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白の闘諍  作者: 死者モ
壱_洗礼
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壱-5 383c3c_鎮静

「では、Lクラスはどのタイミングで動員されるんですか?」

「いやぁ、試験が満点なだけあって勉強熱心だね。」

「Lは基本的に誰かが喰われてからしか出さないわ。」


 そう言い放ったルキの目はなにか悲しそうでもあった。お嬢様でも末端の隊員や民間人が捕食されたら悲しくなるか。


「Lクラスの中でも接近攻撃をするタイプと遠距離攻撃をするタイプがあるんだ。接近タイプは人間の傷害性T細胞を応用しているのは分かるかな?」

「はい、傷害性T細胞はもともと感染してしまった細胞を攻撃するんですよね。」

「そう。しかしコンタギオンは細胞に収まるほど小さくない。」

「だから対コンタギオンとしては、傷害性T細胞は『接近戦を得意とする隊員が応用している仕組み』とか『Gクラスの非特異的な攻撃に対して、特異的な攻撃ができる、つまり毎ターンクリーンヒットが打てる』という位置づけになるわね。」


 ルキがやけに冷静に説明する。


「傷害性T細胞の仕組みは抗体を使用しない、けど少し強いだけで基本的にGクラスと同様の動きをすることになるから、人を選ぶわ。」


 なるほど。Lクラスの中でもそんな区分けがあったのか。遠距離攻撃型はさっき見たような攻撃をするということか。


「ま、ワタシたちには関係ないわ。軍の中は統制されてるもの。今は違反者を取り締まらないと。」


 そう言ってルキは食べ終えた器をキッチンに下げる。ボクもごちそうさまでしたと呟いてそれに続く。


 ソファーに戻ると、ルキがなにかを思い出した様子で書類をごそごそと捜索する。


「そうそう、ミズチに検査結果見せてあげるんだったわね。ほらこれ、ここの『MHC適応』。」

「MHC適応…0…。」


 とほほ…。


「他には、そうね、『G適』も不可、ほら。」


 Gは顆粒球のことだから、顆粒球パワーも使えないということだろう。一体ボクの抗体と顆粒球たちはどうなってるんだ。


「まぁせいぜいワタシのお世話、頑張ることね。ほら、討伐完了よ。」

「これで僕たちの仕事は終わりだ。ほとんど見ているだけだったけどね。」


 そういってサトイさんはキッチンに片付けに行った。コンタギオンはバラバラに崩され、隊員たちが回収していった。ボクはそれを見届けた後、キッチンに向かった。


「片付けますよ。ボクの仕事なんですよね。」

「あ~じゃあお願いしようかな。他の仕事溜まってて…。すまないね。」


 サトイさんからスポンジを受け取り皿洗いを始める。不慣れだがこれくらいなら出来る。がちゃがちゃと慣れない手つきで皿を洗い終えたボクはリビングに戻る。


 ルキはソファーに寝転がってケータイを見ている。


「ルキ…さん、隊長?はお仕事ないんですか。」

「ん~と、さっきの違反者が捕まれば指示出すけど~、ほとんどないわ。」


 サトイさんはあんなに忙しそうだったのに…。だんだん分かってきたぞ。ルキの仕事は大体サトイさんがやってあげてるんだ。執事のようだ。


「あんた荷物全然片付けてないんじゃない?あの部屋は自由に使っていいから。あと欲しいものあったら言いなさいね、経費で落ちるわ。」


 いいことを聞いた。軍の内部情報に関する参考書でも買ってもらおう。コネ最高じゃないか。


「今年、ウチにはあんたしか来なかったんだからしばらくやめないでよ。」


 前言撤回。コネ入隊のお嬢様は傲慢だ。ボクはそそくさと自室に入り、昨晩から鞄の中で待っていた荷物たちを外に出してあげることにした。


 げっ、母親が持たせたお土産を出すのを忘れていた。典型的なお土産だ。黒い直方体。触るとべたべたする。そう、羊羹である。


 がちゃり、とドアを開け、再びリビングに向かうとルキは先ほどと変わらなかった。


「あの、これ、つまらないものですが…。」

「へぇ~、律儀だね。開けてみていい?」

「どうぞ…。」


 がさがさと紙袋からその黒い棒を引きずり出し、不審なものを触るようにつんつんとつつく。


「これ、なに?」

「えっ…と、羊羹です…。」

「ヨウカン?」


 なんてこった。都会の人は羊羹を知らないんだ。


 ルキは包みをぺりぺりと剥がし、その黒い躯体をみてますます不審がる。


「これは…どうするものなの?」

「食べるものですよ。ご存じないんですか?」


 ルキが知らなかったものを知っていたので少し得意げになり、ついドヤ顔をしてしまった。


「ふぅ~ん。」


 といってルキはひと竿まるまるのまま手に持ち、かぶりついた。もっちゃもっちゃと音を立てる。美少女が台無しの食べ方である。


「…っ!!」


 あ~のどに詰まらせたか。


「美味しいわこれ!!ミズチ!あんた天才ね!!すぐパパにいって昇格させてあげるわ!!」


 着任して数時間で昇格が決まった。


「あ、サトイさんの分もあります。というかAクラスが3人だとは思わなくて大量にあるんですが…」

「ワタシが持ってくわ。ありがとミズチ!」


 そういって美少女は満面の笑みを浮かべた。心臓に悪い笑顔だ。もし軟弱ものだったらかわいさの暴力で死んでいる。


 ルキは部屋を後にした。ボクは荷物の片づけを再開した。羊羹ひとつであんなに喜んでくれるとは。


 しかし今日はいろんなことがありすぎた。衝撃の事実がありすぎて脳みその処理が追い付いていない。ボクはぐったりとベッドに横たわった。窓は南向きのようで、温かい日差しが注がれていた。


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