267.船の設計4‗船特有の設計機構について1
船特有の設計を考慮しなければいけない点について説明をすることになるが…。
267.船の設計4‗船特有の設計機構について1
船の要素材料とその加工方法を2週間みっちり説明した後、
ようやく船全体の設計についての説明に入る。
すでに大型自動車や航空機、高層建築物が設計されているが、
船は船で使用環境が異なる。
海の上を航行する最も大きい乗り物といえる。
だから、船特有の使用環境による特異部分の設計について説明を行っている。
「船も構造については有限要素法で構造計算をし、計算することには変わりないが、
電車や航空機とは違った、たわみや振動モードが加わる。
例えば、嵐の海では三角波というのが発生する。
通常波は1方向から発生し、その方向に対し鉛直に航行するのが一般的だが、
嵐の時、それぞれ異なる波が3方向からくる場合がる。
周波数の違う波が二つ重なると、振幅が大きくなるところが発生するが、
三角波は3倍の高さとなる。船でその波を越えようとしても、
3倍の高さとなった波の山の部分から谷の部分へ乗り越えた場合、
いや、落ちるという感覚か、その衝撃が船に加わる。
それは一回ではなく、波なので複数そういったシーンが発生すると、
船体が金属疲労を起こし、破損する場合がある。
極力船体について、そういった衝撃が複数来ても耐えられる設計が必要だが、
万が一、外板が破損した場合、船内での浸水を防ぐため、
貨物船ではいくつもの隔壁で区切った船倉を設け、
一気にすべて浸水しないよう、フェールセーフの設計が必要となる。
もっとも、こういった波が発生しそうなときは、真っ先に航路変更をしてもらいたいが。」
イリーナ「積み荷を奪おうとするクラーケンによって、時々船体がつぶされるということがありますが、
強度を出せるとなると、こういったクラーケンやグレートシャークからの攻撃にも耐えられそうですね。」
この世界、そういったことがあるのか。
「では、船体の強度向上と積み荷保護のため、上甲板に扉を付け、強度をさらに確保できる構造が良いですね。」
「あとは、基本雷の魔石から供給される電気モータでシャフトを回し、スクリューを動かす方式にするが、
雷の魔石を充電する小型のディーゼル発電機を設置したとした場合、できるだけ航行時の燃費を考慮する必要がある。
船首構造は流体力学、つまり進行方向に対する抗力をできるだけ小さくするため、
バルバス・バウという球状の構造とした方が良いですね。
例えるなら、飛行機で主翼の端部に折り曲げたでっぱりを設け、
翼先に発生するカルマン渦を抑え、翼の上下振動をすることによって発生する燃費低下を防ぐ機構と同じ様なものです。
」
アシモフ「ああ、あの機構か。」
「船首に人魚やペガサスの像を付けるよりも、実利があります。」
「あとは以前話をした、船を横方向に動かす、バウスラスターや舵機構ですね。」
イリーナ「船の操作については詳しくはありませんが、操船が楽になりそうですね。」
イリーナ「あとできれば、クラーケン等の襲来があった時の武器が必要ですね。」
「船を襲うのは、クラーケンやグレートシャークだけなのか?」
イリーナ「私はモンスターの専門家ではないので、あとでリアに聞いてほしいのですが、
シースライムというのやメタルシェルというのが厄介そうですね。
シースライムは酸を吐き出しますし、メタルシェルは金属が大好きで、船の錨にびっちりとくっつき、
歯で眷属を削り取っていきます。」
後で、詳しく調べた方がいいな。
前世にはダイオウイカはいたが、クラーケンやグレートシャーク、シースライム、
メタルシェルといった生き物はいなかったので。
次の日、想定しうる海のモンスター襲来について、どういったものがいるのか、
リアに聞くこととした。
作者のうしねこです。
海のモンスター対策をしなければならないことは想定外でした。




