21.電気とモータと路面電車の原理
<新規技術>
電気と磁石、磁界、コイル、モータ技術、ギアとギアボックス、路面電車車体と台車、走行装置、
21.電気とモータと路面電車の原理
翌日。
いつものミュースリーの朝食の後、昨日の教育改革の話をここ城に常勤している大臣に話をしてみた。
学術指南所…学校と呼ぼう、みんなからはからはおおむね「了解しました」ということだが、
「芸術(美術音楽)」を中学校に加えてはどうか?とか、親が学校に通わせるのを了解するのか?とか、
いろいろな意見が出てきた。
あとは、給食を提案した。
この世界、貧富の差によって、子供の栄養状態に偏りがあり、成長期の子供に対する栄養改善の意味もある。
各食料を扱う営団に、学校に食料を提供できないか、確認をしよう。
シモーネ科学技術大臣とヒシーニ建設大臣には、試作鉄筋建物の成功を受け、学校も地震に強い鉄筋製とすること、
小学校と中学校は同じ建物で以下の部屋を確保することを提案した。
1から8年生のクラス、
運動場、工作室、医学室(保健介護室併設)、農学室、錬金魔法室、調理実習室、芸術室(芸術の教科、採用した。)、
冒険室、教会室、炊事場と教員室、トイレ。
校庭は運動場のほかに、農業実践畑、実践訓練場とする。
城下町でまずは12か所の学校建設を目指そう。
それに対し教師の募集も行う。
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さて、シモーネを連れて製鉄工所に行こう。
製鉄工所につくと、いつもの所長室へ。
所長室には黒板が設置された。
私がよく押し掛けるからか?
「今日はモータというものの相談に来た。」
といい、先日購入した雷の魔石とスクロールを出す。
「この魔石は知っていると思うが、このビリっと来る感覚、電気というもので、
何かを動かしたりすることができる。この電気から何かを動かす装置をモータという。」
「このモータ、動かすだけでなく、外部から力で回転をさせると、電気に変換される。」
構造を説明する。
「まず、鉄の棒にステータという絶縁メッキされた銅線を3か所に巻くホルダを用意する。
ホルダは鉄板を打ち抜き、重ねていく。
銅線径が同じ場合、このホルダにいかに長く銅線を巻き付ける(コイル)かが、大きな力に変換することができる。
ホルダの銅線ホルダは回転する部分なので、
ブラシという回転しながら電気を供給する機構によって回転導体に電気を供給する。
ブラシの回転体接触面が常に動き続けるので、摩擦熱というものが発生する。
熱は金属に対し伝わりやすいという特性があるから、発熱した熱を外に逃がす構造とすると、
熱が上がりにくい。
あとロータというところに磁石から加工した磁石というものを固定する。
実は磁石から目に見えない磁界が出ていて、電気が流れる銅線ホルダがいかにたくさん磁界に接触するかが、
モータから発生する電気の量に影響する。
磁石を砂鉄に落とすと、磁界がよくわかる。」
「(フレミングの左手の法則と言って(この部分は説明しない))電気の流れる方向と磁界の方向、力の方向は関係性がある。
左手の指で説明すると、親指は力が強いので、力の方向。磁界は人差し指、電気の流れる方向は中指。」
黒板に絵をかいて説明をする。
「この電気は動力を動かすだけでなく、光に変えたり、熱に変えたりする。
城の鉄筋建物の部屋のトーチも電気で明るくなっている。」
コスパの悪い雷の魔石ではなく、水力発電でおこした電気を使用したい。
「細い銅線にたくさんの電気を流すと、発熱して焼き切れ、危険だから、
電気の量によって線の太さを変えるんだ。
原理はこの間説明した、水道のパイプと同じ。たくさんの水を流す場合、
パイプを太くする。」
「あと、電気テスタというものを開発してほしいんだ。電気の量を測る。
このテスタ、モータの原理を利用していて、コイルに巻き付ける銅線を少なくして、
回転力が大きくなりすぎないよう、ばねで回転力抑制制御する。
電気がたくさん上がれると、コイルにたくさん電気が流れ、力が大きくなり、すぐに針が振り切れる。
力のバランスをとるわけだ。」
「針の振り切れる右方向の回転力を左方向のばね力で調整するんですね。
時計の原理と似ているところがありますね。」
「そうだ。」
「このモータ、先日話した路面電車にも使える。
モータの回転力は実は弱い。
ギアという機構で回転スピードは落ちるが、回転力を増やすことができるんだ。
」
ギアの絵を描く。
「丸い物体に凸凹がたくさんついている。
これをギアの歯といい、一周のギアの歯の量が小さいものから大きいものに伝達するとき、
