343. 意外なエルフの家族関係
343. 意外なエルフの家族関係
???「…起きてください…」
???「…早く、早く起きてください…」
オリビエは全身を揺さぶられ、ゆっくりと目を開ける。
ユリア「火事です、早く起きてください。」
周りを見渡すと、部屋のドアの隙間から煙が噴き出してくる。
そのような中、急に部屋のドアが開けられ、慌てて部屋に駆け込んでくる女性がいた。
あけられたドアからはものすごい煙が流れ込み、その女性は慌ててドアを閉めた。
ユリアは薄暗い中、その女性の顔を覗き込むと、あの受付にいた女性であることが分かった。
ユリア「ああ。」
宿の受付おばさん「こちらです、私についてきて。」
ユリアとオリビエは慌てて、女性についていく。
受付のおばさんは、突然クローゼットを開き、クローゼット内の板の壁の部分を蹴り飛ばす。
すると簡単に穴が開き、奥から細い通路が現れる。
通路が現れてから、ランプに火をともす。
受付のおばさん「こっちよ。」
おばさんは通路の階段を下りていく。階段を降り切った後、かび臭い細い通路を進んでいく。
ユリア「これだけ階段を降りるということは、ここは地下で、宿の外に向かっている様です。」
オリビエ「そうね、どこまで行くのかしら。」
オリビエの問いかけを無視する様に、受付のおばさんは無言で通路を進んでいく。
やがて上りの階段があり、階段を登りドアを開けると、そこは、もの置き場で、1人の女性が立っていた。
よく見るとシシリーで、宿屋の受付のおばさんに目線で合図を送る。
シシリー「無事に抜け出せた様ですね。ここは冒険者ギルドの地下の倉庫、安心して頂戴。」
ここでオリビエが気づく。
今まで助けてくれた宿のおばさん、毛糸の帽子をしていたのだが、毛糸の帽子から、細長い耳が、飛び出している。
オリビエ「エルフだったの?」
おばさんはその質問には回答せず、代わりにシシリー答える。
シシリー「そうよ、彼女、ハイエルフよ。」
受付のおばさん「私の娘は、アナタの知り合いのはずだと思うわ。」
オリビエ「???」
受付のおばさん「私の娘はギルド長をしているの。それもあなたの国でね。」
オリビエ「?!」
受付のおばさん「私の名前はリディ、娘の名前はリア。娘がお世話になっている様ね。」
オリビエ「あのリア?!確かに彼女、身内のことは話をしないが…え?」
リディ「そう、あのリアちゃん。
また好き勝手にギルドと周りの人を無理に、振り回しているのではないかと気が気ではないが、
なかなか会うことが今までできなかった、というのが、心残り…」
ユリアとオリビエは言葉を失い、沈黙の時間がしばらく流れる。
その沈黙を打ち破るように、シシリーが、
シシリー「彼女、リディは、この国の元伯爵令嬢で、今は、ギルドを助けてもらっているわ。」
オリビエ「ということは、リアはハイエルフで、元伯爵令嬢の娘で…。」
リディ「元伯爵といっても、今は解体され、姿かたちも無いというのが正しい。
それとリアは、正確に言うとハーフハイエルフで、私の夫がエルフになる、が正しいわ。」
オリビエ「リディさんの夫は元貴族、なんですよね。」
リディ「そうなるわね。でも、夫はもうこの世にいないのよ。」
シシリー「今は急ぐので、一緒にこの街を脱出してから話したらどうですか?」
リディ「ああ、そうだった。あの火事はロカルノの私的組織が起こした火事で、アナタたち狙われているのよ。」
オリビエ「なんとなくわかっていたが。」
リディ「ということで、私と一緒にこの街を離れて頂戴。
向かう先は、この国の帝都よ。」
シシリー「ということで、隣の部屋にある地下通路を使って、この街の外に逃げてください。」
リアとリディについては、もっと知りたく、なぜ彼女が今会うことになったのか、
詳しく知りたいが、とにかく急いで逃げることにしよう、とオリビエは考えた。
シシリーに案内され、隣の荷物部屋にある隠し階段を降り、しばらく地下通路を歩くと下水道に出、
その下水道を歩くと、街の近くにある川に出た。
こうして3人は、街を脱出し、帝都に向かうこととなった。




