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31 分配と総括、です


 ジキタリス達との闘いから一夜明けた午前中、ユキ達はソファーに座り紅茶を飲みながらちょっとした反省会をしていた。


「では改めまして皆さん、今回の件お疲れ様でした」


 ユキが笑顔で一礼した。


「おお、疲れたぞ。 帰ってからも修復魔法で忙しかったからな」


「ツインテお疲れ様。 ツナマヨ達は全快したようね。 良かったわ」


「チルドもそうだったが、最近の機械は繊細でどっと疲れるわい。 銀の剣みたいな単純な構造の品なら直すのも簡単なのだがな。 もし、AIが動いている量子コンピュータとやらが壊されていたら、損傷度合にもよるがワタシの魔法でももう直せないかもしれん」


「ツインテさん、ありがとうございました」


 ツナマヨ達が声を揃えてお礼を言った。


「いいってことよ」


「あの空間に行ってから戻るまで不思議なことだらけです」


「ツナ、気にするな、この家には妙なことが起こるのだ。 人それをプラズマと言う」


「私達の体のダメージは軽くはなかったはずですが…」


「あんたらが軽くスリープモードに入っているうちにちょちょいのちょいとやったのだ。 深くは追及するなよ。 一応科学者永久の前でもチルドを直したことがあるんだが、あいつでも気を利かせて黙ってるんだからな」


「そうでしたか…」


「まあ、今回の件は私とツインテが原因なんですけどね。 だからツナマヨに迷惑を掛けてしまったのは私達のせいなんです」


 パープレアがばつが悪そうに言った。


「そうじゃったな」


「本来はセーフのはずだったんだけど、永久があと3日預かってとか言いだしたところからよ、ツナマヨが巻き込まれる方向になってきてしまったのは」


「うむ、では永久が悪いということにしておこう。 ハハハ…」


 そう言ってツインテが笑った。


「この剣はどうなるのでしょうか? 決闘で勝利した証とのことですが」


 チルドがテーブルの上に載せられた剣やロッドを見てユキに尋ねた。 テーブルの上には銀の剣6本、ジキタリスの剣、2つに折れたエクセルシアの神官のロッドが置いてあった。


「そうね、今ここで分配しましょうか」


「この銀の剣のうち2本はツナマヨの得た品じゃな。 持って行くがいい」


 ツインテが銀の剣を指差した。


「私が倒した従者は焦げ痕があるこの銀の剣です。 焦げ目で分かります」


 ツナが焦げ痕のある銀の剣を手にした。


「私が倒した従者はこちらの銀の剣です」


 マヨは残った方の焦げ痕のある剣を取った。


「ふむ、焦げ痕まで覚えてるんじゃな」


「残りの4本中2本はジキタリスの従者を倒して変化した品なのは分かるのですが、あと2本はどういった経緯の品なのでしょうか?」


 マヨが不思議そうに言った。 


「これはだな、聞いて驚け、ツナマヨ達がトイレで拉致された直後に、ツナマヨに変装した従者2名が現れたのじゃ。 まあ直ぐにユキとチルドが見抜いてやっつけて剣になったのだがな」


「凄いです! あれをそんなに簡単に倒したのですか!?」


 ツナとマヨが驚いた。


「あれは靴を履いてなく、胸の名札もなかったのでこちらが先手を取れて有利でしたからね」


 チルドがそのときの説明をするとツナマヨ達は小さく2度頷いた。


「パープレアさんは最後に背中を負傷したようですが傷は大丈夫でしょうか?」


「あーこれは、私の着ていた服に耐性があって貫通はしなかったので大丈夫大丈夫。 ゲフッ。 まあ、ちょっとは打算的なものもあったんですけどね。 私ならあの場面で水氷系の攻撃魔法を使うって考えが。 あのときあの場所は暑かったですから」


