150. 半導体の製造プロセスをみんなで考える
<半導体製造プロセス>
(1)石英を還元して、高純度の金属シリコンを作るプロセス
(2)多結晶シリコンロッドを生成するプロセス
(3)単結晶のインゴットを生成するプロセス
(4)シリコンウェハーを切り出し、端面を切削するプロセス(人工ダイヤモンドを使った切削機作成)
(5)シリコンウェハー切削面を人工ダイヤモンドでコーティングするプロセス
(6)表面中研磨工程
(7)通電率に支障の出る酸素を取り除くプロセス
(8)端面を研磨するプロセス
(9)表面精研磨工程
(10)洗浄プロセス
(11)回路パターンの焼き付けプロセス
(12)焼き付けたパターンでいらない部分を除去するプロセス
(13)ウェハーのパッド検査プロセス
(14)ウェハーから半導体チップを切り抜くプロセス(リードフレームの製造プロセス)
(15)セラミックで切断したウェアーパッドとリード、ワイヤーボンディング部分を樹脂で封入するプロセス
150. 半導体の製造プロセスをみんなで考える
モンリュソンから戻ってきて3日後、会議室にはシモーネ、イリーナ、アシモフ、イスナルド、
ディアンヌに集まってもらった。
あと、モンリュソン科学技術・工業振興課のシミョノヴァが参加している。
というのは、カルノフ市長、翌日に科学技術・工業振興課を立ち上げ、
研究員としてシミョノヴァがイルンに長期滞在をするとのこと。
対応が早い。なんとエルフとドワーフのハーフの女性とのこと。
会議を始める前にシミョノヴァの自己紹介が行われる。
シミョノヴァ「モンリュソンから派遣されてきました、科学技術・工業振興課の研究員、
シミョノヴァです。」
みんな、エルフとドワーフのハーフというところに興味津々である。
エルフとドワーフ、それぞれ人間とのハーフはいるが、
エルフとドワーフのハーフとは。
背が低めで骨格が良いが、耳は長い。
でも大ぴらにこのことについて、質問はできない。
「さて、半導体の製造プロセスについて、話をしたいと思う。」
そしてプロセスについて説明する。
まずは石英を還元して、高純度の金属シリコンを作るプロセス。
そして、塩素ガスや水素ガスを使い、モノシランやトリクロロシラン等の生成物でき、
トリクロロシランから化学蒸着により、単体のシリコンを析出させれば、多結晶シリコンロッドができる。
化学蒸着はまだプラズマの技術がないため、熱により化学蒸着を制御する方式を採用する。
真空管にも使われるフィラメントを高温化して、トリクロロシランを分離させ、
最終的に単体シリコンを繰り返し析出させ、多結晶シリコン化するのである。
これで第一段階の多結晶シリコンができる。
この後、多結晶シリコンを粉砕洗浄し、単結晶のインゴットを生成する。
その方法は、砕いた多結晶シリコンを石英るつぼに入れ、
ホウ素(P型)、リン(N型)をそれぞれ不純物として電気が流れる様に入れる。
それを不活性ガスを入れた炉内で熱すると、多結晶シリコンはやがて溶融する。
その後、高温に耐えられる糸で回転させながら、上に持ち上げる。
この糸であるが、アシモフは「ジャイアントスパイダーの糸が良い」とのこと。
引き上げる速度や溶融した不純物入り多結晶シリコンによって、
結晶径が変わってくる。
石英るつぼ内の温度を調整し、ジャイアントスパイダーの糸引き上げ速度を調整する装置をまずは作ってほしい。
この単結晶インゴットは400㎏位になる。
アシモフ「ジャイアントスパイダーの糸は500度位で1tにも耐えられるから、可能じゃと思う。」
「あとは、この単結晶インゴット生成中はできるだけ、酸素を排除したい。酸化し微粒子となり、
炉に付着するためだ。ということで酸化ケイ素ガスを取り去る機構も必要となる。」
アシモフ「いろいろと付加装置が必要じゃな。」
「あとは酸化ケイ素ガスはヒータ素材に付着すると二酸化炭素や危険な一酸化炭素が出るので、
この対策も必要。」
イスナルド「化学的に除去する機構が必要ですね。」
「アルゴンガスで除去してもいい。」
「これで、第2関門である、ケイ素の単結晶インゴットができる。」
「この次は、このインゴットを薄く切断して、シリコンウェハーというものを作る。
シリコンウェハーとは、半導体を生成する核となるもので、
ハムを真ん中の大きさが均一しているところで切り分けるイメージしてもらえれば分かると思う。」
「つまりは径の付近いるな両端は切り捨てて、真ん中を薄く、平行に、切っていくんだ。
だいたい径は25㎝から50㎝くらい。」
次のハードルはこの『切る道具の制作』で、樹脂にダイヤモンドを埋め込んだ刃で切削する。
ダイヤモンドはこの世で最も固い素材、だからダイヤモンドを使うんだが、
ダイヤモンドは当たり前だが、高い。
ということで、この様な工業用ならば、人工的に作ることができる。
その言葉に一番反応したのは、錬金術に人生(エルフ生?)をかけてきた、錬金術の鬼、ディアンヌ。
ディアンヌ「えーーーー、おしえておしえて!!これまでずーと研究してきたのに、
糸口さえつかめなかったのよ!!」
「分かったから、落ち着いて!
