353. 操られたガーゴイル
353. 操られたガーゴイル
リディ「やっぱり、狙われているのは私たちじゃないの?」
リディはそう話しながら必死に襲ってくるガーゴイルを細剣で追い払おうとしている。
ユリアはガーゴイルにとびかかり、拳で砕いていく。
ユリア「しつこいですね。」
オリビエ「でも、この国に来て、ガーゴイルによく出会うこと。
ガーゴイル、そんなにいる魔物ではないのに。」
リディ「私だって、ガーゴイルを見たのは48年ぶりよ。」
オリビエ「覚えているんですね、正確にいつ戦ったかを。」
リディ「そりゃ覚えているわよ。当時冒険者をしていた時、
一緒のチームだったメンバーが亡くなった冒険で、
今でも忘れられないわよ。」
リディ「エルフ、特にハイエルフは寿命が長くて、
その分過去に何があったのか、忘れがちって言われるけれど、
大事な仲間が亡くなったことは鮮明に覚えているわよ。どのエルフでも。」
オリビエ「そうね。でも、長いエルフ生、エルフ以外の親しくした友人や仲間が亡くなり、
自分たちはあまり年が変わらない、エルフにとってそれが一番つらいことで、
エルフがほかの種族の結婚を避けようとするのは、そういったところがあるんじゃないかしら。」
そのような話をしている中、ユリアがすべてのガーゴイルを拳で砕き終えた。
ユリア「終わりましたよ。ちょっと遠隔で操られている証拠がないか、調べてみますね。
こうもガーゴイルがたくさん出てきて、私たちに襲い掛かってくるのは異常です。」
ユリアはそういって、体が欠けて動かないガーゴイルを分析し始めた。
ユリアは頭を砕いている時、小さな黒い豆粒以下の魔石を搭載した小さな基板を見つけた。
ユリア「これですね。黒い魔石のことはあまりわかりませんが、この基板は外部の電波を受信して、
魔石に波動を送る基板ですね。ちょっと他のも見てみます。」
ユリアはほかのガーゴイルの頭部を砕き始めた。
ユリア「やっぱりありますね。これで私たちを襲うよう、外部から電波で送っていた、というところでしょか。」
リディ「電波?基板??」
ユリア「いわゆる魔法の波動と新型の魔法のスクロールだと思ってください。」
リディ「魔法は使えなくなったんじゃなかったかしら?」
ユリア「それが、新方式の魔法で、この時世でも使えるものなんです。
残念ながら、だれが電波という魔法を使い、遠隔でガーゴイルを動かしていたか、
今はわからないのですが。」
オリビエは確信をした。
ボルン帝国から出ていた電波は、このガーゴイルへ送られていた電波と発生源が同じであるということを。
ユリアへ目くばせをすると、ユリアはうなずいていた。
その後、ユリアは粉々になったガーゴイルの頭部を砕き、残りの魔石付きの基板を回収していった。
ユリア「ところで魔石に詳しい人、この先のモントルー街か帝都マルティニーで知りませんか?」
リディ「それだったら、ゲオルグ爺さんを紹介するね。
一緒にパーティーを組んだことがあって、この国最高の腕を持った鍛冶屋をしている。
私の細剣もゲオルグが作ってくれたんだ。
魔石を搭載した武器づくりではこの国で右に出る者はいないよ。
今はマルティニー武器屋街の裏通りで、細々だけれども現役でやっているよ。」
ユリアは自分の持つ細剣を見ながら、紹介をしてくれた。
ユリア「では帝都についたら、彼のところにも寄りましょう。」
ユリアはオリビエにそう言う。
3人は再び荷馬車をモントルー街に向け走らせた。