「アホかそんな理由で…。 そう言えば戦闘中、猫口調も出なくなっていたようだが。 あれはどうしたんじゃ、レア」


「あんなシリアスな場面でニャアニャア言ってられる訳ないでしょ。 空気を読んで努力したんです!」


「ほうそうか、努力の(たま)物であったか。 お前さんも頑張れば出来る子なんじゃな」


「そうですよ!」


「残りの武器はどうする?」


「そうだなユキ、神官のロッドは直してパープレアが持つといい。 修復魔法、リペエイデス!」


シャワシュワシュワ、グイーン


 ツインテが修復魔法を唱えると、ふたつに折れていた神官のロッドが復元された。


「おお、これは神々しい! もらっていいんですかねこれ」


「そうよ、パープレアが持つべき」


「でわでわ。 じゃーん、念願の神官のロッドを手に入れたぞ! ツタタチャラララン♪ …でもこれなんか私に似合わないですよね…」


「じゃあこうしてやろう。 外見変更魔法、アレンマカイゾー」


ポムッ、ポヒュポヒュポヒュ


「おー、これはいかにもな魔法使いの杖! これでいただきます!」


「変更したのは外見だけじゃがな」


「ありがとうツインテ。 大事に使います」


「この大きな剣はどうする。 私はツインテが持つのがいいと思うんだけど」


「そうですね。 ツインテならちょちょいのちょいして持ち歩けるかと」


 パープレアがそう言うと皆頷いた。


「そうか、それでは貰っておくとしよう」


チョコン、シュオシュオシュオ…


 ツインテがジキタリスの剣に触れると剣は小型化しナイフサイズになった。


「これでヨシ。 まあ、使うときがあったらまた大きくするかもしれんが。 あとは4本の銀の剣じゃな。 これはユッキーとチルドが持つことになるだろう」


「そうですね。 ユキとチルドがこれを持てば丁度いいです」


「じゃあそうしましょうか、チルド」


「はい、そうします」


 ユキとチルドが銀の剣を1本ずつ手にした。


「まあ私が剣を持って戦うことなんてないでしょうけど、お守りかなこれは」


「それでいいと思うぞ、ユッキー」


「…これは…。 センサーで簡易な鑑定をしましたが、やはり未知物質で構成されてます。 以前のユキの服に付着していた物質とも違う、別の未知物質、それもこの量…」


「そうなの? チルド」


 ユキがいろいろと思考を巡らせた。


「ツナとマヨが銀の剣を研究所に持ち帰ったら、普通に没収されてしまうと思うの。 それじゃ面白くないわ。 なのでこういうのはどうかしら」


 皆が興味深そうにユキの方を見た。


「銀の剣を研究所に条件付きで渡すの。 その条件はツナとマヨが決めるといいわ。 研究所はこの剣を欲しがるはずなので、ツナとマヨは研究所に対してある程度の願いが聞いてもらえるはず。 願いはなんでもいいの。 待遇の改善でもなんでも。 あなた達のやりたいことでいいのよ」


「…。 すぐには思いつきませんが、考えておきます」


「…私もツナお姉さまと同じくです」


「うん、考えておくといいわ。 できる? 研究所との交渉。 ちょっと心配なんだけど」


「うむ、できるのかのう…。 ツナマヨが剣を研究所に持ち帰って、剣を渡すには条件があるって言うのは相手に警戒されるかもしれんぞ。 難しくないか?」


 ツインテも首を傾げて心配した。


「私達もここに来てから少しは成長しました。 上手くやってみます」


 心配の声を他所にツナマヨは声を揃えてチャレンジを宣言した。


「うん、その意気よ。 成長よろしい。 ええと、剣はまだあと2本あるわね…」


「これも後で考えればよい。 しばらく家宝にでもすることだな」


「家宝か…。 まあツナマヨ達の剣が研究所に没収されちゃったらこれを交渉材料にするのもいいかなっと。 じゃあ予備ってことで」


「ヨシ、これで全て決定じゃ」


「お昼にしようぜー!」


「その後は、ツナマヨ達とのお別れ会ね…。 ドタバタしていて結局ほとんど準備も出来てないんだけど」


「そうだな、今日でお別れだからな…」


「明るくやろうニャ」


「では、お昼兼別れ会の食事を作ります」


「私達も手伝います!」


トタトタトタ


 ツナマヨ達がチルドの後を追ってキッチンへと向かった。


 ユキはその後ろ姿を見ながら、こういう光景も最後になるのかと感慨深く思った。




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