261.イルン供給電力増強計画3‗大型天然ガス発電所の設計
急遽、イルン近郊の町であるフェーレン市に天然ガス発電所が建てられることになった。
261.イルン供給電力増強計画3‗大型天然ガス発電所の設計
フェーレン市訪問から2か月、試掘エンジニアからの報告があり、
天然ガスの埋蔵量は多く、試掘口からは多くのガスが噴出し続けているとのこと。
次の段階として、このガスを電気に変える天然ガス発電所と雷の魔石充電所の建設に移る。
いつものイルン設計事務所の会議室には、アシモフとイスナルド、ヒシーニ建設大臣、ディアンヌに集まってもらった。
ヒシーニ「この間、フェーレン市を訪問した時、いとこのオムカルに会われたとか。」
「ああ、彼は歓迎会の時、フェーレン市の代表として歓迎されたよ。ところで、ヒシーニもフェーレン市出身?」
ヒシーニ「はい、我々の一族はフェーレン市で元々は金物細工屋をしていました。
日用品金属加工や武器・防具の鍛冶をしていました。
でも、最近の急激な工業製品の進化に製品がついて行けず、主に工業製品の設計に舵を切っています。
その様な中で、私と彼、オムカルは政治屋になりました。」
「そうなのか。」
急激な産業の進化は、それまで一族で生業にしている仕事を下手をしたら奪ってしまうリスクが大きい事を改めて感じた。
こういった雇用対策も国として力を入れて推し進めなければ。
アシモフ「ところで、今日の会議の目的は天然ガスを使って電気を起こし、
雷の魔石を魔導士がいなくても充電するプラントを設計、建設すると聞いたのじゃが。」
「ああ、そうなんだ。」
「そもそも、天然ガスとはメタン(CH4 )という物質で、無色透明で臭いがなく、
常温では気体の物質で、火をつけると引火する性質がある。
気体の状態だと、体積が大きく運びずらいので、-165度位まで水の魔石で冷却して、
液体にして運ぶのだが、採掘したガスをそのまま発電施設に送る。
幸い、ここで採掘される天然ガスは硫黄や水銀、硫化水素ほぼなく、
二酸化炭素の混入も少ない。
ということは、アミン溶液や活性炭の分離工程も必要ないレベルということが言える。
(リウマポリの原油井戸からとれる天然ガスよりも、工程が少なく、コスパはよさそうだ。)」
「まずは集めた天然ガスをノズルで燃焼室で燃焼させ、水を温める。
水を温めると蒸気になり、気体となる。そうなると体積が大きくなり、
気体分子の持つ運動エネルギー量も増える。
その蒸気を使い、タービンを回す。使った蒸気は復水層で冷却し、液体化し循環させる。
この間作った、小型の試作機と原理は全く同じだ。」
アシモフ「早速設計図を描くとしよう。蒸気を吹き付けるタービンの形状が、
いかに効率が良くなるか、腕の見せどころじゃな。
後は、タービンを回して、得られた交流の電流と電圧をいかに安定化させるか、じゃな。」
以前の世界は発電した電力を溜めることに技術力が必要で、発電所の出力を調整することにより、
直接使用量に対し対応させていたな。
でもこの世界は雷の魔石という、チートに近いものがある。
中には、野球ボールサイズの魔石で1000MWh以上充電できるものもある。
「この発電所の隣に雷の魔石充電所を作ろうと思う。目的は不安定な電気使用量を雷の魔石を使って、
コントロールしようと思う。」
前世は、様水力発電というものがあり、傾斜の上と下で水を行き来させることにより、
(電気使用量の少ない夜間にポンプで上の揚水層に水をくみ上げ、昼の使用量の大きい時に、
水を下の揚水層に流し発電助力する。)
電力量の調整をしていたが、この世界では必要ないな。
「基本的には、タービンで発電した電気を変圧器を通し、外部に送電すると共に、
整流子を通し、並列につないだ雷の魔石充放電装置につなぐ。
この雷の魔石への電力量は、低抵抗時が大きい電流サイズの可変抵抗器を通し、
町に流れる電力量をコントロールするというものだ。」
アシモフが装置の工程図と電流計算を始めている。
ディアンヌ「最近の研究だと、雷の魔石、何度も充放電を繰り返すと脆くなり、
ひびが入ることが分かり、
大体Bランクの雷の魔石で、120万回で蓄えられる電力量が半減し、ひびが入り始めるわ。」
アシモフ「そうか、では雷の魔石は容易に交換できる構造としよう。」
ディアンヌ「国王、雷の魔石は電力を充放電することによりコントロールする機構だけでなく、
外部から持ち込まれた、特に大きなサイズの雷の魔石を充電したり、
小さな雷の魔石を大量に充電できる拠点も必要よ。
最近、雷の魔石の流通量が急激に増えすぎて、そういった設備は必要。」
「うむ、考えることにしよう。」
その後、フェーレン市の発電所からイルンの町への送電線についても、
急遽建設しなければならないインフラの中に加えられた。
作者のうしねこです。
急激な中世からの産業革命と増大するインフラに対し、
運よく近郊の町から、発電に対し十分な量の天然ガスが出ることが分かり、
発電所をぞうせつすることになった。




