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濡れ手でギャル  作者: こよみ
花咲冬花編
3/15

3話 水田茉莉は騒がしい

 

 そのあと、チャイムがなる前に早めに帰ろうとなった俺達は、教室に向かって廊下を一緒に歩いていた。 

 

 教室まで二回階段をのぼり、もう少しで教室にたどり着きそうな時に目の前から見知った人物が歩いてきた。 


「みこっち遅いよ! どこ行ってたの? って……むむむ、隣のはてのっち……? とういわけは浮気かこのやろー!」


 このいかにもアホっぽいアホは水田(みずた)茉莉(まり)

 深山の友達で、もう中学からの付き合いになるらしい。

 

 騒がしいとか、うるさいとかが良く似合う女だ。 


「待たせてごめん。これ、あげるから許して?」


 そう言ってポケットから取り出したのはペロペロキャンディーだった。


「仕方無いなぁ、許してあげよう」


 そんな物でつれるのか? という疑問を軽く払拭してくれるのが、この水田(アホ)だ。

 でも、このアホは以外に頭が良く、毎回学年三位には入っている。解せぬ。 


「水田茉莉。毎回いってるけど、てのっちやめろ」


「うちをフルネームで呼ぶなぁ!」


 このアホはフルネームで呼ばれることを嫌う。「水田茉莉」が「水溜まり」を連想させて、可愛くないから嫌いらしい。

 知ってて、あえて呼んでみたのだが。 


「水田茉莉。てのっちやめろ」 


「フルネームで呼ぶなぁ!」


「水田茉莉「フルネームで呼ぶなぁ!」


「水田ま「フルネームで呼ぶなぁ!」


「水田」


「うん、なにかな? てのっち」


 パワーで押しきりやがった! どんだけ呼んでほしくないんだよ!?

 そこまでいくと狂気に近いものを感じるよ。


 てのっち呼びやめてないし、もうどうでも良くなってきたわ。

 

「いや、何でもないわ」


「ふーん、そっかぁ……。じゃあ、てのっちにもう用はないから、早く教室に戻ったら?」


 ──こいつ……! 殴りたくなる気持ちを抑え、教室に戻っていく俺に深山が声をかけてくれた。


「瑞人ー、また放課後に」


「ああ」 


 深山と水田とは別々のクラスだ。だから放課後には、深山と水田が教室まで来てくれて一緒に帰るのが日課になっている。

 別に水田はいらないが。 


 教室に入って自分の席に着こうとしたら、またもや男子達に質問ぜめにあっている花咲さんがみえた。

 途中、目があってしまった。

 

 助けてって目をしていたが、それをスルーして、まだ時間があったからトイレに行こうとした。

 だが、花咲さんのはなった一言で状況が変わった。 


「あっ、手野君だ! どこ行ってたの? 私、手野君と話したくて待ってたんだよ?」 


 おいおい! 何言ってくれちゃってんの!? 横にいる男子がすげー目で俺を見てるんだけど! さらにその隣にいる男子にいたっては中指たててるし……。

 

 早く弁明しないと確実にヤられるなこれ……。 


「俺、「お昼ご飯一緒に食べた後、すぐに戻ってくるかと思ったら中々もどってこないだもん。まだまだ話したいことあったのに……」 


 「俺、知らない」ととぼけようとしたら、更なる爆弾を投下された。

 もう、火に油どころか、火にガソリン撒いちゃってるよ! 

 

 すいません、この中に消防士の方いらっしゃいませんか! いないどころか、町のチンピラみたいな奴らが近付いてきてるし……。

 やべーよこれ、逃げ場ねーよこれ。

 

 その中の男子の一人に肩をくまれた。こいつさっきの中指たててたやつじゃね? 


「俺はさぁ優しいからさぁ、一発で終わらせてやるよ」


 ──なにを? なにを終わらすんですか? 人生ですか? ファイトですか? パーフェクトボディーって今はそんなこと考えている場合じゃない。

 

 うまくごまかす方法はないかと模索していたら、花咲さんに「早く話そ?」と手首を捕まれ引っ張られて席に座らせられた。

 

 逃げられた感じがしたが、花咲さんと話す間、男子達に回りを囲まれて生きた心地がしなかった。

 ちなみにチャイムがなって、先生がくるまでこの状況は続いた。 


 午後の授業も(とどこお)りなく終わり、放課後になった。

 

