199.VTRモニタシステムの研究
アシモフとナグレアが苦労して開発して、アナログカラービデオシステムを完成させるのだが。
199.VTRモニタシステムの研究
設計事務所長室で、アシモフとナグレアは悩んでいた。
ホスナブルック王国の状況を偵察するのに映像を録画し、
その状況を確認したいと国王は話し、設計図をみせてもらっていたのだが、
装置は精密で部品の加工技術がむずかしい。
まずは記憶媒体であるが、8mm幅の時期フィルムに映像を残す、
フィルムは両面に映像と音声を分けて記憶する。
音声のテープへの記憶技術は開発したが、映像をどう残すか?である。
国王の話によると、画像の信号は赤、緑、青(RGB)を重ねた組み合わせで表現することができ、
電子銃から発射された3色の電子ビームをコイルで作られた偏向ヨークを通し、
位置を振り分ける。
振り分けた電子ビームはシャドウマスクという各RGBの光を通すスリットを通し、
蛍光体が塗られた湾曲したガラス面にあてる。
順々にビームを照射し、複数のドットで時間差でビームの色の強さを変えることによって、
映像となるらしい。
RGBの電子ビームを作り出す、走査回路や電子ビーム自体を作り出す、
高電圧発生トランスも必要とのこと。
机の上には国王が書いたモニタ、ビデオレコーダ、テープ,ビデオカメラの設計図がある。
アシモフ「これがモニタというもので、今話した構造原理で映像を映すらしいのじゃが。」
ナグレア「でも映像を映すためにテープからRGBの電子ビームの強さ
(波形電圧で表現された)を読み取る装置が必要だ。」
アシモフ「ここは依然開発した録音テープとレコーダの技術原理を流用すればよい。」
アシモフ「音声信号はモノラルだと1チャンネルの波形、
映像はRGBの3チャンネルの波形を記憶できればよい。
ただ映像について、色(C)と輝度(Y)を複合して記憶する方法があり、
ビデオカメラでYC複合して、モニタでYC分離すれば、効率が良くなるらしいのじゃ。」
アシモフは映像の規格を黒板に書きだす。
ナグレア「モニタとビデオレコーダ、テープの構造はわかった。問題はビデオカメラじゃな。」
アシモフは国王から聞いたビデオカメラの構造を詳しく、黒板に書く。
まず、レンズを用いて固体撮像素子の受光面にレンズから入ってきた映像を取り込む。
取り込んだ2次元の映像を、まず1点ずつドットで取り込み(走査)、
その取り込んだ1行の線(走査線)を垂直方向に取り込んでいき、1枚の静止画として画像を得る。
この作業において、各ドットの輝度を電圧波形の1つ1つの電位の高さで取り込んでいく。
この取り込んでいった位置も信号として残す。水平方向信号と垂直方向信号をそれぞれ、
水平同期信号と垂直同期信号というらしい。
色信号などもまとめ、コンポジット映像信号という映像を表すチャンネル信号を精製するとのこと。
電圧波形情報にすれば、先程の録音テープとレコーダの技術原理で、テープに記憶する。
アシモフ「…ということらしい。」
一通り、国王から聞いたビデオカメラの構造の説明を終える。
アシモフ「電圧の情報として、映像や音声を返還するというのは便利じゃぞ。
テープに記憶のほか、電波によって、放送をすることもできる。」
アシモフ「コンポジット映像信号化するビデオ回路も難しいのじゃ。
増幅という回路も真空管で作らなければならないので、ビデオカメラが大きくなる。
今、開発をしているICでオペアンプというICができれば、かなり小さくできるのじゃが。」
アシモフはビデオカメラからビデオデッキ、モニタの回路図を描いていく。
ナグレア「モニタの回路も危険ですね、高圧ですから。
走査回路のコンデンサの容量と温度変化による容量が変わるところも設計のポイントですね。」
アシモフ「ああ、回路だけではない、ビデオカメラとモニタのガラス加工も大変じゃ。
微細な砂で研磨し、設計通りの曲率を出していかなけれなならん。」
2人はこの日から、1か月設計事務所にこもり、
ビデオカメラとビデオレコーダ、テープ、モニタの試作に取り組むことになった。
3か月後、ようやく試作が完成し、関係者にお披露目することとなる。
オリビエがこの試作カメラをホスナブルック王国に持ち込み、
記録された映像は誰もが想像を超える映像であった。
作者のうしねこです。ホスナブルック王国の状況を偵察するために、
急遽アナログカラービデオシステムを開発することになったアシモフとナグレア。
今後軍事用途で大いに役立つことになる。…もちろん民生用途でも。




