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白の闘諍  作者: 死者モ
参_浄化
66/73

参-29 00ffff_完遂

 しばらく激痛に耐えながら、ルキに覆いかぶさるように抱きついていたが、慣れてきたのか、熱さが引いて来たのか、今までの治療と同じくらいの熱さになってきた。


「ちょっと、重いんだけど。」

「っ!?」


 ボクの下から声がしたのにびっくりして、起き上がる。


「あと、お前って言ったわね。この熾ルキ様に。」

「げっ、聞いてたのか。」

「人間死ぬ時も聴覚が最後まで残るって言うじゃない。」

「……。はぁ…。」


 痛がるルキをゆっくりと起こし、プレハブ小屋に向かう。ボクは叩くと冷えるタイプの保冷材で手を冷やしながら、ルキの治療にあたる。ルキは痣も痛みも治まったようで、ケロッとした様子で固形食を口へ運ぶ。


「なぁ、なんか、治り早くないか?」

「う~ん、どうやらアンタが命令無視して直ぐに冷やし始めたのがよかったみたい。」

「無視って…、目の前で人倒れてるのに放置する方がおかしいだろ。」

「あらそう?ワタシは、そうね、ちーちゃんでもない限り、放置するわ。それより、あと3体残ってるから、これを繰り返すわよ。よろしくね。」

「………はぁ…。」


 いつもの調子に戻ったルキとボクは、一晩プレハブで寝袋にくるまって過ごし、次の日は午前と午後で1体ずつ、その翌日は昼過ぎに最後の1体を処置した。流石に、毎回ルキを抱きしめる訳にもいかないが、ルキはそれが効率がいいと言い始め、大口論の末にルキがボクに抱きつく形に落ち着いた。


「はぁ、はぁ、も、もう嫌だ。痛い。熱い。」


 地面にあぐらをかいて座るボクの後ろにルキがべったりと体を預ける。


「あら、根性ないのねぇ。ほら、ちょっと休憩して、あとは残った欠片を処理したら終わりよ。」

「ちょっと待ってくれよ…。」


 抗体の締めつけを逃れた肉片が各部屋に散らばっていたので、1箇所に集めることにした。この作業は得意の作業である。小屋の入り口付近に各部屋の肉片を集め、それぞれの個体に移植されたであろう元のコンタギオン片はルキが回収し、密閉できる袋に入れた。


「で、これはどうやって処理するんだ?」

「う~ん、本体、あ~、本体ってのは元の人間の部分ね、その本体ほど毒性は強くないけど、ここにはコンタギオン片回収システムが整ってないから、ワタシがまとめて取り込むしかないでしょうね。」

「じゃあもう1回やるのか。」

「本体ほど苦しまないはずよ。」


 そういってボクがコンタギオン片に背を向け、ルキの指に穿刺器を付けようとしたその時だった。


「ミズチ!下!」

「えっ?」


 ルキが叫んだと同時にボクは右足に力が入らなくなる。かくん、とバランスを崩し、足の方に目をやると、コンタギオン片の一部に大きな口のようなものがついており、それがボクの足首をかじったようだ。『ようだ。』というのは、すでにそのコンタギオン片はボクの足から離れており、ボクの足首の一部がくちゃくちゃと噛み砕かれている様子しか確認することができなかったため、かじったということは想像でしかないから、そう表現するしかなかったのだ。


 そんなことを考えているうちに、既にルキは抗体を飛ばし、口のコンタギオン片を始め、全てのコンタギオン片を握りつぶしにかかっていた。次の瞬間、ようやく右足が痛みを覚え始めた。


「うっ…。うぐぉっ……。」

「ミズチ!止血!押さえて!」


 ボクの右足首からはどくどくと血が流れる。意識は薄れていき、ボクを呼ぶルキの声がどんどんと遠くなっていった。


 意識を取り戻した時には、ボクはどうやらベッドの上に寝ているようだった。


「ミズチ…?わかる?…あぁだめよ、まだ起きられないわ。ちーちゃん!ミズチ起きたわよ!」


 ボクはAクラスの居室にある、自分のベッドに横たわっていた。体からは複数の管が出ており、起き上がろうとして横にいるルキに制止された。


「あぁ、アイくん、よかった。」


 サトイさんの声がする。ルキとサトイさんに顔を覗かれ、やや困惑した状態でボクは


「た、ただいま戻りました…。」


と呟いた。


「おかえり、アイくん。さ、ルキも、アイくん目を覚ましたんだから、休みなさい。」


 その後、療養をしながらサトイさんに聞いたところによると、ボクは痛みと貧血で気を失い、ルキが肉片を処理しながら応急処置をしてくれたそうだ。本体より毒性の少ない肉片と言えど、それなりに体内での反応はあったらしく、ふらふらになりながらボクを飛行機の発着場まで運び、2人ともLnodeⅥの救急処置室へ搬送。


 ルキはボクによる冷却処置がなかった時期と同じように、とにかく安静。ボクは足首の皮膚を直径3cmほどと、アキレス腱の一部を損失。腱は縫い合わせ、皮膚は太ももから一部移植して再建された。その後、ボクは出血性ショックとルキの治療によるダメージもあったため、次の日までLnodeⅥで眠らされた。さらに翌日にはおおよそルキの回復も見込まれたので、サトイさんが迎えに来てチャーター機で帰寮。という流れだったそうだ。


「アキレス腱、失血、肉体的疲労、精神的疲労も酷いだろう。3ヶ月ほどはここで安静にしよう。」

「は、はぁ。でも、ここの仕事なら寝ててもできますよ。」

「…そうだ、アイくんは真面目だったね。ルキも見習ってほしい…。」

「いやぁ、ルキも相当疲れてるはずですよ。」

「う~ん、それにしても、10年休むって宣言してるんだよ。」

「それは休みすぎですね。」


 サトイさんと軽く談笑し、その日は点滴を外して体を洗い、おかゆを食べた。あたたかい食事は久しぶりで、少し涙がにじんだ。


 ひとまず、移植片に関しては片付いた。ボクはしばらく歩行のリハビリと、寝ていてもできるAクラスの事務作業を続けることになった。


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