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白の闘諍  作者: 死者モ
参_浄化
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参-12 f7f6fb_覚書

 翌日からは、特になにも変わりなく、淡々と回収係の業務をこなす。作業中に危ない目に逢うこともなく、あおちゃんの調子も戻ってきて、それなりに楽しい会話もしながら作業ができるようになってきた。


 ただ、ボクの脳裏にはいつも数日前の光景が焼き付いている。いつコンタギオンに襲われるかとびくびくしながら過ごすのはかなり厳しいものがあったが、Lnodeの中にいれば大丈夫だという隊長の言葉で辛うじて居室の中にいる時は安心できた。


 毎日同じような日が過ぎて行き、ルキと再会した日から1週間ほどが過ぎたころ、ボクは珍しく丸1日休みを貰うことが出来た。と言っても、Lnodeの敷地から出ることはなく、よほど大変なことがない限り、その日は出動がないことを約束する、というだけのことだが。俗に言う非番のようなものかな。


 ここしばらく暑い日が続き、居室にいても汗をかくくらいだったので、制服の襟カラーを外して洗うことにした。洗ってもしなびたり、ふやけたりしないが、襟の形を保ってくれるので、ボクはそれなりにこの襟カラーという存在は好きだ。


 自分のロッカーから制服のジャケットを取り出し、襟カラーを外すと、なにかがぽろっと足元に落ちる。


「なんだこれ?」


 拾い上げると、それは小さく折りたたまれたメモのようなものだった。ベッドに腰掛けてゆっくりとそのメモを開く。


 そこには、殴り書きでメッセージのアドレスが書いてあった。


「なんだこれ?」


 2回も同じ独り言をつぶやいてしまった。ドメインは軍用のアドレスだ。誰のアドレスだろう?とりあえず隊長たちに尋ねてみよう。


そう考えて、隊長に声をかけようとした瞬間だった。


 分かった。これはルキがボクの肩に手を置いたときに忍び込ませたんだ。


 ボクはもうすぐそこまで出かかっていた言葉を飲み込む。恐らく、これはここに連絡しろということなんだろう。なんてことだ、1週間以上も放置してしまっている。


 いや、むしろ1週間放置していて、向こうからなんの音沙汰もないということは、もう見なかったことにしてもいいのではないだろうか。どうしようか、これは連絡すべきなのだろうか。それともなにかの罠なのだろうか。


 とりあえず、ベッドに寝転がり、個人で持っている端末の電源を付ける。


「A……1…@……ははっ…。」


 よく見たらルキの隊員番号そのままが使用されているアドレスだ。なぜすぐに気が付かなかったのだろう。あまりの自分の間抜けさに、思わず乾いた笑いがこぼれる。ひとまず登録したが、さて、ここからどうしよう。


 う~んう~んとうなりながら、ベッドでごろごろしているうちに、お昼時を過ぎてしまった。洗濯をしようと思ったんだった、と思い出し、洗濯や所用を済ませているうちに日が沈み、1日が終わってしまった。


 消灯時間を過ぎ、暗闇の中でもう一度端末を開く。ぼうっと画面が明るくなり、昼間に開いたまんまのアドレスの登録画面が浮かび上がる。


「う~ん…。」


 アドレスを書いて寄越しただけで、メールをしろとは言われていないし、かといってアドレスを貰ってメールをしないやつもいないだろう。連絡を取ったらどうなるのだろう。連れ戻して殺す気ならこんな回りくどいことをしなくてもいいだろうし…。


 はっ、とした。自分の楽観的観測に嫌気がさす。そういえば、ボクは殺される運命だったんだ。やつらはボクを殺そうとしていた、否、実験体にして殺そうとしているんだった。


 最初からバレていたんだ。


 どこからだろう。逃げたことが判明した後、実家のあたりで見張られていたのだろうか。もしかして、最初からバレていたとか?なんにせよ、向こうは分かっていたのにボクを泳がせているという状況だ。なぜそのようなことをするのだろう。


 命を狙われている状況にもかかわらず、ボクはベッドの上で静かにルキのアドレスを眺めていた。なぜこんなにも落ち着いていられるのか少し考えたが、恐らくルキのあの表情だろう。18歳とはいえ、今にも泣きだしそうな少女を見て、殺されるという恐怖は湧いてこない。


 サトイさんは、いつものにこやかな表情がなく、少し怖かったが、物腰の柔らかさは健在だった。少なくとも、両者からボクを実験体にしようという雰囲気は感じられなかった。まぁ、春からずっと騙されていたのだから、当たり前かもしれないが。


 気付いたら翌日の朝で、まーくんが支度をする音で目覚めた。


 決めた。泳がされているなら、存分に泳いでやるよ。


 ボクは登録したアドレスを削除し、いつも通りの日常に戻った。


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