362. 地理に詳しい人物
362. 地理に詳しい人物
ユリアは宿屋に帰り、自分の体にある電源パックの端子から、
市場で入手した宇宙船を操縦したりできる端末装置らしきものをつないで充電していた。
リディ「その光景、凄い違和感があるわね。ユリアの脇腹にフタがあって、
そこからチューブの様な線が出てるんですもの。」
オリビエ「私も。知らない人が見れば、ユリアはモンスターよ。」
ユリア「そうですか?」
リディ「そうよ。エルフも場所によっては、変な目で見られるのに、
ユリアはそれ以上だわ。」
オリビエ「なんで線を鏡につないでいるのかも、いまいちわからないわね。」
ユリア「これは充電作業と言って、この鏡の様な装置に食事を与えていると思ってください。」
オリビエ「食事は口から固形物や飲み物をとる行為よ。」
ユリア「あっ、ある程度充電できて、端末が動く様になりました。」
ユリアは端末と通信をし、解析を始めた。
ユリア「これは…この端末は乗降型ロボットのコンソール端末ですね。
あとは、転送機か。」
オリビエ「転送機って、破壊されたんじゃないの?」
ユリア「それは間違いの様です。ただ、未来や過去に転送できず、この惑星内の移動のみですが。」
リディ「ロボットって何なの?」
ユリア「巨大な人間型の乗り物で、中に人が入って操縦するものですね。」
オリビエ「転送機もロボットもどこにあるか、ですね。問題は。」
リディ「城の地下が怪しいわね。」
オリビエ「何でですか?」
リディ「それは、私が貴族だったころ、貴族の間である噂あってね。」
ユリア&オリビエ「噂?」
リディ「そうよ。ロカルノ主宰は、裏で錬金術の研究をしていて、
人造ゴーレムを作っている。それについて城の地下で研究を行っている、という噂よ。」
ユリア「リギルトが話していた、
『王族を乗っ取り、ロカルノがこの国の王として、乗っ取り、周辺国に宣戦布告するという噂』
もありましたね。」
ユリアは一呼吸置いて、
ユリア「この国を乗っ取り、乗降型ロボットを使い、
転送機で他国にこのロボットを送りこみ宣戦布告するというところでしょう。
時々検知される電波は、ロボットか転送機の物でしょう。
ところでリディ、城の地図が欲しいですね。」
リディ「あいにく、最重要機密だからねえ、そういうものは。
でも、ここの下水路と城の地下はつながっているという話はあるからねえ。」
オリビエ「冒険者ギルドでだれか詳しいがいるかもしれませんよ。」
早速3人は冒険者ギルドへ行ってみることにした。
冒険者ギルドへやってくると、朝一番で依頼をこなした冒険者が何組か、
受付の横にある待合スペースでたむろしていた。
リディとオリビエは、下水道のモンスター討伐依頼をしようとしていて、
下水道の地理に詳しい者はいないか?
という前提で聞き込みを行っている。
そのような中、リギルドが冒険者ギルドへやって来た。
リギルド「宿屋の女将に聞いたら、母さん達はギルドへ行ったと聞いてね。」
リディは聞き込みをやめて、こちらへやって来た。
リディ「リギルドがギルドへやって来たということは…。」
リギルド「そうです、母さん。地図を手に入れられる目途が立ったんで来たんです。」
オリビエも聞き込みをやめて、こちらへやってくる。
オリビエ「進捗があったんですか?」
リディ「まあね。」
リディはリギルドへ目線で合図を送る。
『どこで入手したのよ。』と。
リギルド「ガルトン爺さんです。」
リディ「ああ、爺さんか。まだ生きていたのか?」
リギルド「母さん、本人の前で言わないでくださいよ。」
ユリア「ガルトンさんって、誰なんです?」
リギルド「城の設備修繕を受け持っていたドワーフの親方でね。
下水道のメンテナンスも受け持っていたんだ。
ただ、今は引退して息子に引き継ぎ、
この町の職人街で悠々自適な生活をしている爺さんなんだ。」
オリビエが小声でリギルドに質問する。
オリビエ「なんか、ガルトンさんとリディって仲が悪そうですが?コソッ」
リギルドは顔を曇らせ、オリビエの耳元でささやいてくる。
リギルド「そうなんです。犬猿の仲というか。
元々は母さんが貴族をしていた頃に、屋敷の設備修繕をガルトンさんの父親が受け持っていて、
ガルトンさんと母さんが、よく屋敷の庭で遊んでいたそうなんです。コソッ」
オリビエ「誰から聞いたんですか?コソッ」
リギルド「元メイドの二コラおばさんです。コソッ」
リギルド「で、ある日母さんがおねしょをして、自室に隠していた毛布を、
遊びに来たガルトンさんが見つけてしまったんです。コソッ」
オリビエ「そりゃ、修羅場ですね。コソッ」
リギルド「そうなんです、おねしょの話はガルトンさんを通じて、
屋敷内だけでなく、同年代の貴族の間に広まってしまったんです。コソッ」
リディが、こそこそ話しているリギルドとオリビエを睨みつけてくる。
リディ「何か?!」
リギルド「いえ、母さん、ガルトン爺さんのことだから、何か見返りを行ってくると思うのですが。」
リディ「そうね。あの爺さん、腹立たしいが、酒を一本位は持っていく必要がありそうね。」
一同4人は酒屋へ行くことにした。




