312.この惑星にやってきた研究者たち
この船の目的は何なのか?明らかになる。
312.この惑星にやってきた研究者たち
4人でしばらく目の前の惑星ドラクルスを眺めていると、
ユリア「これでも飲んで、気持ちを落ち着かせてください。」
ユリアがスコッチを持ってきてくれた。
アンドロイドの彼女なりに気を使ってくれているのだろう。
ほかの3人にも、飲み物をふるまっている。
30分ぐらいこのラウンジで外の今住んでいる惑星を眺めながら、
それぞれに声をかける。
アリドラ「ついこないだまでですよ、電気や碌な移動手段がなく、
夜が暗くろうそくの明かりが頼りだった私が、空のはるか上のこの乗り物から、
自分の住んでいるという大きな丸い惑星を眺めている、
いまだに夢を見ているのではないかと。
でも現実なんですよね。
貴族同士、国同士でいがみ合っていたあの頃は何だったんでしょう。
今までのことが大したことのない、ちっぽけなことに感じます。」
そういいながら、彼は惑星を眺め、ユリアから渡されたスコッチを飲んでいる。
ディアンヌ「私が人生をかけて学んできた魔法が、実はこの船が作り出していたもの、
…これから魔法はどうなるのでしょう?この遥か高い空に浮かぶ船に来て見て、
魔法を制御する装置を見てみたい気持ちはあります。
でも、私の長い魔法を糧とした人生の中で、納得していない部分もあります。
理解しなければいけない、わかってはいるのですが。」
彼女は惑星の周回軌道を回るこの船から、自分たちの暮らすイルンの町を眺めている。
リア「みんなに言うべきでしょうか、事実を。でも、きっと信じてくれない。
とても冒険者ギルドで扱うことのできない、はるか遠い未来の世界を実際に見てみて、
みんなが知ることが良いことなのかと、わからないです。
でも、いろいろなことを学んで、やがて天空に浮かぶこのような船を作り出し、
冒険をする、それが正しい未来の様な気がします。」
彼女の長い耳を手でこすりながら、惑星ドラクルスを眺めている。
しばらくして、私は皆に声をかけた。
「この船は操縦室があるはずだ。行ってみよう。」
ユリア「ご案内します。」
ラウンジを出て、エレベータの様な乗り物に乗る。
このエレベータも行き先を考えるだけで、動き出した。
しばらくしてドアが開く。
短い通路を歩いた先のドアを開くと、天井がガラス?に覆われた操縦室につく。
いくつかコンソールの様なものがあるが、ボタンなどはない。
ユリア「ここで船の操縦を行います。頭の中でどちらの方向に行きたいか、考えるだけで操縦できます。
またここで、魚雷などの攻撃システムや惑星の転送機を遠隔で動かすこともできますよ。」
と説明する。
アリドラ「魚雷?攻撃システム?」
彼が反応する。
ユリア「そうです。この船は攻撃システムを積んでいます。
敵対する船が現れたら、戦うことができます。」
アリドラ「敵対する船?後で詳しく聞かせてくれ。」
ここで確信的な質問をする。
「ユリア、この船はいつ作られ、何の目的でここにあるんだ?」
ユリア「この船は地球で西暦3284年に作られました。最大速度は光速の9/10まで出すことができますが、
西暦3284年から6年前、過去への転送機で部品ごと転送され運ばれてきました。
例の亡くなる寸前の人を転生させる実験惑星にこの惑星とこの時代が選ばれ、
監視するために運ばれました。いわゆる実験のためのラボの役目をこの船は果たすため、
が、理由ですね。 実験の責任者はロイド博士になります。」
アリドラ「ロイド…」
「ロイドのほかに研究メンバーはいなかったのか?」
ユリア「4名、いました。クリスブルク博士に、ロレントン博士、ディミチェリ技師、タオ委員です。
ロイド博士とクリスブルク博士と、ロレントン博士はアジア欧州連合研究機構の研究博士で、
ディミチェリ技師はこの船に導入されている、惑星での魔法を制御する装置の技師、
タオ委員は研究機構の運営委員の1人で、この研究の資金面の対応をしています。
いずれも地球出身ですね。ディミチェリ技師は生まれは別の惑星ですけれど。」
「5名か。」
ディアンヌ「ディミチェリ先生がこの惑星出身ではない、この計画のメンバーの一人だったなんて…」
彼女は無言で何か考えている。
アリドラ「この国の元貴族がこの惑星外から来た研究者だった、ということですね。」
ユリア「そうなります。貴族になり、この惑星社会の調査を行うため、貴族になっていた様です。」
重い空気が流れる。
重い空気の中、私はユリアに1つお願いをした。
「この船の中の設備を案内してくれないか?」
作者のうしねこです。
亡くなる寸前の人間を転生させる研究、これが今までおこってきたことの全てだった様です。




