるのは残酷にも変わり果てた鍋だった。
「……繭、俺のハンバーグは?」
「お兄ちゃんご愁傷様様でした。お休みなさい!」
「う……うわあぁぁぁぁ! ちっくしょおぉぉぉおおお!」
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