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濡れ手でギャル  作者: こよみ
花咲冬花編
9/15

9話 水田茉莉は友達を思う


「──水田、話がある」


 おれが学校で話しかけたのは水田茉莉。こいつと話すのも久しぶりである。


「おーけー、保健室借りてくるね?」


 こいつは察しが早くて助かる。伊達に学年三位をとってはいないな。

 

 あれ? 俺の周り結構頭の良い奴で構成されてね? 深山も村田も花咲さんも学年二十位以内には毎回入っている。

 

 俺はというと……学年……聞くな恥ずかしい。絶対に言わないんだからねっ! これはツンデレでは無いな……。


 こんな下らない一人遊びをしていると、水田が戻ってきた。

 そして、俺を連れて保健室まで向かった。


 

 保健室の中は相変わらず先生が居ない。

 

 気をきかして外してくれてるのもあるとは思うが、それにしても易々と貸しすぎでしょう? 男女の過ちがあったらどうすんの? 


 視線を水田に向ける。あぁ、絶対にないわ……こんなちんちくりん。


「今、失礼な事考えたでしょ!」

「何故分かった? さてはエスパーだな?」

「違うよ! 完全に顔に出てたからね!」

「どうどう」

 

 水田は軽くプンスカ怒っていたが、なだめていたら直ぐに機嫌がなおった。ちょろいな。


 それからちょっと間があいてから、「それで? 話があるんでしょ?」と聞いてきた。


「花咲さんとの事、ちゃんと話そうと思ってな……」

「ようやく話してくれる気になったんだね?」

「すまん、遅くなってしまった……」

「全然良いよ。ちゃんと話してくれればそれで」


 嬉しそうに微笑む水田。その顔に少しドキっとしてしまった。


「──あっ! みこっちも呼んできた方がいい?」

「いや、まずは水田だけで話を聞いて欲しい」

「そっか……。じゃあ、私だけで聞くよ」


 俺は水田に洗いざらい全てを話した。俺と花咲さんが昔、小学校で一緒だったこと。花咲さんに脅されて付き合ったこと。 


「──やっぱりそうかぁ……。だから関係がギクシャクしてたのかぁ……。うんうん、それを聞いて納得だよ」

「隠していて悪かったな」

「いや、話したくないことの一つや二つあるから大丈夫。みこっちの写真のこととか凄く言いづらいし。それよりも、話してくれてありがとうね?」


 くそっ、こいつの今日の笑顔は反則級に可愛い……! ヤバイぞ俺、このままじゃロリコンの烙印をおされてしまう……! 『ロリ()』とか呼ばれてしまう……! 


 こうなったら──


「痛っ!!」

「──えっ、なんで急に自分の頬を叩いたの? そういう趣味なの?」

「ありがとう落ち着いた」

「何に対してのありがとうなの? そして、なんで達観した顔してるの?」

「深山の写真どう思う?」

「なんでそんな急に切り替えられるの!? 怖い!?」


 水田がぎゃーぎゃー騒いでいるが、今は無視だ。それよりも、話の続きをちゃんとしないと。


「落ち着け。深山の写真について、水田の意見を聞きたい」

「あっ、うん……。私の意見としては、その写真の信憑性があまりないかな?」

「……っていうのは?」

「その写真、みこっちは寝てたんでしょ? 多分、睡眠薬とか飲まされたんじゃないかな? それでみこっちが知らない間に裸にされて、上に避妊具を乗せられたって感じかな?」


 まるで見てたかのような言いぶりだな。


「なんでそう思った?」

「うん? みこっちは身持ち固いから男とそんなことしないし。ふゆっちもみこっちに、男を使ってそんな酷いことしないと思う」

「なんでそう言いきれる?」

「だって……二人とも──私の大切な友達だもん」

「──っ!」


 分かった……俺と水田の違いが。水田は最初からずっと友達を信じていた。それもバカみたいに。

 

 俺は信じきれなかったんだ。深山も水田も……そして花咲さんも……。

 

「ありがとう……水田。お前のことアホだと思っていたけど、お前は良いアホだったんだな」

「それ、結局アホだよね!? なんなの! ホントに! がるるるる!」


 あっ、ついに唸りだした。ちっちゃい犬みたいで可愛いな。もう、可愛いことは認めようと思う。


 落ち着かせてから、もう一度お礼を言う。


「ありがとう水田」

「んっ、どういたしまして」


 ぷいっとそっぽを向いてしまったが、ちゃんと返事を返すあたり良い奴だ。


 人生でこんな最高な友達と出会えるなんて、俺はついている。


「あっ、それと……これ……」


 俺はポケットに入れといた飴を差し出す。


「良いの?」

「あぁ、もちろん。お前のために買ってきたからな」

「ありがとう! わーい!」


 喜んでいる。可愛いなこいつ……! 微笑ましいなこいつ……はっ! これは決してロリコンではない。父性というやつだ。

 

 いつの間にか俺も大人になっていたんだなぁ……うんうん。そう結論づける俺がいる。


「──あっ、次は移動教室だから、ご飯食べてそろそろ行かなくちゃ」

「いきなり呼び出して悪かったな」

「全然いいよ? その代わり……ちゃんとみこっちとふゆっちと仲直りすること! 分かった?」

「あぁ、分かった」

「なら、よし! 私は教室に戻るねー!」


 スキップでもしそうなくらい楽しげな背中を俺は何時までも見送っていた。



◇◇◇◇◇◇


「で? どうだったの? 水田さんとの密会」


 授業が全て終わり、帰る間際の俺にそう聞いてきたのは、言うまでもなく村田だった。


「ただ話し合いに行っただけだからな?」

「僕という可愛い男がいながら、他の女に会いに行くなんて……掘っちゃうぞ?」

「おい、思わず逃げたくなるから冗談でも止めろ。あと、この会話二回目だぞ」

「冗談じゃないよ?」

「さようなら」

「待って待って……! 冗談だから待って」


 逃げようとした俺の服を掴んで、引き留めてきた。


「実は瑞人に渡したい物があるんだ」


 自分のリュックをあさり、取り出したの白い封筒だった。


「なにこれ?」

「それはねぇ……僕からの手助けだよ? 家に帰ってから内容は見てね?」


 その封筒を俺に手渡してきた。


 いきなり渡された白い封筒に若干ビビっていた俺に「絶対に役にたつのは保証するよ」という言葉と、ウィンクを付け足して村田は去っていった。


 

 家に帰った俺はさっそく封筒から中身を出した。入っていたのは新聞の記事のコピーだった。

 目を通していくうちに分かってしまった。


 だから、苦しくなった。


 それでも、俺は明日……花咲さんと───決着をつける。

 


 


 


 


 


 


 




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