259.イルン供給電力増強計画1‗天然ガス採掘
イルンの町は急拡大し、インフラが追いつかず、電力不足に陥っていた。
国王は課題解決に乗り出した。
259.イルン供給電力増強計画1‗天然ガス採掘
ここ最近、イルン市が急速に発展していき、郊外に市街地が広がったせいか、
電力の供給力に余裕がなくなってきた。
イルンはブルツブルグ川やその支流の水力発電、モンリュソンの地熱発電が主だが、
夏場に頻繁に基準電圧の240Vの電圧が下がったり、
交流周波数が乱れたりするようになっている。
そのたびに輪番停電が発生している。
「前世で大きな地震があった時、原子力発電がすべて停止され、供給電力量が下がり、
輪番停電を実施したが、それ以来だな。まさか、この世界でも同じことになるとは。」
この世界ではウランやプルトニウムなどはまだ見つかっていない。
まだごく少量ではあるが、隣のギエフ民国から原油や冷却した天然ガスの輸入が始まっているが、
量が限られている。
その様な中、イルンの北方フェーレン郊外沼地から大量のガスが出ているとの話を聞いた。
周辺の住民の話によると、沼地脇のガスが延々と出ている穴で燃える炎がなかなか消えず、
もう20年間燃え続けているとの話を聞いた。
この町からイルンまで100㎞ほど、もし大量の天然ガスを採取でき、
ガスで発電できれば、1つの大きな電力供給地となる。
早速、私とアシモフ、パウラ旧電気営団長(現リール電力サービス株式会社社長)、イスナルドの4名と技術補佐員やSP、
総勢24名で調査に向かう。
あのホスナブルックとの戦争以来北方方面への鉄道建設を急いでいるが、
まだ開業まで3か月かかるとのこと。
ということで、イルンからフェーレンまでバスで2時間ほどかけ、向かうこととなった。
イルンから15㎞ほど北方街道を走ると完全な郊外となるが、
この街道の隣は鉄道工事の最中で、もうすでに軌道が設置され、架線も張られている。
街道周辺は鉄道だけでなく、住宅の造成が急ピッチで進んでいる。
イルンを出て最初の町であるグラートベックはイルンから24㎞ほどであるが、
もう数年すると、イルンとグラートベックが市街地でつながるような開発の勢いに、
急激な電力消費量も理解できる。
『インフラの増強を急がねば。』
グラートベックの町を通りすぎると、畑や雑木林が広がり、まだここまで開発は進んでいない。
その様な中、ドルステンの町も通り過ぎ、ようやくフェーレンの町の建物がちらほらと現れる様になった。
政府のバスは北方街道を曲がり、フェーレン駅建設地を越え、3階建ての市庁舎の脇に止まった。
バスを降りると、市の職員や一般市民、そして市長が出迎えていた。
「フェーレン市長のヒシーニです。」
ん?どこかで見たような?誰かに似ているような?
その様な空気を察したのか、
「私のいとこは建設大臣をしています。彼と紛らわしいので、オムカルと呼んでください。
苗字も名前も彼と一緒で、ミドルネームだけが違います。このオムカルはミドルネームです。」
そうなのか。
オムカル「立ち話も何なので、市庁舎の2階に歓迎会場を準備しています。
といっても、会議室ですけどね。」
市長と助役に導かれ、会議室に向かう。
この市庁舎、結構古いゴシック調の石造りの建物だが、清掃は行き届いている。
入り口ホールのステンドグラスが立派だ。
オムカル「どうです?素晴らしいでしょう。今から500年前の修道士が1人で作り上げたものです。
実はこの市役所の一部は元教会だったんですよ。」
なるほど、入り口を入って右側は細長いいかにも礼拝堂という部屋が続いている。
オムカル「ささ、こちらです。」
入り口正面の階段を2Fに上がり、すぐのところにある扉を入ると、そこは歓迎会場だった。」
オムカル「ここは教区長や大司教、多くの司教が会議を行っていた場所なんですよ。」
と案内をしてくれる。
部屋の柱のところどころに十字架のオブジェがあり、正面の窓はステンドグラスで、
白いテーブルクロスはステンドグラスに照らされた色模様が写り、とてもきれいだった。
すでに、市役所のメンバーや商工会議所、各ギルドのメンバーは部屋に集まっており、
シーンと静まり返っていたが、私が部屋に入ると拍手で迎えられた。
テーブルの上には、水や100%リンゴとグレープのジュースが入った瓶が置かれ、クッキーも置かれている。
オムカル「長旅疲れましたでしょ。どうぞ。」
といって、オムカルはジュースとクッキーを進めてくれる。
この世界では、前世の欧州で見られたような、
お菓子にジュースの会議スタイルそのままのようだ。
遠慮なくグレープジュースをとり、クッキーをつまむ。
その様な中、歓迎式典はスタートした。
作者のうしねこです。
国王は前世の知識を使って、イルン市のインフラ問題を天然ガス採掘と発電所建設という形で、乗り切ろうとしている様です。