 俺は部活をしていないため、このまま帰れるのだが、深山と水田と帰る約束をしているため教室で待っていた。

 そうしたら、花咲さんが話しかけてきた。


「手野君、この後用事ある?」 


「あるぞ、帰るという用事が」


「じゃあさ、一瞬に帰ってくれないかな? 町を案内して欲しくて」


「悪いな、先約があるから」


「そっかぁ。残念だけど、今日は一人で帰るね」


「ああ、悪いな」


「全然大丈夫だよ。無理言ってごめんね?」


 そんな会話をしていたところに深山と水田が教室に入ってきた。水田は花咲さんと俺を交互にみてきた。 


「うわっ、てのっち、女の子ナンパしてるー!」


「してねーわ!」


 何言っての? こいつ、本当にアホだなぁ……。あと、あり得ないみたいな顔すんな腹立つ。 

 確かにそうだけどさ……。


「じゃあ、一緒にいる女の子は誰?」


 意外にもそう聞いてきたのは深山のほうだった。深山ちょっと怒ってない? 


「あの、私は転校生の花咲冬花です。ここら辺のことまだよく分からなかったので、手野君に案内してもらおうと話しかけたんですが、断られてしまって……。本当にそれだけなんですよ? 彼女さんから手野君をとろうなんて私は考えてないです。だから安心してください」


 ──かっ、彼女!? 深山が!?へ……へぇー

 

 将来的にはそうなってくれたら嬉しい。なんなら奥さんになってくれたらなぁ……。夢の新婚生活を妄想して、よだれが出そうになった。


「へぇー、花咲さんか。そっか、花咲さんねぇ……」


「えっ、私のこと知ってるんですか?」


「一度も同じクラスになったことないから覚えてないか……。あたしは深山深子、花咲さんと小学校が同じだから知ってるんだよ」


「あっ、深山さんだったんですね! なんか風貌がかなり変わってたんで気付きませんでした」


「そんなあたし変わったかなぁ……」と呟いていたが、銀髪になってるし、ちょっとメイクもしているから風貌は俺も変わっていると思う。

 ただ、普通に可愛いが。 


「なんだ、みこっちの昔の知り合いか。いいこと思い付いた! この町を私達が案内してあげるよ!」 


「えっ、ほんとですか?」


「うんうん、みこっち良いよね?」 


 俺は嫌なんだけど。深山頼む、嫌といってくれ!

 深山は少し考える素振りをみせたが、「あたしも良いよ。それで」って深山ー! 何でだよぉ! 


「じゃあ、どこから回っちゃう? やっぱり、駅前のプリンが美味しいお店から?」


「それは茉莉が行きたいだけでしょ? こういうときはまず花咲さんが行きたい場所を聞かないと。どこ行きたい?」 


「じゃあ、私は水田さんが言っていた場所に行ってみたいです。それと、私のことは冬花って呼んで下さい」 


「ホントに? 無理して合わせなくて良いんだよ? 私も深子でいいよ。それと、冬花、敬語やめたら? 同級生なんだし」 


 めちゃくちゃ話盛り上がってるんだけど。どっちもコミュ力あるから、俺はそれが羨ましい。

 

 でも、俺にもボッチ力があるから、一人で過ごしても寂しくない。言ってて悲しくなってくるからこれ以上はやめよう。


 深山は気付いてないのか? その花咲さんが俺にトラウマを与えた人物だってこと。

 

 いや、そんなはずはない、一年前にもそのことで会話をしているから。なら何故、花咲さんの案内を了承したんだ? 


「うん、敬語やめるね。それと、私もプリン好きだから大丈夫だよ深子」


「話が分かるねぇ、ふゆっちは。うちのことは茉莉って呼んでね!」


「ふゆっち? ふゆっちって私のあだ名なの?」


「うん、そうだよ。冬花の冬の部分をとって、ふゆっち。もしかして駄目だった?」


「ううん、凄く嬉しいよ茉莉」


 なんですか、この百合オーラは。女の子同士のイチャイチャは俺も嫌いではないが、目の前でやられると疎外感が凄い。

 

 さっきから、水田が花咲さんに抱き付いているが、顔がニヤニヤしている。完全にセクハラをしているオッサンの顔をしていた。 


「とりま、駅まで向かおっか? 早めに向かわないと数量限定だから売り切れる可能性もあるし」


「──はっ、そうだった! それは一大事だよ! ほら、ふゆっち行こっ!」 


 と花咲さんの手を引いて、走って教室を出ていく所を見届けた深山は、俺の方に振り返って「ほら、あたしたちも向かうよ」と言ってきた

。 

 

 やっぱり俺も強制参加なんですね? 分かってましたよ……。

 

 行きたくはないけど、深山とデートできると思えばのりきれそうな気がしないでもない。

 

 そんなことを思いながら深山と一緒に後を追って行った。

 






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