13.銀行設立と経済復興
<新しい金融知識>
預貯金、国債、紙幣、公定歩合、株券制度
13.銀行設立と経済復興
開けて翌日、定例のミュースリーの食事の後、銀行設立に向けてトーステン財政大臣と話をする。現在冒険者向けにギルドがお金の貸し出しなどをしているが、一般市民向けの金融サービスが必要である。
町の冒険者ギルドに向かいながら、
「やはり壊れた住居を立て直すなど、お金が必要な時、高利貸しから借りるしかないのか?」
お金を貸すところはあるにはあるが、高利貸しの形態が非常に多い。
「そうですね。冒険者はギルドから借りれますが、住むところならば、住宅営団の貸し出し住居を借りて、借金で営団に返していくとか、方法は限られていますね。」
「復興を急ぐにはこの点も改善しなければならないか?」
「…。」
そのような話をしているうちに、冒険者ギルドにつく。
早速ギルド長の部屋に通される。
トロティエは
「聞いていますよ。我々の冒険者向けに今行っている、金融のサービスを一般市民向けに行いたいとか。」
話を始めたところで、引っ越しで忙しいシモーネに代わり、イリーナがギルドにやってくる。
「まずは、新しい通貨システムを作りたいと思っている。」
「今現在は白金貨1枚=金貨100枚=銀貨千枚=銅貨1万枚=鉄貨10万枚だが、紙のお金=紙幣と銅貨と銀貨の硬貨という制度にしたい。通貨の名称は1リール(国の名前)、鉄貨1枚=1リールという様にしたい。」
「そこでシモーネ、イリーナ、紙幣が偽造できない様なデザインと印刷機を製造できるか?」
「…やってみます。」
「銀貨以上の硬貨は紙幣に交換し、その回収した白金、金、銀は復興資金に充てる。」
「この新紙幣と硬貨を使って、以下の様な金融サービスを市民にしたい。」
-預貯金
-外貨との交換
-お金の貸し出し
-営団や一般民間組織への債権売買管理や投資管理
‐金庫業務
‐税金などの回収代理業務
‐国の債権取り扱い
‐郵便物の取り扱い
「これらのサービスを金融支店を街中に作り行いたい。これらを行う組織の名称を銀行という名前にする。」
「銀行に対し、国は以下のことを行う。」
-銀行に対してのお金の貸し借り
-国の債権の売却と買取。
‐紙幣や通貨そのものの受け渡し。
‐税金の回収。
‐利率の管理。
「貸し借りには利率を設け、貸すときは、貸した期間に対し、利率を上乗せし、これが銀行の利益となる。また逆にお金を預けられた物に対し、利率を上乗せし、返さなければならない。利率設定は国へ許可を取ること。」
「そのほか、債券や投資で集めたお金の手数料、金庫貸し出しの利益、税金回収の手数料、国債売買の手数料、郵便物の運賃は銀行の利益とする。」
「時々、国は正しくお金の管理がされているか、確認するため、全ての取引について、誰がいくらお金の動きがあったのか、記録を残すこと。」
「お金を動かすので、屈強な冒険者は最適という面からも、ギルドが一般市民にこのような業務を行ってほしい。」
「トーステン財政大臣は銀行の管理業務を行うこと。」
「イリーナには、さっき話した紙幣と、銀行支店(本店は現ギルド)の建物の建築を担当してほしい。今試作している鉄筋建築で。」
3人とも困惑しているようだが、ギルド長が一番混乱している。
「市民が高利貸しからしか借りることができないと、一般市民はお金を借りることをためらい、復興が遅れる。国が管理した利率で借りることができれば、一般市民はお金を借りやすく、復興が早まる。すまないが協力してくれ。」
「陛下、天才です。」
困惑しているのは、事の重大さと、どれも新しい考え方で、どれも復興に有効な策であることをしみじみと理解していたところから来ていたようだ。
冒険者ギルドは国の町のほとんどにある。この「銀行」を普及させるためには、冒険者ギルドが1番だと思う。
財政大臣に対し、
「国が銀行へのお金を貸し借りする時”利率”の話をしたが、国の経済状況を見て、利率を決めるんだ。利率は毎月変動させる。(公定歩合の様なものであるが。)
景気がいい時は銀行への貸出金利を上げ、景気が悪い時は金利を下げる。銀行が国へ預ける金利は、景気がいい時は預入金利は低く、景気が悪い時は預入金利を高くする。
町で流通するお金の量を景気が悪い時は増やし、景気が良い時は減らす。
今は震災後の非常時だから、町で流通するお金の量を増やす。
お金が増えるので、復興物資の取引が活発になり、復興が早くなる。」
「…」
「あと”営団や一般民間組織への債権売買や投資の証明書は株券という名前にしよう。
お金と違い、その団体の経済的状況によって、この株の値段が変わる。
安い時に株券を買い、高い時に売ると、もうけが出る。株券を売った資金は、その団体の運営資金になる。これで新しい装置や土地などを購入できる。その結果、復興が早まるというわけだ。」
「イリーナ、ごめん、株券も作ってくれ。」
トーステン、トロティエ、イリーナの3人はしばらく無口になっていたが、
「やはり陛下、天才です。」
3人は口々に言う。
ギルドにお願いをした後、財政大臣には先に城に帰ってもらい、イリーナと一緒に製鉄工所によっていく。
作者のうしねこです。
震災から復興するとき、建物の部材など必要ですが、お金も大事です。お金を借りづらいと、復興物資が購入できず、復興が遅れる。元知事はここに目をつけたようです。




