22 反省会と対策会議です
家庭内裁判の翌朝の朝食後、ツインテの部屋でツインテとパープレアはひそひそと昨晩あったことの反省会をしていた。
「ツインテ、昨日の夜のことなんだけど…」
「あれな、今考えると何か変な感じだったな、レア」
「そう、我々が透視の視覚、聴覚で興奮し始めた辺りからがどうも怪しいのです」
「やはりか…」
「後から魔法帽子内の記録を調べたところ、どうもあの体験の8~9割くらいが魔法帽子の過度な感覚補完合成機能での産物らしいと判明しました。 恥ずかしながら私の妄想も帽子内に入ってしまい、補完合成の素材に使われさらに妙なことになっていたようです…。 実際はあのような出来事はほとんど起こってなくて、あったとしても、もっとまともな出来事だったことでしょう」
「だよな、チルドがあんなやらしー声を出して愉悦の表情で尻を叩かれるなんて、普通に考えるとありえないからな」
「そういうことです。 昨晩の体験は我々の若気の至りということで決着させておきましょう。 何分、魔法帽子の2機能合わせ技を本格使用したのは始めてだったのでご容赦を」
「まあ、人の部屋をこっそり覗くなんてことはろくな結果を招かないという話じゃな。 あのパープレアとの感覚共有は面白かったがな!」
「あれ本当にやばいので、もうやらないですけどね!」
「うむ、朝食のときはユキとチルドの顔はあまり見ないようにしていたが、まあこれからは普通に顔を合わせられそうで良かったわい」
「ですね…」
パープレアは苦笑い混じりの表情で答えると、リビングに向かいツインテも後に続いた。
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「ツインテ、パープレア、いいところに来たわ。 丁度みんなが揃ったところで公式発表があります」
待っていたユキが全員の前で話し始めた。
「昨晩、この私によってチルドへの刑の執行が滞りなく行われました。 これでプラズマ捕獲失敗事件の件は全て終了したことをここに宣言します」
「お姉さま、大丈夫でしたか…?」
ツナマヨが泣きそうな顔でチルドを見た。
「はい、全く問題ありません。 あと、その顔は止めるように」
チルドがそう言うとツナマヨは少し安心したような表情を浮かべ、また涙ぐんだ。
「おお、とにかく終わって良かったな、ルド。 ユッキーもご苦労じゃった」
「この件はこれでおしまいですね。 一件落着です。 じゃあ何か飲んで乾杯だ」
皆が明るさを取り戻したところでパープレアが飲み物での乾杯を提案し、皆もそれに参加した。
「かんぱーい!」
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午後になりツナマヨのふたりが浴室の掃除に行っている間に、リビングで残りのメンバーでまた話し合いがもたれた。
「そうそうパープレア、ジキタリス達っていつ決闘しに来るの? 近いうちにまた来るって言ってたはずだけど…。 いろいろ厳しい決まりで言えないことがあるようだけど、何かヒントがあったら教えてほしいの」
ユキがコップをテーブルに置き、パープレアに尋ねた。
「コホン、魔法界では伝統的に決闘は申し込んでから6日後に行うのが良しとされています」
「ということは…今日でツナマヨが来て4日。 魔法騎士ジキタリスが来たのがその前日の事なので今日で5日ということになるわね。 6日後ということになると明日が決闘の日ね」
「まあ、予定通りに進めばね。 あいつらもお役所仕事なんで、きっちりやることもあれば延び延びになることもある。 つまりはっきりしない」
「でも一応明日の可能性はあるとみておいた方が良さそうね。 ありがとうパープレア」
「どういたしましてー」
そう言うとパープレアはまた何か飲み始めた。
「そうだな、不意打ちされないように気を付けておこうぞ」
ツインテが頷きながらチルドの方を見て言った。
「がんばって撃退しましょう!」
気合を入れたヨイショのポーズでチルドが返事をした。
「あと、その場合のツナマヨの事なんだけど、あの二人がここに来ることになったときは3日間だけ預かるということだったので、決闘に巻き込まれる可能性は然程無いと思っていたのだけど、その後ここでの滞在期間が延長されてしまいこの件に巻き込まれる可能性が高くなってしまった…。 ツナマヨは決闘とは無関係なので、その場から遠ざける方法が必要です」
