284.ラッセルハイム視察15‗異世界流、道の駅
一同はこの旅で出会た、ミネアと一緒にイルンに戻る。
284.ラッセルハイム視察15‗異世界流、道の駅
ミネアを新たに加え、我々一同はバスに乗り込み、来た道を引き返す。
バスが発車する前に、ミネアにバスの設備について説明をした。
ミネア「最近車という乗り物が増えてきたなと思っておったが、、
このような、馬車よりも広く細長い乗り物があるとは、思ってもみなんだ。」
ミネア「応接室?談話室か、それが2つに、給仕関連の部屋とキッチン、トイレ、シャワーまである。
何不自由なく生活できるではないか。」
前世にキャンピングカーというものがあったが、こちらのバス、いや、連接バスといった方がよいか、
こちらの方が広く、多人数が広いスペースで快適に寝泊りできるので快適だと思う。
バスはイルンに戻るため、山道を進み、将来の鉄鉱石などの積み込み港を設置予定のジムス湖脇を通り、
ラッセルハイムに向かう。
一同は談話室で会話を楽しむ。
ミネア「この乗り物は広いのに速いのう。馬車の3倍くらいの速度は出ておる。
しかも揺れないと来た。快適じゃ。何百年生きてきたこの長いハイエルフ生でも、
画期的な出来事だと思うぞ。」
ミネアは一人で感心している。
やがて、ラッセルハイムの町に入るが、今回は通過する。
相変わらず、この連接バスが珍しいのか、町をすれ違う人がこちらを眺める。
ミネア「この乗り物、外の音が全くと言っていいほど、聞こえないな。
町の音が聞こえない。」
と話しつつ、窓の構造を眺める。
ミネア「そうか、ガラスの周りをこの黒い弾力性のあるもので覆うことにより、
車内の空間を隔離しているのか。」
一人で感心する。
イリーナがバスの構造に興味を持ったミネアに、バスの構造について説明をする。
ミネアは魔導士?だが、技術的なものに興味を持つ性格なのかもしれない。
そんな彼女をイリーナは、
イリーナ「運転室の方が面白いと思いますわ。良ければ説明をします。」
と言って、2人で運転席の方へ行ってしまう。
外の景色はラッセルハイムの町を抜け、快調にヒュンフェンへ向け、時速80㎞/hで走っている。
談話室に残ったのは、ヒシーニ、オスマンと私の3人。
アリシアはもう一つの談話室で着替えをしている。
オスマン「ところで国王。」
会話の途切れた沈黙に耐えられなくなったのか、オスマンが話しかけてくる。
オスマン「最近人通りの多い街道には、車で旅をする者が便利な設備を持った休憩所が広がりつつあるんですよ。」
と話す。
オスマン「設備として、大きな公衆トイレ、その土地の物や旅行に欠かせない商品を売っている店、
レストラン、宿屋、公衆浴場、雷の魔石充電魔導士スタンドなどです。
もちろん車を止めるスペースもたくさんありますよ。」
話を聞いていると、まんま、道の駅…いや、サービスエリアか?