これは多結晶シリコンロッドの生成で説明した、化学蒸着法を使い作るんだ。
高温高圧をかけて作る方法もあるんだが、安全に作れるこちらの方法がいい。
ちなみに自然界で作られるダイアモンドは、炭素が高温高圧化の環境下で圧縮され、
炭素原子の共有結合構造が、正四面体の中心に1つの炭素原子があることにより、
歪みのない角度での共有結合となり、物質として最も硬いものとなる。
この構造を化学蒸着法を使い作るんだ。」
ディアンヌ「錬金術は魔法の知識だけではだめ、ということね。
化学を学ばないと。」
「その方が、いろいろな材料を作る上で近道となる。」
「さて、炭化水素の混合気体による化学蒸着法だが、
チャンバー内の混合気体の種類とその比率について、
生成基板の表面を傷つけ、800度の環境を作り出す。」
ディアンヌ「800度って、高温じゃない。」
「高温高圧で作る方法はこれよりも高い温度でないと、作れないんだ。」
「合成ガスは炭素を含むメタン、水素の混合気体で、比率は1:99。
水素の目的はダイヤモンドの共有結合構造にならなかったものを除去するために使う。
そして、不対電子をもつ原子やイオンに熱フィラメントによるエネルギーを与えて,
より高いエネルギーをもつ定常状態(ダイヤモンドの炭素原子の共有結合構造)にする。」
「そうすると、数nmという大きさのダイヤモンド粉末ができる。
この時、不純物も混ざるため、250度弱の熱した硝酸で1日溶融する。」
「あとはこれを樹脂ブレードに混ぜ、シリコンウェハーをカットする装置を作るわけだ。」
ディアンヌ「このダイアモンド生成、私にやらせてーーー。」
「…わかった。」
大丈夫だろうか?
「話は戻って、
カットされたシリコンウェハーの切断面を、またこの人工で作られたダイヤモンド粉末で保護する。
それは、切削面に付く傷を保護するためなんだ。
そして、切削端面を砥石で面取りする。
ここでも人工ダイヤモンドの砥石を使う。」
「この後、このウエハーに、ミスリルのキャリアを挟み、炭化ケイ素の粉末を含んだラップ液を注入し、
さらに凹凸がない様、研磨する。
ここで、炭化ケイ素とは、炭素とケイ素が1:1 の化合物で、
硬度、耐熱性、化学的安定性に優れる特性がある。
炭化ケイ素の粉末生成炉について、黒鉛の粉、粉末珪石で生成し、
黒鉛の粉の層に電圧をかけ、発熱させる。そうすると、黒鉛層の周りに炭化ケイ素の層ができる。
こうして炭化ケイ素の粉末を作るんだ。」
「ここまでの過程を踏んでもウエハー表面の凹凸が残るので、化学研磨でさらに平らにする。
具体的には水酸化カリウムと水酸化ナトリウムを純水で薄めたものを使う。」
「その後、単結晶インゴット生成時に混ざった酸素原子を取り除く必要がある。
これを取り除かないと、半導体の通電率が悪くなる。具体的にどうするかは、
不活性ガス中で700℃で1時間程加熱する。」
「この後はもう一度、化学機械的研磨という方法で微細研磨をウェハー切断面と端面に行う。
この装置は、ウェハーと研磨パッドの間にダイアモンド粒子が混入した液体をたらし、
研磨パッドをスライドさせる。」
「そして、洗浄。
水5:過酸化水素1:水酸化アンモニウム1:のアルカリ性混合液で洗浄し、
水5:塩酸1:過酸化水素1の酸性混合液で再度洗浄する。」
「その次は回路パターンの焼き付け。
以前写真とそのフィルムを作った工程を思い出してほしい。
あの工程と非常に似ており、ウエハー表面に回路のパターンを投影し、
ウエハー表面に塗られたフォトレジストによって、パターンを焼き付ける。
写真の現像とほぼ同じなんだ。」
「その後のプロセスも写真の現像と似ていて、焼き付けたパターンでいらない部分を、
薬液で腐食させ、必要なパターンだけ生成する。」
「そして、ウェハーのパッド検査を行う。ウェハーは半導体の集合体であり、
やはり不純物が混ざってしまって、NGの部分をパッドを使い電気的規格を満たすかどうか、
チェックする。」
「検査後、ウェハーから半導体チップを切り抜きます。
そして、その切り抜きチップを半導体の金属の足となる、リードフレームに乗せます。
リードフレームの加工も大きなポイントで、薄い銅板をプレスで打ち抜いた後、
めっきをする。
これも製造での大きなポイントだ。薄い銅板とプレスの制度が課題となる。
あとはこのリードと切断したウェハーのパッドを細いワイヤーで溶接する。
流れる電気の量によるワイヤ選定と溶接点も設計の大きなポイントとなる。
すまないが、この製造方法も研究をしてほしい。」
アシモフ「分かったが、やることが多いな。」
「あとはセラミックで切断したウェアーパッドとリード、
ワイヤーボンディング部分を外部の衝撃や塵から守るため、
樹脂で封入する。」
これで半導体の出来上がりだ。
全員「.....」
アシモフ「工程が多すぎて、非常に難しいが、これは研究に時間がかかるな。」
イスナルド「非常に多くの化学薬品を使いますね。
その生成方法も大きなポイントですね。」
ディアンヌ「はやくダイヤモンドを作ってみたいわ。」
イリーナ「工程が多すぎて…。ラインをどういう風に生成すればよいかしら。」
シモーネ「今までで、一番難しいモノづくりですわ。」
シミョノヴァ「どれか1つ、うまく作れないと、できないわけですよね。
難しい課題だ…」
「とにかく各工程を成立させるためには、全員の協力が必要なんだ。
頼む。」
会議室のテーブルに置かれた石英を前にして、約1名以外、
全員が考え込んでいたが、今はとりあえずお願いをするしかない状態だ。
1年半前にほぼ中世だったこの世界、果たして半導体は作れるか?
作者のうしねこです。
半導体の製造プロセスは複雑で、果たしてこの世界で作ることはできるでしょうか?




