5.冒険者ギルドとイルン北医療院
<登場人物>
内政大臣ハーヴェ
トロティエ冒険者ギルド長 男性の人間、50代?
フランコイルン北医療院薬療科長、今年182歳の男性エルフ
5.冒険者ギルドとイルン北医療院
ドワーフ製鉄工所を離れる。
建設大臣はレンネ城に戻るとのことで、別れ、我々はギルドに向かう。
すでに、けが人の救護と医療院への運搬は医療衛生大臣から命令が出ているとのことで、一段落したら、町の主要道の瓦礫の撤去と復旧建設物資のドワーフ製鉄工所へ依頼をするためだ。
ドワーフ製鉄工所から川沿いに歩いて5分ほどのところにある。
ここも壁は損傷しているが、建物が崩壊せずに済んでいる。
ギルドの前の広場は救護広場になっていて、けが人が大勢いる。
向かい側にイルン北医療院がある。
そのような中、建物に入る。
受け付けは忙しい中、私を見つけ、大急ぎでギルド長を呼んでくる。
ギルド長が現れ、ギルド長室に通される。
ギルド長の名はトロティエ。男性の人間、50代?
町の主要道の瓦礫の撤去とドワーフ製鉄工所の復旧建設物資の依頼をする。
ギルドは、魔物(この世界はいるのか)討伐や買取、護衛業務、手紙の配達、雑務、とありとあらゆる業務をこなしているそうだ。
あと、冒険者にはランクがあり、S、A~Fとなっているそうだ。
けが人の運搬は1日銀貨8枚(全ランク)で医療衛生大臣の名ですでに出されており、町の主要道の瓦礫の撤去については1日銀貨7枚、ドワーフ製鉄工所の復旧建設物資の依頼も1日銀貨7枚とする。
(全ての冒険者が受けることが可能。)
あとそうだ、亡くなったものの回収と埋葬依頼も出す。1名につき銀貨2枚。
この国の通貨は次の様になっている。
白金貨1枚=金貨100枚=銀貨千枚=銅貨1万枚=鉄貨10万枚。
鉄貨1枚10円くらいか?
話を聞くと、この王国には銀行はなく、金貸しはいる模様。
ギルドは冒険者のみに、個人へのお金の貸し借りと、賞金の預かり、払い出し(預金)、職人組合など、組織への融資なども行っているらしい。ギルドは国内外の町にあり、同様の業務を行っているらしい。
この世界に銀行は必要だ。冒険者だけでなく、全ての者が利用できるようにしよう。
興味本位でどんな魔物が取引されているのか、聞いてみた。
スライム、ゴブリン、オーク、リザード、ボア(猪?)、スパイダー、ヒュージスネーク、いるらしい。
また、ほとんど目撃されないが、ワイバーンやドラゴンもいるとのこと。
なんという世界だ。
去り際ギルド長が
「国王がギルド視察に来るなんて。」
と言われる。
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冒険者ギルドを出、すぐ近くのイルン北医療院に行く。
医療院は、下層階がつぶれ、惨憺たる状況だった。
かろうじて助かったものが、広場に避難し、続々とけが人が運ばれてくる。
冒険者ギルドは宿屋も運営しており、今はそこも「病室」となっているそうだ。
療院長、副療院長が亡くなり、薬療科長が代理の療院長を務めていた。
薬療科長、名前はフランコといい、今年182歳の男性エルフ。
ポーションの生成が専門とのこと。
けが人は1000人を超え、すでにさばききれない状況になっているとのこと。
「まず、医師は受け入れ検査をし、死亡者、重体者、重傷者、軽傷者を区別し、重傷者から治療を行うのだ。ポーションはどのような症状を治せるのだ?」
「体力回復から、解毒作用、麻痺とその解除、混乱解除、石化解除といったものがあります。また、傷口が治るエリクサーというものもあるのですが、生成が難しく、最良の入手も貴重なものばかりで、入手がほぼ不可能です。」
「ただ、材料がほとんど集まらず、といった状況です。」
その後、ポーションについての講義を聞いたが、体力回復はともかくとして、解毒はパンに生えたカビから抽出しているとのことで、作業者によっては薬効にばらつきが出るようだ。ペニシリンだ。
麻痺のポーションはいわゆる麻酔。痛みを和らげる用途で使われるということだが、マンドレイクやトリカブトに似たような薬剤を組み合わせて作るということで、昏睡状態が戻らなかったり、麻痺が残ったりすることもあるそう。あと、ふぐ毒の様に呼吸できなくなって、亡くなるということもあるようだが。
リスクの少ないリドカイン麻酔薬が作れれば良いのだが、あと解毒ポーション=ペニシリンと合わせ、癌細胞などの切除外科手術に使えるようにしなければならない。
原料の塩酸リドカインはジャイアントスパイダーの胃液とある。
って、脳内検索、この様なこともしらべられるのか?
「副作用の少ない麻酔はジャイアントスパイダーの胃液から作れる。
冒険者ギルドだっけ?そこで依頼をし、リドカ...麻酔ポーションの材料を集めるといい。」
「精度のよい解毒ポーションと危険リスクの少ない麻酔ポーションを使えば、腫れたできものや、腐りかけた手足の末端部を安全に処置することはできないか?」
「?、!!、素晴らしい発想です。多くの者を助けることができます。」
「国王、あなたは?!」
内政大臣が驚く。
「あと、麻酔をかけている間は、羊の腸でふいごを作り、呼吸の補助をする。」
「骨折者は添え木をし、むやみに動かさないこと。足首などの関節の骨折は石膏で一時的にその部分を固めること。」
「意識がないものは、吐しゃ物でのどがふさがる場合があるので、口から喉、肺に至るまでの気道を確保すること。」
「心臓が動いているかどうか確認するため、手首のところを触り、脈を確認し、心臓が動いていない場合、胸の心臓の位置を強く一定間隔で押すんだ。」
知事として、救急救命訓練は受けたことがあるので、その受け売りだけどね。
「包帯などは、汚れた布を使わずに、煮立っているお湯にいったん漬けたうえで、乾かし使用すること。包帯は使いまわしをしないこと、魔法だ。」
細菌など細かいことを話している時間がなかったので、この様な言い方をこの場では、した。
フランコ薬療科長のほか、数名の医師が集まってきて聞いている。
いったん説明をやめ、集まってきた医師に、戻るよう伝える。
さて、 混乱解除のポーションではあるが、話を聞くと、いわゆる鎮静剤。
落ち着いて、眠くなるらしい。ただ、薬の依存性が高いらしい。
抽出植物はケシに似たような植物で、って?アヘン?!
ベンゾジアゼピン系鎮静薬を作るためにはベンゼン環とジアゼピン環が中心となる化学構造を作れればいいのだが、ベンゼンは原油などから作られ、って、この時点ですぐに生成できるものではない。
石化解除ポーションは石灰性腱炎等を治すポーション?
本来、関節の一部にしか生成されない病気ではあるが、このポーションの主成分はシメチジンか?副作用で意識障害やショックが発生するということで。これもジゼアピン系の構造材料の入手は、この世界では今はできない。
脳内検索で調べ考察する。
薬療科長と内政大臣が私の顔を覗き込む。
「とにかくだ、エリクサー何てものは入手できないので、ペニシ..じゃなくて、解毒ポーションとリドカ...じゃなくて、麻酔ポーションを使って、治療すればいい。」
ファンタジーの世界ではある。
いったんレンネ城に戻ることとする。
作者のうしねこです。
脳内検索機能便利ですね。
国王、ギルドの銀行業務拡大?と医療の近代化を考えているようです。