オスマン「ちょうどヒュンフェンから南方街道に入ったところにありますよ。」
そのような会話から2時間後、ヒュンフェンの町を通り過ぎ、南方街道に入り1時間くらい経過したころ、
オスマン「まもなくです。」
と言い、部屋を出て運転手に異世界の道の駅で休憩するため、止めるよう告げる。
やがて、通りの左側に大きな駐車スペースを持った道の駅が現れた。
たいていは一般車やトラック、連接でないバスの止めるところはあるのだが、
このバスは水などのタンク車を入れると3連接バス、停車スペースがなく、仕方なく端の方に止める。
一同はバスから降り、まずはトイレへ向かう。
トイレは前世のサービスエリアのトイレと仕組みは同じだが、
男性の小は便器がなく壁に向かって行い、個室は、左右の個室とつながっている溝が掘られ、
そこにするらしい。
オスマンにあとで話を聞いたところ、ここの汚水は浄化池にスライムが飼われており、
分解をするらしい。
トイレの後、大きな桶に組まれている水をバケツですくい、手を洗う。
その後、店を見学する。
店には、サンドイッチ、スモールリバークラーケンを乾燥させた水筒に入っている水、
この土地名物のオレンジボアの肉とアカテンタケ、パープルプレーンタケ、イエローセンダケ等が売られています。
あとは、スチールロングソードやチェインメール、タワーシールドなどなど。
フルプレートも売られている。170㎝の身長のもので15万リール(前世の価値で15万円)、
この世界の新卒手取り給料ぐらいの価格。
オスマン「ここは新鮮なオレンジボアの肉が有名ですね。
今この季節だと、この肉にアカテンダケのソースをかけたソテーが名物ですね。」
ということで、みんなでレストランに向かい、この名物料理を食べる。
レストランは家族連れの車での旅行者やトラックで資材を運搬中の運転手など、
なかなかにぎわっている。
ミネア「車がここ最近急激に復旧してきたと思ったら、
このような設備ができているとは。便利になったものじゃ。」
アリシア「我が国も道路網が整備され、車がもっともっと増えると、
このような設備がたくさんできるのですね。」
いろいろ話しているうち、15分くらいで料理が一気に出てきた。
水のガラス瓶と黒いライ麦パンに300gくらいあるオレンジボアのアカテンタケソースがけ。
ナイフで切りながらミディアムに焼かれている肉をほおばると肉汁が一気に出てきて、
味に深みのあるキノコソース(これは赤ワインのアルコールを飛ばした独特の風味だ。)とあいまって、
非常においしい。
「ここはワインも名物じゃないのか?」
オスマン「国王、そうなんです。個々の赤ワイン、渋みはあるのですが、
舌の脇に濃厚な風味を持つ味が広がっていく感じと、独特な甘みがあるのです。」
「もしかして、このワイン、冬の寒い雪の降る時期まで残しておいたブドウを発行させ、
ワインを作っているのではないか?」
オスマン「国王、なぜわかるんですか?私の部下にヒュンフェン出身の者がおり、
ここのワインをもらった時にいつも説明を受けるのです。」
オスマンがこの辺に詳しいは部下だったか、と思いつつも、
このワインが前世でいうアイスワインと同じ製法で作られているのはわかった。
みんなあっという間に料理を平らげる。
食事の後、それぞれお店で買い物をする。
オスマンとヒシーニはオレンジボアの肉のハムとパープルプレーンタケを購入。
家族のお土産にするようだ。
アリシアはヒュンフェン産アカテンタケ、パープルプレーンタケ、イエローセンダケで作ったポーションセット、
イリーナはアイスワイン、私もこのアイスワインを購入した。
ただ、某コック長と魔法が得意なエルフと冒険者ギルド長に見つかることを考慮し、
24本と大量に買い込む。(1本2300リール、24本でディスカウントがあり、5万リールで購入。)
ワインは恰幅のいい店員がバスまで運んでくれた。
思い思いに買い物をそれぞれすまし、バスに戻り出発する。
お風呂に入ってみてもよかったのだが、イルンに戻るのに、夜遅くなってしまうので、
早々に出発する。
あとで給仕の1人に聞いたのだが、私たちが道の駅で休憩中に、このバスの雷の魔石を充電したそうだが、
何とそこの給電スタンドにA級魔導士がいて、1時間で80%も充電をしてしまったとのこと。
すごいことだが、やがて水力などで発電した電気で雷の魔石を充電する設備が広がれば、
ワザワザ魔導士が充電することなんてなくなるのかな、と思う。
そのような中、バスは一路イルンに向け、80㎞/hほどの速度で快調に走り続ける。
作者のうしねこです。
車が普及し、だれでも長距離の移動が快適にできるようになると、異世界でも道の駅の様な設備はできるようです。




