3話
やっと話しが、進みはじめました。
…相変わらずゆっくりですが、よろしくデス。
満月が漆黒の闇に浮かぶ
全てを飲み込む光と闇
対極にある二つが揃う時
…不思議の扉が開く
ダイナは目を閉じた。
久しぶりに上手くいった占いの結果が、ふと脳裏に蘇る。
(まさか…な。あんな占いなんかで運命が決まるわけねぇよな…)
アイリスが幻に誘われるなんて…
あるわけ無い
満月の光の下
一人の青年が走っていた。
「やべぇ!遅れた!」
白いウサギの耳の付いた帽子を手で押さえながら。
「マジやべぇよ」
少々、泣きが入っている。
急がねぇと八つ裂きにされるゥーーー!!
悲痛な叫び声が夜空にこだました。
『アイリス、アイリス』
お母さんの声がする。
『はーい、お母さん』
『アイリス、ちゃんと帰って来るんですよ』
『お母さん…』
バンバン
遠くで花火があがった。
後ろがとても賑やかだ。
―あぁ お祭りなんだ―
『アイリス…アイリス』
『すぐに帰って来るから』
『アイリス、アイリス』
『ちゃんと時間は守るわ』
『アイリス、約束よ?…おね…い』
『心配しないで…』
『ゆ…の…じゅうに…は…けて』
『お母さ…』
『アイリス、アイリス…。起きて、お願い…』
―だれ?―
『もうすぐ時間が…。早く起きて、一緒に来て。…じゃないと―』
―私を呼ぶのは、だれ―
『アイリス、アイリス』
「アイリス、アイリス。う゛っう゛うあぁわあ、おぎでよ〜」
「な、何?!」
ポタリと頬に水滴が落ち、大きな声がしてアイリスは驚いて目を覚ました。
目の前には、
「ウサギの耳?!」
ボサボサの髪にウサギの耳付き帽子の見知らぬ青年が、顔を涙でグチャグチャにしてアイリスを見ていた。
ベッドの側の出窓から上半身だけ、部屋に入った状態で…。
「う゛ぁあアイリス〜。全然起きてくれないんだもん!ぅわぁん!」
「え!あ、ええと…ご、ごめん」
どうなっているんだろう?
アイリスは頬をつねってみた。
(ゆ、夢よね?)
「あぁ!」
「な、何!」青年が突然大きな声をだしてアイリスの手を掴んだ。
「泣いている場合じゃなかった!!!早く行かなきゃ!」
青年は慌てた様子で、窓からでていこうとした。手は離さないまま。
「アイリス立って!!早く早く!」
「え、ま、ま待って!…キャア」