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354. 初夏の果物

354. 初夏の果物


ガーゴイルを倒し、魔石を見つけたリディ、ユリア、オリビエはモントルー街に向け、荷馬車を走らせていた。

モントルー街に着いたのは、これまた夜遅くになってからだった。

リディ「町(街)によっては、夕方ゲートが閉まる街もあるけれど、この街は1日中空いているわ。もちろん、モンスターの異常発生時や、皇帝一族が来ている時は別だけれども。」


一同はモントルー街に到着した。

が、

オリビエ「こういうのを、街の門が閉まっているって言うんですよね。」


正面の大きな木製の門は閉まっている。


リディ「リュリ村での惨劇の情報がモントルー街にも連絡されて、夜間閉鎖されたのかも知れないわね。」


よく見ると、門から少し離れた所に、運悪く街に入れなかった冒険者や商隊がキャンプを始めている。


リディ「私達は狭いかも知れないが、荷室の幌の中で寝ましょう。1人が交代で警備をして、2人で寝れば、何とかなるわよ。」


ユリア「そうですね。」


オリビエ「では、食事の準備を始めましょう。」


リディとユリアは薪を集め、火を起こし、リディは荷室から食材を出し、食材となりそうな山菜を探す。


メニューは、パン、塩漬けベーコンを取ってきた山うどで煮込んだスープ(山うどのアクはちゃんと抜いている)、茹でたあずき菜をチーズで挟んだ物、そして生のアプリコットを準備した。


リディ「アプリコット、ロランのギルドで貰ったので、悪くなる前に食べてしまいましょう。」


オリビエ「ちょっと待って下さい。アプリコット、そのまま生で食べるんですか?乾燥させたり、ジャムにせずに。」


リディ「そうよ。1年のうち、たった2週間位のこの時期だけだけれど、取り立てのアプリコットは生で食べられるのよ。熟れた方が酸っぱくなくて良いんだけれど、酸っぱいのもアプリコットっぽくて良いわね。

ただ、食べ過ぎると、お腹を壊すわね。」


オリビエ「それは知りませんでした。」


リディ「数個なら大丈夫よ。」


オリビエとユリアはアプリコットを生で食べてみる。


ユリア「そんなに酸っぱくもなく美味しいですね。」


オリビエ「私のはちょっと酸っぱいかしら?でも、美味しい。」


ユリア「この果肉の中にあるタネを埋めれば、イルンでも出て来そうですね。」


ユリアは生のアプリコットを味わっていたが、はたと思いつく。


ユリア「これ、アプリコットのシャーベットなんかも美味しそうですね。」


リディ「あなたの国ではシャーベット出来るかも知れないけれど、魔法が使えなくなった状況で、この時期に氷菓子を作るのは不可能に近いわ。」


ユリア「ボルン帝国の鎖国が無くなれば、氷の魔石の冷蔵/冷凍庫が入ってくるかも知れませんね。」


リディ「...まあ、国の方針だから。」


オリビエは話が暗くなってしまったので話題を変える。


オリビエ「アプリコット以外でも、今ちょうど、ハックルベリーやスグリ等もシーズンですね。」


リディ「そうね。この辺の地域ではちょうど今頃取れるので、ジャムや果実酒にする家が多いわね。」


オリビエ「私の実家も、ちょうど今の時期、家族総出で、赤と黒スグリを取ってましたね。懐かしい。そのままでも食べれるのですが、痺れる様な酸っぱさが口いっぱいに広がるんですよね。」


リディ「そうね、よくスグリは垣根にしているので、上の方は取りやすいんだけれど、下の方はしゃがむので、腰が痛くなる、毎年の恒例行事ね。


ユリア「あと、これから桃やすもも、メロンなんかも出て来ますね。


リディ「そう。これからそういった果物の輸送が増えるわね。果物は振動を与えると痛むので、運ぶのは難しいのよ。」


その夜、3人は初夏の果物談義に盛り上がった。

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