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202.北部防衛計画5‗国境を超える

トラヴィス司祭、やっと国境を越える。

202.北部防衛計画5‗国境を超える


トラヴィス司祭は国境が閉鎖されていることを知り、

作戦を練るため、一度町に戻ることにした。


国境から町の中心部まで1時間半ぐらいの距離のところ、歩いて戻ることにした。

国境を越えられないと知った商人や運送を商売にしている者、

冒険者なども事情を知り、ヒースの町へと引き換えしていく。


前を歩く冒険者から国境を超える方法についての話が聞こえてくる。


冒険者A「この国は近々戦争準備のため国境の出入りを制限するという話があったが、

まさかこんなに早く閉鎖になるとは。」


冒険者B「荷物運送クエストでイルンまで運ばなければならないものがあるのに。」


冒険者C「荷主の荷物を取り上げられなかっただけでも、まだましだ。」


冒険者A「クエストをキャンセルするか?」


冒険者C「一度ヒースのギルドに相談しよう。」


このような冒険者の会話を聞きながら、やっとの思いでヒースの町の宿屋につき、

部屋を確保する。国境を超えるための情報を集めなければ。


部屋でコートを脱ぎ、少し休んだ後、宿の一回の酒場に向かう。

外はすっかりと暗くなっており、ランプが酒場の唯一の明かりとなっている。


酒場は10席ほどのテーブル席とカウンター席があり、カウンターの端の席に座る。

席に座るやいなや、ウエイトレスが注文を取りに来る。

厚切りベーコンのポトフと魚のフライ、エールを注文する。

ここまでほとんど馬車の中でまともな食事がとれていない。

少しの間、この国最後となる食事を楽しもうというわけだ。

脱出できればの話ではあるが。


ん?私の後ろのテーブル席に座っているのは先程の冒険者である。


会話が聞こえる。


冒険者C「…当分国境を越えられそうにないということか。」


冒険者A「でも馬車の修理と蹄鉄屋を営んでいるガルーダ鍛冶交通が、

トンネルを持っているという話じゃないか。」


冒険者B「でも通行料が高すぎるよ。」


冒険者A「今回の運送業務を請け負ったのは、クエストを理由にこの国を脱出するためだ。

この国は戦争にまっしぐらだ、いつ冒険者が徴兵されるかわからない。

この国の国王は冒険者ギルド協定も破棄するような政令を出し、兵力を確保しようとしてくるはずだ。」


冒険者C「ダンジョンでモンスターと戦うのはいいが、同じ人間同士と戦わなければならないのは嫌だ。」


冒険者B「半年分の稼ぎを費やしてもこの国を脱出しなければならないということか。」


冒険者A「そうだ。分かったな。明日国境沿いの通りにあるガルーダ交通に向かうぞ。」


このくらいの冒険者のは半年分の年収、1人だから2か月分か。

トラヴィス司祭は手に持っているアダマンタイト製ロザリオを眺めている。


神は許してくれるだろうか?


食事を終えた後部屋に戻り、すぐに眠ることにした。


翌日早朝、教会の早朝の祈りのため、早起きする癖がついており、

早めに起き、窓の外をのぞくと、宿にはいていく兵士の姿がみえる。


慌てて、コートと荷物をとり、部屋を出る。


「…お待ちください、まだお客様の中には寝ている者もおります。」

「国の意向だ。本日泊っている客の中に、犯罪者がいないか確認をする。」


トラヴィス司祭は慌てて、ロビーに続く階段とは反対に廊下を進む。


廊下を曲がった突き当りの部屋のドアのカギ穴を除くと倉庫で、

この部屋に慌ててはいる。


中は、ほこりがたまった小さな倉庫で、小さな窓があり、下を見ると、

人のいない裏通りになっている。


倉庫においてあるカーテンをつなぎ、柱に縛り、窓から裏通りに降りる。

その場を急いで離れる。


さてどうしたものか?


まだ朝の早い時間で、どこで時間をつぶそうか?

町の中を目立たぬ様歩いていると、食事を出す小さな店が開いており、

ここで少し時間を過ごす。


食事をした後、町の道具屋に向かう。


道具屋に入るとロザリオを取り出し、つぶやく。

一言「神よゆるしたまえ。多くの人の命を救うためです。」


商人の恰好をしているが、司祭である。

その司祭がロザリオを売るというのは、

心の中が神を裏切ることへの罪悪感でいっぱいになる。


ついに決心がついた。

「これを売りたいのだが。」


ロザリオは冒険者の半年分の金額で売れた。

この国の通貨を得るのはこれで最後になるのか?


ロザリオを売却した後、『ガルーダ鍛冶交通』に向かう。

国境の砦方向に歩いていき、砦入り口の前の通りを左に曲がる。

そして30分くらい歩いたところにガルーダ鍛冶交通はあった。


敷地の中に入る。

中は修理中の馬車や、解体した馬車の部品、蹄鉄が置かれている。


蹄鉄を打っていた中年のドワーフがトラヴィス司祭に気づき、

「何かようかの?」

と問いかけてくる。


「冒険者ギルドで聞いたのだが…。」


ドワーフは言葉を遮り、

「またか。」

という。


「頼む、1人だ。」

カバンからお金を少しだし、ちらっと見せる。


ドワーフは手を出し、お金の束を渡す。。

「こっちじゃ。」


修理した馬車の横を通り抜け、小さな小屋に連れていかれる。

小屋のドアを開け、床に置いてある床材をどけると、

人ひとりがやっと降りれる地下への階段が現れる。


「ここを降り、道なりにまっすぐ行くんだ。

儂はここまでじゃ。」


「ありがとう、助かった。」


とドワーフに言い、松明を渡され、降りていく。

階段を降りた後、人ひとりがようやく立って歩ける通路が延々と伸びており、

所々に土壁が崩れぬよう、梁が渡されている。


20分くらい歩いただろうか。松明でぼんやりと照らし出されている通路の先に、

ようやく、上り階段が現れる。


階段を上っていると、声をかけられる。


「こっちだ。ようこそリール国へ。」


階段を登りきると納屋の中?である。

声の主は納屋で馬に藁を与えている最中で、

藁を置き、こちらを向く。50代くらいのひげを生やした男性?である。


「ここはもうリール国だ。安心してもらって構わない。

イグロスの町の中心部はこの家を出て、通りを東に歩き、

次の十字路を南に歩いて行ってくれ。」


納屋から出て、50代の男性の農家?の敷地を出ると、郊外の住宅街が広がる。

通りを西に進み、十字路の北側を見ると、国境の壁である。


ついにリール国に入ることができた!、と実感する。


その後、町の中心でお金を両替し、駅馬車でイルンに向かう。

ところで、この馬のついていない馬車で鉄の箱が動いているのだが、

これも駅馬車なのか?

作者のうしねこです。

トラヴィス司祭、ようやく国境を越えられた様ですが、

馬のつながれていない馬車に驚いている様です。

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