289.通貨の統一と変動相場とQC 7つ道具
周辺国の経済が活発化することにより、各国の通貨統一を求める声が出てきた。
そこで…
289.通貨の統一と変動相場とQC 7つ道具
今現在、我が国は首都を襲った大地震という未曽有の危機から復興し、周辺国も巻き込み産業革命の真っただ中である。
我が国は最友好国である、ギエフ民国とフクセンブルク公国、政変により現在暫定政府が統治を行っているホスナブルック王国、
長年鎖国政策を打ち出しているボルン帝国の4各国に囲まれている。
ボルン帝国除き、前述3国とは人と経済物資の往来が活発化している。
我が国から伝わった技術や設備機器、インフラ様式は、我が国以外でも工場を持ち、生産されるにまで至っている。
また、ギエフ民国の港町ウズマイールにこれから建設される造船所や発電所、製鉄所といったものも、我が国全面協力の元、
行うこととなった。
それぞれの国の経済格差は今は大きいが、これらが完成し生産や稼働を始めると、経済格差は埋まってくるものと思われる。
当然、国を越えた物資のやり取りについて、関税など各国で交渉、協定を結んでいるが、
「通貨の統一」について半年前からリール国、ギエフ民国、フクセンブルク公国、ホスナブルック王国の政府間で議論を始めていた。
その進捗について、毎週、財務大臣であるトーステンから報告を受けていた。
トーステン「先月国王から支持をいただいたとおり、各国の共通通貨について、どの様な移行方法があるのか、
案をいくつか挙げ、DA表(各カテゴリにおいて、案ごとに優劣を並べ、一目でわかるようにした表)を作成しました。」
「どういう跳ね返り点(課題)があるか、まとめてみたか?」
トーステン「はい。」
一か月前、私国王はトーステンに前世の工場品質管理の現場で使われているQC7つ道具というものを教えた。
パレート図、特性要因図、グラフ、ヒストグラム、散布図、管理図、チェックシートである。
その中で、トーステンは各案の跳ね返りを特性要因図にまとめ、要点を説明してくれた。
トーステン「…ということなので、
このB案である『ある一定の期間現在の通貨と新共通通貨を使える期間を設け、その間に通貨を切り替える案』が良いと思います。」
トーステン「ただ問題は、各国の現在通貨と共通通貨の交換レートをどうするか?で、経済というものは常に変動していて、
ある一定の額を決めて交換を行った場合、交換した時期や各国の経済力によって損得が発生します。」
「では、現在我が国の株式で採用しているシステムを採用したらどうだ?
あれは、株式会社が発行する株を、その発行元の会社組織の業績等で価格が常に変動する仕組みで、
それを各国通貨と新共通通貨で採用すればいい。」
トーステン「それなんですが問題があり、新共通通貨の市場発行量によって価格が大きく左右しませんか?
どうやって最適の市場発行量にすればいいのでしょうか?
株式会社の場合、各会社経営陣が判断を行っていますが、あくまでも今回は各国の経済を左右する通過であって、
通貨供給量を間違えたら、各国が、以前国王が教えてくれたインフレやデフレに陥りかねません。」
「確かに国単位の通貨だと、国債を国が売買することにより管理できるが、共通通貨だからなあ。」
前世でEU(欧州中央銀行)のユーロはどうやって通貨発行量を管理していたのか?
脳内で検索してみる。
「まずは各国の財政の均衡を維持するための仕組みが必要だな。その上で、GDPを元にした国債上限発行額を決める。」
これは前世で、ギリシャ政府による赤字の増大が通貨危機をもたらした時、
(国の赤字財政がGDPの5%と見積もられていたが実際は13%程だった)、
債務危機によりユーロを使用している国で連鎖的にに通貨の価値が下がった事件である。
前世のことは話せないので、例を使い説明する。
「要するに例えるとだな、地区で水道設備を更新するため、お金を借りることになった。
その時銀行は、地区に住んでいる人の財務状況を調べ、いくらまで貸すことができるか調べたが、
1人だけ実は多額の債務を抱えていて、結局のところ地区の信用はがた落ち、水道設備を更新するお金を借りられなかった。
という例だ。」
トーステン「?、銀行が正しく債務状況を調べられなかったのが問題なのではないですか?」
「そうだが、こういったことが起こらない様に、『各国の財政の均衡を維持するための仕組み』が必要なんだ。」
トーステン「わかりました。『各国の財政の均衡を維持するための仕組み』のための、
各国財政を正しく把握する方法と、国債管理などの方策を議論します。」
「物価、各国の財政と国債、為替、金利について、まずどのように出すか、管理値をどうするか決めるんだ。
各日ごとの変動は、パレート図やヒストグラム、各国の国債が管理地に収まっているかは管理図を使ってみた方がいいぞ。」
トーステン「はい。それとですが、新共通通貨の名前と管理団体はどうしますか?」
「各国に共通する名前がいいな。」
「連合、同盟…ユニオン?」
「ユニオンはどうだ?同盟という意味だ。」
トーステン「いいですね。」
その後、トーステンは各国の財務担当大臣と話をし、ユニオンの発行量と管理について、
①各国の調査した物価変動率の内、最低2か国の平均値の2%を超えない額(毎年調査し更新。)
②財政赤字がGDPの5%以下、債務残高GDP比70%以下
(今は各国の経済格差が大きく、インフラを整えるために国債を多めに発行している国があるため、この値は暫定値。
状況を見てこの数値は見直す。)
③為替介入は独自に行わず、もし行う場合、ユニオン通貨管理団体の承認を得ること。
④3年以上の長期金利は最低2か国の平均値の2%を超えない額
⑤通貨単位はユニオン(Unとする)←各国承認
⑥ユニオン発行団体は「ユニオン中央銀行」とし、本店はここリールに設置し、
各支店はリール以外のそれぞれの国の首都に設ける。
⑦実際の通貨は、1、5、10、50、100、500Un硬貨と1000、5000、10000、20000、100000Un札を導入。
⑧毎年ユニオン中央銀行がユニオン発行額を決め、それに基づいて各国の通貨製造工場が統一デザインの硬貨や札を製造する。
⑨ユニオン中央銀行総裁は2年ごとに各国の財務大臣が務める。
⑩新しいルール等を決める場合、各国の共通通貨財務委員会が投票で決まる。
の取り決めを行った。
作者のうしねこです。
この世界でもユーロを参考にした各国共通通貨を導入するようです。