「うーむ、決闘の時間が不明なのでその時間を避けて買い物に行ってもらうとかは出来ないな。 もし明日でなかったら、その次の日も買い物に行かせるとかになって変に疑われるしな」
ツインテが困ったような顔で言った。
「その件でしたら私がツナマヨの強制停止信号を出しますので大丈夫だと思います。 強制停止信号でツナマヨ達を停止させてから速やかにあの戦闘用空間の出口から脱出させます」
「うむ、それならうまく行きそうだな。 任せた、ルド」
「はい、それでは多少の不安は残るけどこれで対策会議終了です! 明日かそれ以降の決闘の日に向けてがんばりましょう!」
ユキがそう告げると皆も「おお!」と声を上げ賛同した。
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トコトコトコ
「浴室のお掃除が終わりました」
会議が終わって少しした後、ツナマヨがリビングに戻って来た。
「ツナマヨ、少し話しがあります」
チルドがツナマヨに話し掛け、ツナマヨが立ち止まった。
「先程皆と話し合い決まったことがありますので聞いて下さい。 この家には今後もまたプラズマが出るかもしれません。 それは以前あなた達が遭遇した球状物体とは違う形状かもしれません。 でも驚いてはいけません。 あなた達はプラズマとの戦闘をする必要はありませんので、その場合隅に移動して動かないでください。 その間に私達がプラズマを撃退処分します」
「それは、私達が前回のプラズマを捕獲できなかったからでしょうか?」
「それもありますし、廊下の破壊もあったので次からは禁止ということになりました。 今後のプラズマ捕獲は諦めてください。 もしプラズマ捕獲の行動をとるようでしたら、私があなた達に強制停止信号を送り停止させることになります」
「はい、分かりました。 お姉さまの命令に従います」
近くで見ていたユキがチルドにウインクをして「よくできました」の意を伝えた。
ユキ家の中に手探りながら次のステージに向けた準備が整いつつあった。
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「そうそう、ツナマヨのいつも着ているキツキツスク水、あれはチルドを怒らせた罰だったのでもう終わりにして、今日からはこれを着てちょうだい」
そう言うとユキは袋から新しいスク水を取り出した。
「また同じスクール水着に見えますが…」
ツナが疑問そうに新しいスク水を見つめた。
「じゃん、でもこれはちょっと違うのよ」
バシュッ
ユキが頭上で新しいスク水を広げてみせた。
「今、私達が着ているきつめのスクール水着よりやや大きいようです」
マヨが見定めるような目をして答えた。
「そう、これはあなた達の体にぴったりサイズのスク水よ! 先日チルドと買い物に行ったときに買って来たの。 どう? 嬉しいでしょ!」
「…何と言いますか、せっかく買って来ていただいたのに嬉しいような嬉しくないような複雑なものを感じます…。 メイド服ではだめなのでしょうか」
「だめだめ、これがこの家でのあなた達のユニフォームなの!」
「やや駄々をこねているようにも見えますが…」
ツナが困り顔で言った。
「やだやだ、これを着てくれなくちゃやだー!」
「駄々をこねてますね…」
マヨがとても残念なものを見たような顔をした。
「でも…このままこのキツいスクール水着を着続けるよりはだいぶいいのでそのスクール水着は着用させていただきます。 そうですね、マヨ」
「はい、止むを得ない判断です、ツナお姉さま」
「ありがとうツナ、マヨ。 予備もあるから気にせずどんどん使ってね」
ユキの表情がぱあっと明るくなり、急かされたツナマヨはユキの前で着替えることになった。
「主にキツさが改善されました。 マヨはどうですか?」
「股間の食い込みが緩和されとてもいい感じです。 これで恥ずかしさも少し減り一人前に一歩近付いた気がします。 ツナお姉さま」
「食い込み具合が無くなってしまったのは残念だが、これでヨシ! あなた達の未来は明るいわ! じゃあまたね」
今までツナマヨ達が着ていたスク水は袋に入れられユキが持ち去った。
「ツナお姉さま、ユキさんが嬉しそうに古い方のスク水を持って行きましたが、あれをどうされるつもりなのでしょうか?」
「さあ、ユキさんの考えていることは私にもよく分かりません。 チルドお姉さまなら分かるかもしれませんね」
新しいスク水を着たツナマヨは、少し誇らしい気分で仕事に戻るのであった。




