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濡れ手でギャル  作者: こよみ
花咲冬花編
7/15

7話 村田奏は手助けしたい


 皆さんは男から寝込みを襲われた経験があるだろうか? 今、俺は現在進行形で体験中である。


「おはよう、瑞人」


「出てけ! お前、なんで俺のベッドに居るんだよ!」


「夜這いではないから、朝這い?」


 今日は土曜日。昨日、遅くまでスマホをいじり過ぎて、何時もより少し遅く起きた。


 そしたら、これだよ! こいつ……ついに家まで侵入してきたか……! 


 学校の友人に恐怖を覚えた頃、スマホが鳴った。画面には花咲冬花の文字が。慌てて電話をとろうとしたら、先に村田にとられてしまった。


「もしもし? 確か同じクラスの花咲さんだよね? うんうん、瑞人? いるよ? なんで? 今日は僕と遊ぶみたいだから じゃあね? ばいばい」


 電話をそのまま切ってしまった。


「おい! なんで切っちゃうんだよ! っていうか、勝手にとるなよ……」


「ごめーん、反射的にとっちゃった。それに今日は僕と遊ぼうよ? 此処んところ遊んで無かっただろ? 友人の仲を深めようぜ」


「いや、凄く嫌なんだが……」


 確かに此処んところ花咲さん絡みで遊べて無かったが、わざわざ家まで侵入してくるか普通? むしろ、どうやって入ったのか知りたい。


「瑞人のお母さんに友人だって言ったら、嬉しそうに部屋まで案内してくれたよ」


「母さん……。そして、心を読むな」


「分かりやすい瑞人が悪い」

 

 友人を家に呼んだことが無いから、嬉しかったんだろうな母さん。なんか心配かけてたみたいで、申し訳ない気分になった。


「とりあえず出掛けようぜ」


「何処に?」


「久しぶりにゲーセンでも行こう」


「ああ、分かった着替えてくるわ。だから、早く部屋から出ていけ」


「やけに素直だね?」


「俺もたまにはお前と遊びたかったからな」


「ツンデレのデレきたよこれ」


「うっさい……。はよ出てけ」


 男友達と遊ぶのが久しぶりで、楽しみなのは内緒だ。俺には男友達こいつしかないからなぁ……。


 俺が着替え終わるまで、一階で待っててもらった。寝癖を軽く直し、歯磨きをする。

 

 リビングに行くと、母さんと村田が談笑していた。やけに楽しそうだなおい。

 

「おっ、瑞人。準備出来た?」


 俺に気付いた村田が声を掛けてきた。


「出来たぞ」


「じゃあ、行こうか。瑞季(みずき)さん、話はまた今度お願いしますね?」


 瑞季さんとは俺の母さんの名前である。めちゃくちゃ仲良くなってんな、こいつ。


 母さんの「いってらっしゃーい」を背中にうけながら、家を後にした。



 二人で町中を歩く。村田は顔は美少年だから、町行く女性が振り返る。完全に注目の的となっていた。

 

「僕の美少年ぶりに皆が振り向く……。あぁ、なんと良き光景」


「性格はクソだけどな」


 本当に皆、容姿に惑わされないでね? こいつ性格クソだから。頭おかしいから。


「ゲーセンの前にさ、休憩していかない?」


 そう言って指差したのは、ラブなホテル。ないわー……。ちょーないわー……。


「冗談言ってないで、はよゲーセン行くぞ」


「まぁ……冗談ってことで良いよ? うん、そう

だね早く行こうか?」


 不穏な言葉が聞こえたがスルー。神様、俺は今日無事に帰れるのでしょうか? 神を信じてないけどな。


 

 ゲーセンに向かい、夕方まで遊び尽くした。二人で協力プレイやったり(初めての共同作業だね? って言われた時は殴りそうになった)二人で対戦してみたり。

 

 本人には言わないが、久しぶりに充実した日を過ごせた。


 その帰り道──


「この後どうする? 飯でも食べに行くか?」


「ごめーん、この後用事あるんだ。この埋め合わせは今度するね? 勿論、僕の体で」


「要らん。なら、はよ行け」


「いけずー。今度また遊ぼうね? じゃあね、ばいばい」


「おう、気を付けてな」


 村田が手を振りながら去っていった。俺も帰るか……。




「もしもし? うん、同じクラスの村田だよ? 実は話したくてさぁ 学校近くの公園に来てくれない? 良いの? ありがとう! じゃあ、後でね? ばいばい」


 彼は通話終了のボタンを押して、ため息をつく。


「ふぅ……。お節介かな? でも、瑞人には幸せになってもらいたいし? ちょっとだけ手助けしちゃお」



◇◇◇◇◇◇◇


 花咲冬花は彼の到着を公園で待っていた。彼女と彼はクラスは同じだが、ほとんど話したことはない。

 

 それなのに、同じクラスの村田(むらた)(かなで)に呼び出された。


 確か彼は手野君と仲が良かった。それを踏まえれば話の内容は予測出来なくもないが、手野君が彼に私達の関係を言ったとは、到底思えない。


 何故なら彼は……昔、私にトラウマを与えられた人間なのだから。

 

 手野君の質問には覚えてないといったけど、本当は覚えている。


 いや、忘れる訳がない。

 

 あれがきっかけとなり、今の私が形成されたと言っても過言ではない。


 あの時の手野君は辛そうな、泣きそうな顔をしていたなぁ。あれを思い出すだけで、体が身震いするほど高揚してしまう。


 私はなんて最低な人間なのだろう。でも、今更止められない。私には私の欲しい物があるのだ。

 その欲しい物のために、いくら犠牲を払おうとも私は構わない。


 とりあえず、目の前の男をどうするか考えなくては……。


「やぁ、待った? 突然ごめんね? どうしても話したくてね? 花咲冬花さん」


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