力は強くなる。
その逆は力は弱くなるが、回転スピードが上がる。
ギアを複数組み合わせることができ、これをギアボックスという。
馬車の車体より大きい路面電車の車体を動かすとき、力をできるだけ大きくする。
ギアはできるだけ硬くて、衝撃に強い材料がいいな。
運転中、ギアボックスのギアの組み合わせを変えることにより、低速で力が強い走行モード、
高速で力の弱い走行モード、選択することができる。
走行中、回転中にギアを交換すると衝撃でギアが故障するから、クラッチ機構によって、
これから動かすギアの回転力を徐々に与えてから、ギアを交換する機構とする。
前に進むほか、後ろに進むには、モータに流れる電気の方向を変える。
いきなり変えるのではなく、電気の流れを少し止めてから、逆に流す。
モータの電気をすぐにOFFにしても、電気が流れ続けている場合があるんだ。
電気の流れている逆の方向に電気を流すと大電流が発生することがある。」
「複雑ですね。」
難解な顔を見せるが、何とか理解している。シモーヌとイリーナ、頭がいい。
「路面電車の車体だが、鉄骨に鉄板を貼り付ける構造とする。
地面に立っている建物と違い、走行でいろいろな方向から力が入ってくる。
X(地面に対し進行方向横方向),Y(地面に対し進行方向縦方向),Z(地面に対し上下方向)の力を考慮して、
横の鉄骨と縦の鉄骨のつなぎ目には斜めに梁を入れる。
電車が揺れることから、揺れに対する破壊力を打ち消す、弾力性のある金属材料がいいな。
この構造で金属の大きな箱を作る。ガラスはブニ(Hゴム)でとりつける。
連結器の構造も説明する。てこの原理を利用して、連結する自動連結器だ。
量数をつないだ場合の電線配管(ジャンパ線)についても説明する。
台車と車体は外せる構造とする。」
「台車は車輪とブレーキ機構、ばね、軸受け等がある。」
元国営鉄道の青い通勤車で、台車にモータを直接取り付ける実験をしていたようだが、結局うまくいかなかったようだ。
一般的なものにしよう。
「車体にあるモータから動力を台車に伝える方式として、軸接手という機構を使う。
X,Y,Z方向の力が加わっても、回転力は伝える。」
黒板にロボットアームの様な軸に、伝達機構球を通し、つながる絵を描く。」
私が前にいた日本では、釣りかけ駆動があったようだが、振動などが大きく、
カルダン駆動になったようだ。
これを採用しよう。
「あとブレーキ機構だが、車輪にブレーキシュー(ディスクブレーキ)を押し付ける機構(機械ブレーキ)と、電気ブレーキの2系統とする。
ブレーキが利かないというのは危険だからである。」
「電気ブレーキは、先ほど、モータが動いているとき発電すると伝えたが、ブレーキで発電した電気を抵抗などで、無理やり使うと、
ブレーキ力に変わる。発電した電気を、ほかの電車で使うということもできるが、ほかの電車が、モータを電気を使い回していなければ、
ブレーキが利かない。」
初めは抵抗ブレーキにする。
「機械ブレーキはワイヤ式にする。ワイヤの力をギアボックスで増大させ、ディスクブレーキを車輪に押し付ける。」
油圧パワーステアリングがいいが、まずは、機構が単純なこの方式とする。
これらブレーキとモータの電気を制御する運転台は車両の前後方向とする。
レバーが4つあり、アクセルとブレーキである。
アクセルは電気を制御する力行レバー、
ブレーキは通常電気ブレーキだが、
ブレーキを多用すると、抵抗器が発熱する。
そのため、機械ブレーキレバーもある。
あと順行/逆行レバー、クラッチペダル。」
順番に自動化したい。
車内は、木の化粧板と電灯、つり革、長椅子。
長椅子は鉄板製で、電気ヒータのほかに中に走行時の電気ブレーキ抵抗器を入れ、
ブレーキの発熱を利用する。夏場は熱通気口を遮断。
路面電車を走らすために、パンタグラフと架線、絶縁碍子の説明をする。
電車は魔石送電所から提供された架線電気で走るが、非常用に、電車内に雷の魔石で走る電気系統も用意する。
ゆくゆくは水力発電で走らせたい。
あとはレール。標準機採用。レールの断面図を描き、40KgNレールの説明をした。
鉄筋枕木で固定し、コンクリートで路面凹凸をなくす路面軌道である。
少しいろいろと話をしたが、この試作路面電車車両を作ってもらう。
シモーヌとイリーナ、疲れたようなので、この辺にしとく。
作者のうしねこです。
今回は少し技術的なお話。
電気から、モータの動く原理、そして路面電車の構造まで。
シモーヌとイリーナ、何とか説明についてこれた様子。
それよりも、国王の謎の知識に脱帽状態。




