124. 西方の義理の父来訪7_この国の銀行と株式市場の現場
<この世界の銀行の仕事>
預貯金管理、振込、税金の代替徴収、貸し出し、資金運用、国とのお金の貸し借り、株や債券売買代行
124. 西方の義理の父来訪7_この国の銀行と株式市場の現場
北医療院視察の後、徒歩で隣の銀行と株式市場に移動する。
そこには、トーステン財政大臣が待っていた。
早速、株式市場の会議室で説明を行う。
トーステン「町を復興させるためには、その資金が必要です。
そのため、わが国では、金融システムの構築を行いました。
まずは、通貨紙幣の発行です。
以前は金貨や銀貨等ありましたが、リールという通貨単位で統一し、
金貨や銀貨など同等の価値を持つ紙幣で置き換えました。
そこで回収された金や銀を復興資金調達にあてました。
新たに市場に流通するお金を増やす場合、金や銀の貨幣の製造コストより、
紙幣のほうが安いわけです。」
デルフィン「?!、思いもよらない良いアイデアだな。」
トーステン「実際の紙幣はこちらです。
紙に印刷を施すと同時に、複写を防ぐ偽造防止対策が紙幣には織り込まれています。
低額硬貨である、銅貨や鉄貨は、そのまま流通しています。」
トーステン「新通貨と紙幣の発行とともに、銀行サービスも開始しました。
以前冒険者ギルドで、冒険者の賞金を預かったり、貸し出ししたりするシステムがありましたが、
このシステムを分離し、一般市民向けに開放しました。
この預金通帳を使用し、店舗間は電話でその金額のやりとりをすれば、
過去と現在の預金の流れが分かり、異なる支店間で、お金の出し入れができるのです。
銀行はこの預金の出し入れのほかに、振込、税金の代替徴収、貸し出し、資金運用等を行っております。
振り込みは、例えば、医療院などで大金を支払わなければならない時、銀行で自分の預貯金の口座から、
医療院の口座に移動すれば、大金を持ち歩かずに、処理ができます。
銀行はこの「振込証明書」を発行します。この証明書を医療院にもっていけば、支払い完了です。
あとは税金の代替徴収ですが、自分の預金口座から国に対し税金を支払いできます。
実は国にもメリットはあって、その人の預金量から適正額の税金が支払われているか、
チェックすることができます。
こうすることで、確実に税金が徴収できるわけです。
税金が支払われた際、納税証明書を発行します。
これによって、医療補助金等、国のサービスを受けることができます。
そして、お金の貸し出しです。
例えば、住宅営団で住宅を購入する場合、まとまった大金が必要です。
しかし、手持ちの資金が少なく、購入できない場合があります。
その場合、その人の所有する車等の資産や勤めているところで得られる収入等を審査し、
将来返済できる資金を貸し出すサービスです。
最後に資金運用ですね。
これは、預金は100%保証される預入資金ですが、
この預入資金に余裕があり、さらなる資金運用を考えている場合、
利子の高いサービスにその余剰資金を回すことができます。
いくつかこれは例があるのですが、まずは国債を挙げます。
普通預金金利が0.5%とした場合、
国の公共事業のための貸し出し(国債)金利が1.2%だとします。
ただ、こちらは100%保証ではありません。
未曾有の経済危機があり、国が借り入れたお金を返せなくなる場合があります。
その場合、元金は80%に目減りをしてしまうこともあります。
利子が高く、リターンも大きいですが、リスクもあります。
元金が減るほかに、その年の利子が0.2%になり変動する場合があります。
そうならない様に、国は資金借り入れと公共事業は採算性のチェックを厳格化しますが。
元知事時代、公共事業でこのチェックが甘く、地方債の暴落を招いてしまったことがあった。
そのようなことは防がなければならない…。
あとは、公共ではなく半公共、一般団体に対する債権、いわゆる株ですね。
例えば、先ほど視察した、新製鉄工所を例にしましょう。
ここの運営母体は技術開発営団という組織で、民間と政府がお金を出しています。
ここで新しい車を作るとしましょう。
その時に新しい部品材料を買うお金や道具を調達する必要があります。
良い例が、車を動かす雷の魔石を魔法錬金営団から購入するとします。
その時技術開発営団は、この購入資金を必要とします。
そのお金は、ここ銀行の借り入れで調達することもできますが、
自分の営団の信用をもとにして、「株」を発行します。
その株を市場に売り出し、得たお金で資金が調達できます。
この株は、その団体の価値で価格が変動します。
例えば、物が売れない場合、その技術開発営団は製品を売ってお金を得ることが難しくなり、
利益を得づらくなります。
そうすると、市場は将来。個々の団体は株を買ってもリスクが増えると判断し、
株の価格が下がるのです。
逆に、新製品を出した場合、購入希望者が殺到し、たくさん売れる、いわゆる利益をたくさん得られる、
ということで、株が上がります。
株の金額は、その団体の経済状態を表していると言えるわけです。
株は、銀行が一般市民から購入依頼や売却依頼を受け、
これから視察する株式市場はタイムリーに一般市民から依頼を受けた、
代替取引人が登録された団体の売買を行う場所です。
大きなフロアに各業種ごとに分けられたブースがあり、
代替取引人が仲介人に対し、オーダーを出している。
本日イルン新聞社の上場が行われ、売買量は多分今週で一番多くなるという予測が出ているそう。
なるほど、情報インフラを扱うブースに人だかりができている。
来週は超大型上場案件、「スーパーコカトリス」が予定されているそう。
今、上場ラッシュで、復興景気需要と合わせ、ここイルンはバブルに突入していた。
「個々の状態を見れば、国の経済状況が分かる。復興と上場ラッシュで、
取引量は右肩上がりに上がっている。そうすると貸出金利が上がり、「バブル」という、
状況に突入する。
一見バブルは物がたくさん売れ、良いように見えるが、
銀行は団体や個人に貸し出すお金の返済利子を上げようとする。
沢山借り手がいるので。
その結果、市場の資金運用が不安定になったり、
お金が借りられない、住宅価格が上がる等の悪い面もある。
そういう時は、公定歩合を上げる必要が発生する。
公定歩合とは、銀行は国ともお金の貸し借りをしている。
国が銀行に対しお金を貸し出す利子を高くする。
そうすると、銀行は国から借りるお金を減らそうとする。
確かに国からお金が借りられないとなると、さらなる市場の資金不足を招くが、
資金今日橋梁が下がり、無駄な投資を行う需要も下がる。
その結果、市場に資金が回るようになり、銀行はお金を貸し出す先が減ることによって、
貸出金利が下がる。
という仕組みだ。」
前にいた世界で、日本に限らず、アメリカなど、公定歩合をいじっても、
経済に対する影響は限定的だったという事実はあるが、
株の価格は一時的ではあるが変動していた。その理屈は同じだと思うが。
デルフィン「なんとなくわかった、でもすごい!!よく考えられているシステムだ。」
しきりにデルフィン国王はそのあと感激をしていた。
作者のうしねこです。
この国の金融システムの説明を受けたデルフィン国王は理解しようと必死ですが、
最後は何とか理解できた様です。




