359. 単細胞生物の化け物
359. 単細胞生物の化け物
下水路の先からの、うなり声が徐々に大きくなってくる。
それでも、ユリア、オリビエ、リディは足を進めていた。
暗い通路の先から、やがてぼんやりとうなり声の主の姿が現れる。
オリビエ「これは…スライムではないですよね。」
リディ「…。」
3人の前に現れた魔物は、スライムではなく、楕円形のふにゃふにゃした生物だった。
オリビエ「これは?」
ユリア「ゾウリムシですね。それも巨大な。」
オリビエ&リディ「「ゾウリムシ?」」
ユリア「そうです。いわゆる単細胞生物で、1つの細胞ですね、これは?」
オリビエ「え?、単細胞??」
ユリア「こんな巨大な細胞、見たことありませんが、これは単細胞です。」
オリビエ「いや、細胞って何?」
そんな話をしていると、巨大なゾウリムシが体をくねらせ、
こちらへ襲い掛かってくる。
ユリア「まずはやっつけます。」
ユリアは胸の中から電極を出し、巨大なゾウリムシに電極を刺す。
その瞬間、ゾウリムシは感電し、やがて煙を上げ、動かなくなる。
ユリア「とりあえずやっつけました。」
ユリアは巨大なゾウリムシの死骸を観察する。
ユリア「構造は、まさしくゾウリムシですね。
繊毛があり、大核や収縮胞があります。
細胞口や細胞肛門があり、大きい以外は同じものです。」
リディ「説明してくれないか?」
ユリア「世の中の生物は細胞という組織がいくつもまとまって、できています。
オリビエさんやリディさんも、たくさんの小さな細胞の集まりでできています。
生物には動物や植物などいますが、これらは構造が若干異なりますが、
両方とも細胞でできてます。
基本細胞は小さく、拡大しないと見れないものですが、
例外として、コカトリスの卵など、卵は1つの大きな細胞と言えます。
先程話した単細胞生物というのは、細胞が1つで構成されている生物ですね。」
ここまで説明したところで、
リディ「わかった、説明は後で聞こう。
つまり、普段は目にほぼ見えない小さな動物がこんな大きな姿で現れた、
ということだな。」
ユリア「そうです。」
リディ「無事町の宿屋にたどり着けたら、ゆっくりと聞こうとしよう。
今は急ぐぞ。」
ユリア「わかりました。」
その後、巨大なゾウリムシだけでなく、ミジンコ、ミドリムシ、ミカヅキモ、
アオミドロ、ケンミジンコ等々、次々と現れる。
ただし、弱い。
ユリア「一通りの巨大プランクトンが、
ここには生息しているのではないでしょうか?
これは興味をそそりますね。」
リディ「どれも見たことがないものばかりだ。」
オリビエ「そうね。我々とそこら辺の気が、
同じ細胞という構造でできていること自体に驚きだが。」
3人は、そんなプランクトンだらけの下水道を何とか抜け、
裏通りの下水道出口から町に出ることができた。
オリビエ「はっきり言って私たち臭いわ。宿屋に入れるだろうか?」
リディ「まずは冒険者ギルドへ行こう。この通りの先だ。」




