332.ユリアの物件さがし2_不動産屋に行く
ユリアは部屋を探すため、不動産屋に行くことになった。
332.ユリアの物件さがし2_不動産屋に行く
次の日曜日、リアの運転する車で、ユリアがこれから住む物件探しに出かけた。
車にはユリアのほか、ディアンヌとクリスチーネも乗り込み、イルン中央市場近くの不動産屋に向かった。
リア「それにしても、バスルームやキッチンにこだわりがないなんて、信じられないわ。」
ハンドルを握りながらリアは話す。
ディアンヌ「そうね。しかし、ユリアはアンドロイドだからそういった感情は、持ち合わせていないのかも。」
クリスチーネ「キッチンにこだわりがないなんて。私には考えられないわ。どうやって、美味しそうな食事を作るの?って考えてしまう。」
ユリア「私にはそういった感情はないのかもしれません。実利主義者といわれるかもしれませんが。」
リア「とにかく、ユリア、もう少しかわいらしく、女らしくしたほうがいいわよ。いろいろと損をするから。」
ユリア「損?」
リア「そうよ。男は優しくしてくれるものよ。かわいらしい対応を取っていれば。」
ディアンヌ「それは言い過ぎよ。」
ユリア「わかった。 …いや、わかったわ。もう少しかわいく思われる対応をとるとしよう。」
クリスチーネ「先が思いやられるわね。」
そうこう話しているうちに、目的の不動産屋に到着した。
裏の駐車場に車を止め、建物の中に入っていく。
???「ようこそ、お待ちしておりました。私は今日物件を案内する、ダニエラと申します。」
不動産屋の入り口を入ると、目の前に小柄な女性がすでに待っていてくれた。
リア「なんで私たちのことが分かったの?」
リアは電話で何度かダニエラと話をしていたが、会うのは今日が初めてだった。
ダニエラ「いや、その、おじさんがリアさんやユリアさんのことを話していて、今日リアさんたちが訪問することを告げると、リアさんたちの特徴を教えてもらっていたんです。」
リア「おじさん?」
ダニエラ「そうです、おじさん、あのー、ヒシーニ建設大臣です。大臣の弟の娘なんです、私。」
リア「情報源はヒシーニ大臣だったか。」
リアは、ユリアの物件を探すにあたり、ヒシーニにも相談をしていた。
ダニエラ「ではこちらにおいでください。」
そういうと、奥の予約した部屋に案内してくれた。
ダニエラ「今日、いくつかの物件のご紹介をしようと準備をしておりました。キッチンやバスルーム、交通機関からの距離よりも大きな部屋があるということでしたが、
本当に要望はないのでしょうか?」
リアは事前にダニエラにユリアの部屋選びの要件を伝えていた。
リア「そうね。」
ユリア「私がユリアです。今回私の要望する部屋はコン…」
リア「ちょっと待った!!」
慌ててユリアの口をふさぐ。
(小声で)リア「コンピュータなんて、一般の人は知らない機密事項なんだから、余計なことは言わないの!」
ユリア「…わかりました。」
ユリアの発言のフォローは大変だ…という顔をして、ディアンヌがこちらを見ている。
リア『なに黙っているのよ。ディアンヌもフォローして。』
そのような目でディアンヌを見る。
ダニエラ「どうしましたか?」
リア「いや、早速候補の物件を紹介して頂戴。」
リアは言う。
ダニエラ「まずは1つ目の物件になります。イルン空港から近く、大きな倉庫が隣にあるのですが、滑走路に近く少しうるさいです。一応キッチンはありますが、シャワーブースだけですね。」
そう言って、ダニエラは物件の写真を見せる。
クリスチーネ「なんかこの部屋、人が暮らす物件ではなさそうね。」
リア「そうね、業務用というか、少なくとも、女性の住む部屋ではなさそうね。」
写真を見ながら2人は考え込むような表情をしている。
ダニエラ「実は正直話をしますと、ここ、整備士の臨時宿泊所だったところなんです。
空港が拡張され、別のところに広い宿泊所ができたので、この物件が空いたんです。
隣の広い部屋は航空機部品の加工場なんです。」
ユリア「私がシャ…、空港を利用した時、近くにこのような物件があったなんて、知らなかったです。」
リア『シャトルって言いかけたわね。』
リアは心の中で思った。
ディアンヌ「ほかの物件も紹介して頂戴。」
ダニエラ「わかりました。では、こちらはどうでしょう?」
そういうとダニエラは次の物件の写真を提示した。
クリスチーネ「なんかクラシカルで、重々しい雰囲気で、何よりも遺跡みたい。」
写真には、石造りの装飾の施された部屋が移っている。
次の写真を見て、3人、いや、3エルフは『ああ』と思った。
リア「教会ね。」
ダニエラ「そうなんです。廃教会でして、この広い部屋が礼拝堂だったところなんです。」
写真には礼拝堂の長椅子と祭壇が移っていた。
ダニエラ「もしここを選ばれる際、子の長椅子と祭壇、そして、神父の暮らしていた部屋のキッチンとベッドはそのまま使っていただいて構いません。」
ディアンヌ「冬は寒そうね、でもアン…ユリアは寒いところに暮らしていたから平気かしら?」
リア『アンドロイドって言いかけたわね。』
リアは心の中で思った。
ユリア「ここ、電気設備はあるのですか?…しょうか?」
ダニエラ「ここにはないです。基本ストーブと蝋燭の生活となります。電気工事をしないとだめですね。」
ユリア「私、電気設備のある部屋がいいので。次の紹介をお願いします。」
ダニエラ「次ですか?ではこちらはどうでしょう?」
ダニエラはまた写真を出し、一同の前に並べる。
ディアンヌ「ここは?」
ディアンヌは考え込んでしまった。
ダニエラ「最近出た物件でして、電気設備ももちろんあります。生活エリアの隣に広い部屋もあります。」
と、ダニエラは3番目の部屋を案内する。
ディアンヌ「!!」
少し考え込んでいたが、何かを思い出したようだ。
ディアンヌ「ここ、イルン西魔法パレスの元錬金魔法大学校じゃない!」
ついこないだまで、ディアンヌはここで魔法を教えていた…が、例の魔法がこの世界からなくなり、錬金魔法大学校も魔石学校と規模を縮小し、空いた部屋が物件として売り出されていたのだった。
ディアンヌ「複雑な心境ね。しかしここ、結構いい物件かもしれないわ。」
ディアンヌはそう言う。
ディアンヌ「でもよくリホームっていうんでしたっけ、こういうの。すぐにわからなかったわ。」
学校だったビルのエリアは、住みやすい様に改造され、壁や床は木材をあてがわれ、照明設備もデザインのいい魔石ライトに置き換えられていた。
ユリア「ここはちょっと見てみたいです。」
ユリアが関心を持ったようだ。
ダニエラ「では案内します。下にマイクロバスがありますので、皆さんそちらで案内します。」
一同は外に止めてあるマイクロバスに乗り込んだ。
作者のうしねこです。
この世界でも不動産屋で物件を選ぶ様です。




