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13 パープレア、スク水化計画です


ゴトゴト、ドスッ


「ユキ、また何か届きましたよ。 研究所からです。 開けますか?」


 チルドが届いたばかりの大きな荷物を、リビングのソファーでだらけていたユキに持って来た。


「ん? トレッドミルってなんだろう。 開けてみてチルド」


ザー、バコバコ


「あーこれは…ルームランナー?」


「そのようです。 添付されていたメモによると衣服サンプル提供のお礼だそうです」


「ああ、あの未知の物質で汚れてた服の件ね」


「これで日頃の運動不足を解消してくださいとのこと。 セッティングしてみます」


テキパキ、ガタゴト、テキパキ


「はい、出来上がりました」


「よし、試すわよ!」


「何だそれ、ワタシにもやらせろー」


 いつもの半袖体操服を着たツインテが来て早速試し始まった。


「おー面白い。 前に歩いても進まないぞ」


「そういう機械です。 室内での運動に使います」


ドタドタドタ


「おお、走ってもいけるのか」



「朝から騒がしいなア…廊下まで響いたぞ」


 タオルを首から下げたパープレアがリビングに入って来た。


「オマエもやってみるがいい」


テクテクテク


「おー、これでいいのか」


「そうそう、同じ場所でいくらでも歩けるぞ」


「でも、こうするともっといい」


フワフワー


 パープレアが空中に浮いてみせた。


「それはダメだ。 歩いていることにならない」


「でもまあ私の場合浮いている方が歩くより力を使うからな」


「へーそうなんだ」


 ユキが感心したような顔をした。


「魔法使いでもタダで浮いたり飛んだりできる訳ではないのだ」


「代われ代われ、ワタクシがもっと使いこなしてやる」


ドタバタ、ダダダ、ギュイーン



「ユキ、箱の中にこんな物も入ってました」


「えーと…。 これは水着? いや、スクール水着ね」


「メモによるとこれはマリコからのプレゼントらしいです。 サイズもいくつか違うものが入ってました。 合うものを着てくれとのことです」


「誰に着ろと…」


「それは、ユキでしょう」


「いやいやいや、こういうのはもっと若い子に着てもらわなくちゃ」


「そうなのですか?」


「パープレア、ちょっと来て!」


「なんだー、食い物か!」



               ・



 パープレアは借り物のTシャツなどの服一式をスパンと脱がされて、届いたばかりの紺のスクール水着を着せられた。


「ゴクリ。 おお、これはいい!」


 その眼福さにユキは思わず声をあげた。


「なんじゃ、これ。 動き易そうではあるが体に密着して何だか恥ずかしいぞ。 どんなプレイだ」


「これはね、選ばれし者が着られる伝説の水着よ。 家の中で着ているととても運と徳が上がるのよ」


 チルドは「またまたまた、そんなでまかせを…」と思ったが黙っていた。


「おお、じゃあこれは私が貰った! これからはこれを着て過そう」


「そうそう、それがいいわ」


 満足そうにユキが微笑んだ。



「そう言えばパープレアの着て来た服は完全に破れて飛び散ってしまったのよね。 あれはあれでカッコ良かったんだけど」


「今の私はだいぶ魔法能力が落ちてしまったが、あれがあると少し魔力が上げられる! どうにかならんものか?」


「まあ、破片の一部でもあれば修復出来ないこともないぞ」


「おお、そうかツインテ! 服の破片はあるかチルド?」


「破片はまだゴミ袋に入っていると思いますよ」


 チルドは直ぐに服の破片が入っていると思われるゴミ袋を持って来た。


「これです」


「うむ、では…。 修復魔法リペエイド!」


ブーン、ゾワゾワゾワ~シャキシャキシャキン


 ゴミ袋から破片が舞い上がり渦を巻いてみるみる間に紫色の服、帽子、マント、ブーツ、手袋が修復された。


「これだ! 直ったぞ私の魔法服。 ありがとうツインテ!」


「こんなこと朝飯前だ。 朝飯はさっき食ったがな」


「あれ? でもよく見ると…。 何かが違うような…」


「よくぞ気が付いた。 これも修復ついでに私がアレンジしておいたのだ。 どうだ、この仕上がり具合!」


「魔法帽子に猫の耳のような物が付いているのだが? これはいったい?」


「それは、猫耳型装飾品だ。 かわいいだろう」


「言われてみれば前よりカワイクなってる気がする…」


「機能もちゃんとあるぞ。 耳だけあって音が良く聞こえる。 その帽子の前後に付いている目とその左右の耳で探知能力は倍増することだろう」


「おおツインテ、オマエってやつは…見直したゾ」


「胴体部分はあれだ、今パープレアが着ているスク水と大体同じ形状にしてみた。 その今着ているスク水は旧型、魔法服の方のスク水は新型だ」


「何故に?」


「これはだな、後ろを見てみろ」


 後ろを向いたパープレアが見たのは目をキラキラさせたユキだった。


「なんたるハレンチ! いやグッジョブよ! ツインテ。 これでパープレアのこれからの魔女ライフの豊かさが約束されたものになるわ!」


「そそそ、そうなのか」


 パープレアは「よく分からないがこれはきっといい物…得しちゃったな」と思った。


「ちなみに水着だけあって水系の攻撃にある程度の耐性が期待できる」


「それはありがたい」


「マントにしっぽも付いているがそれは完全に飾りだ。 気にするな」


「お、おう…」



               ・



「あれ、まだ何か箱に入っているわ…」


 ユキは箱の底に入っていた物を取り出した。


 それは夏用のセーラー服だった。


「えーと、これは…」


「今度こそユキが着る番です」


 チルドがユキにそう迫り、ツインテとパープレアも期待した顔をしてユキを見た。


「そ、お、ね、私も着てみようかしら」


パサパサ、ジー、ファサファサ


「これでどう?」


「おー、パチパチパチ」


 軽く歓声と拍手があがった。


「たたた、たまにはこういのもいいかしら???」


「毎日着て!!!」


 チルド、ツインテ、パープレアが口を揃えて言った。


 そこにはセーラー服を着て照れくさそうに頬を染めた17歳の少女が佇んでいた。


 誰かが魔法でも使ったのだろうか、室内にあるはずのないそよ風が吹き、ユキのグレーの髪と短い紺のスカートがさらりと揺れた。


 その可憐な雰囲気に3人は思わず息を呑むのであった。




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